皆さん、こんにちは、こんばんは。本日は円町校の江島がお送りさせていただきます。
本日の「英作文でも使える?」ネタは、“ベーシックインカム”について。テレビやインターネットで何度か耳にしたことはあるのではないでしょうか。「論破王」として有名なあの方も度々話題に出されており、その影響なのか様々な場所で議論の的になっていますが、意外にその内容についてよく知らない方もいると思います。
ベーシックインカムとは?
ベーシックインカムとは「国民に対して政府が最低限の生活を送る為に必要な額の現金を定期的に支給する政策」で、国民配当/基本所得保障/最低生活保障とも呼ばれています。何といっても、性別や年齢、その他あらゆるものに制限されることなく、すべての人が国から一定額の現金を定期的かつ継続的に受け取れる社会保障制度であることが最大のポイントとなっています。社会保障を目的とするその他の政策との大きな違いは、「失業保険」「医療補助」「養育費・子育て支援」等の個別の名目ではなく、保証を一元化して「国民生活の最低限度の収入(ベーシックインカム)を補償する」というところにあるでしょう。コロナウイルス感染拡大などで景気悪化が進む中で雇用への不安も増大し、注目を集めているだけでなく、2021年の衆議院選挙で選挙公約に掲げる党が出ており、より活発な議論が行われるようになることが予想されます。
趣旨
給付金と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは「生活保護」でしょう。ということで生活保護とベーシックインカムを比較してみましょう。ベーシックインカムの制度を理解するうえで、生活保護と比較することが最も簡単だと思います。
<生活保護とベーシックインカムの比較>
制度 | 取得条件 | 取得単位 |
---|---|---|
生活保護 | 申請主義 | 世帯単位 |
ベーシックインカム | 特になし | 個人単位 |
生活保護は、「目が見えないなどの何かしらの身体障害を患っている」といった条件がついて初めて、「そのマイナスを補填する」という名目で給付される可能性が生まれるといったものです。それも、自ら役所に出向いて申請しないと受け取ることができず、申請後は保護にあたる条件を満たしているか厳しく調査されます。その調査も十分に機能していないのが現状のようで、生活保護費を受け取る権利のある人全体の2割しか受け取れていないとも言われています。また、「世帯」単位でしか取得できず、ある個人が困窮状態だとしても、同居人や家族が基準以上の所得があると、生活保護を受けられません。ベーシックインカムは「無条件」に、すべての国民が「個人単位」で受け取ることが出来るのです。
ベーシックインカムに注目が向けられ始めたのは、2008年の通称「リーマンショック」による金融危機だとされています。長期経済停滞傾向にあった日本経済もこの影響を大きく受けており、非正規労働者が労働者全体の40%を占めるなど、働いても貧しいままである人々(ワーキングプアと言います)が年々増え、当時社会問題となっていました。働けど働けど尊厳ある暮らしをするのに十分な賃金を得ることが難しくなってきたのなら、「労働とは別の回路で所得を配当したほうがいいのではないか」ということで、注目され始めたのがきっかけであるようです。コロナ禍において、失業してしまったり、労働時間短縮による大幅な収入減を余儀なくされている人は大勢おり、その救済措置として近年取りざたされているというわけなのです。
ベーシックインカムのメリット
- 貧困や少子化の解消
やはりこれが一番のポイントでしょう。ベーシックインカムの趣旨そのものです。条件なく一定金額を保障してもらえるのは貧困の解消につながるはずです。また、これまで金銭面を理由に子供を持てなかった人にはプラスに働き、少子化の解消にも期待が持てるかもしれません。日本の抱える最も大きな問題といえるものに好影響を与えられる効果は計り知れないでしょう。
- 生活保護の不正受給問題の解決
上記のとおり、生活保護は支払いが滞っているのはもちろんのこと、不正受給問題も多発しています。そもそも日本の社会保障制度は非常に複雑でなかなか機能しづらくなっているのが現状です。ベーシックインカムによる社会保障制度の一元化により、「払った/払ってない」のやりとりをしなくて済みますね。
- 長時間労働の削減・労働環境の改善・働き方の多様化
ベーシックインカムが導入されると、生活のために「必死に働かなくてもよくなる」という考えを持つ人が増えると思います。その結果、長時間労働が削減できる可能性が生まれます。これも日本が抱える大きな問題の一つ。そこに一石を投じられるのは大きなメリットですね。
ベーシックインカムのデメリット
- 財源の確保が厳しい
現状最大の壁であり、ベーシックインカム採用に至っていない主な要因でしょう。例えば、月に7万円程度の支給を継続したとすれば、年間約100兆円の財源を確保しなければなりません。2022年度予算の国の一般会計歳出は、当初予算としては過去最大の107.6兆円となっていますが、国家予算を2倍にする余裕は到底ありませんね。かといって支給金額を下げたところで、趣旨を果たせなければ何の意味もありません。財源確保のために、これまで社会保障に割いてきた部分や増税で賄うという案もありますが、こんな案を提案しようものなら政界から一瞬で追い出されそうですね。
- 労働意欲の低下
「必死に働かなくてもよくなる」人が増えるということは、「怠けていい加減に働く」人が増えるとも捉えられます。資本主義国としてこれは痛い。経済循環が全くうまくいかなくなりますからね。これもベーシックインカム導入の大きな弱点になる可能性を秘めています。
- 労働環境の改善は見込めない
個人的な意見ではありますが、日本人は「働くのが好き」なのだと思っております。もう少し正確に言うと「余剰を作っておくのが好き」なんだと。結局のところ、労働時間が短くて済むようになったところで「さらなる余剰」を求めて働き続けてしまうのではないかなと感じております。
最後に
パーフェクトなベーシックインカムを継続的に達成できている国はまだありませんが、フィンランドでは、2017年~2018年の2年間にわたりベーシックインカムを導入しました。失業者の中から無作為に2,000人を抽出し、失業手当と同等の毎月560ユーロ(日本円で約73,000円)を支給。その結果、労働意欲や雇用の促進に大きな影響は及ばなかった一方で、ストレスが軽減され幸福度が向上したとの結果が出ています。制度導入にはまだまだ大きな問題が残りますが、もし実現すれば、非常に画期的な制度になるでしょうし、是非とも今後の動向を見ていきたいものです。
長くなりましたが本日はここまでにしておきます。以上です。お疲れさまでした。