京都医塾化学科です。
みなさんは、濃硫酸には7つ覚えておくべき性質があることを知っていますか?7つもあると聞くと暗記が苦手な方には嫌な感じがすると思いますが、今回はそんな人のために、これら7つの性質を関連付ける方法を伝授します。
濃硫酸の7つの性質
まずは濃硫酸の7つの性質を箇条書きで見てみましょう。
- 弱酸である
- 加熱すると酸化力をもつ
- 不揮発性である
- 吸湿性をもつ
- 脱水性をもつ
- 溶解熱が大きい
- 密度が大きい
さて、これら7つの性質はすべて、「H2SO4はH2Oの大ファンでH2Oオタクである」と考えることで説明することができます。前編では①~③の性質について見ていくことにします。それでは、性質一つずつについて細かく見ていきましょう。
弱酸であることについて
濃硫酸が酸として弱い、と言われるとピンとこない人も多いのではないでしょうか。
まずは酸としての強弱についての定義は、
「酸の強弱は電離度で決まり、強酸は電離度がほぼ1である」
という定義です。
この定義に沿って考えると、なんと濃硫酸は弱酸になってしまいます。
まず、濃硫酸の濃度は96~98%(質量パーセント濃度)でほとんど水を含んでいません。そして、水がいなければ物質は基本的に電離しません。というわけで、濃硫酸中のH2SO4たちは、
「電離したいけど水がいないので、電離できない連中がほとんど」
ということになります。これにより、電離度が非常に小さくなり、弱酸となってしまうわけです。
この状況は、例えるならアイドルの握手会でしょうか。H2Oというアイドルの握手会に延々と列を作るH2SO4たち。最前列で握手できているH2SO4は電離できていますが、列に並んでいるほとんどのH2SO4は電離できていないのです。
加熱すると酸化力をもつことについて
熱濃硫酸は酸化剤として働く、というのは化学を学習していく中で目にしたことがある人がほとんどでしょう。ですが、濃硫酸が酸化剤として働くためには、実は以下の分解反応が起こる必要があります。
H2SO4→H2O+SO3
この分解反応で出てくるSO3(三酸化硫黄)が酸化力をもつのです。ところが、H2O大好きなH2SO4はもちろん普段はこの分解反応をもちろん起こしません。したがって、加熱することによって無理やりこの分解反応を起こし、酸化剤として働かせているのです。
不揮発性であることについて
まずは揮発性の定義から
「液体がもつ常温でも蒸発しやすい性質」
これが、揮発性の定義です。H2SO4は常温で液体ですが、この性質を示しません。これはもちろん、気体になって大好きなH2Oの元から離れるなんてことはしたくないからです。
前編のまとめ
いかがだったでしょうか。一見つながりのない濃硫酸の性質も、実は濃硫酸がH2O大好きであると捉えれば、関連性がある話のように見えてきませんか?
後編では残り4つの性質についてみていきます、お楽しみに。