京都医塾化学科です。
「H2SO4はH2Oの大ファンでH2Oオタクである」の後編になります。今一度、濃硫酸の7つの性質を箇条書きにしておきます。
- 弱酸である
- 加熱すると酸化力をもつ
- 不揮発性である
- 吸湿性をもつ
- 脱水性をもつ
- 溶解熱が大きい
- 密度が大きい
さて、後編である今回は④以降の性質について見ていきましょう。①~③について気になる方は前編の方も是非見て下さい。
吸湿性をもつことについて
吸湿性の定義は
「空気中の水分を吸収する性質」
となります。これもH2SO4がH2Oの大ファンであると考えれば、空気中に漂っている水蒸気を自身に吸収してしまうのも納得ですよね。
脱水性をもつことについて
脱水性の定義は
「化合物中の水素と酸素とを水分子の形で奪うこと」
となります。前項の吸湿性と混同しやすい性質ですが、こちらは元々H2Oの形をしていないところから、自分でH2Oの形にして引っこ抜く性質です。
例えるなら
「既製品のフィギュアを買う」のが吸湿性で、「パーツから自分でフィギュアを組み上げて作り出す」のが脱水性です。H2SO4のH2Oへの熱い情熱が感じ取れたでしょうか。
溶解熱が大きい・密度が大きいことについて
⑥、⑦の性質はまとめて見ていきます。これらの性質は濃硫酸を希釈する際の手順に関わる性質です。濃硫酸を希釈する際は
「必ず(かき混ぜながら)水に濃硫酸を少しずつ注ぐ」
のが正しい手順です。これと逆の手順(濃硫酸に水を注ぐ)をやってしまうと
「加えた水が密度の大きい濃硫酸に浮き、そこに溶解熱の大きいH2SO4が一気に溶け込んで、急激に沸騰して周りの硫酸を飛散させる」
ため非常に危険です。
アイドルのライブ会場でファン(H2SO4)に向かってグッズ(H2O)が客席に投げ込まれるときのことを想像していただければよいでしょうか。投げ込まれたグッズにファンが殺到して危険ですよね?これを防ぐためには、先にグッズ売り場を用意しておいて、そこにファンたちを連れて行けばよいことはおわかりいただけるでしょうか。
後編のまとめ
ここまで「H2SO4はH2Oの大ファンでH2Oオタクである」ということを濃硫酸の7つの性質と関連付けて説明してきました。たくさんあるように見える濃硫酸の性質もすべてはH2SO4がH2Oのことを愛してやまないがゆえだったのです。 化学のあらゆる現象には本質があります。受験生のみなさんが本質をとらえ、丸暗記に走らなくて済むような学習を行ってくれることを心から祈っています。