京都医塾化学科の安逹です。
みなさんは100年着られるパーカーというものを聞いたことはあるでしょうか?ロンドンのブランド「Vollebak」から発売された「100 Year Hoodie」は、その名の通り100年着ることが出来る耐久性最強のパーカーなのだそうです。
今回はこのパーカーの生地であるケブラー繊維を紹介してみようと思います。
ケブラー繊維とは
「ケブラー」という名称は実は商標登録名で、化学的には「アラミド繊維」と呼ばれるものです。耐熱性が高く、切断・摩耗などに強い、という性質をもっていて、消防士用の防火衣、警察などが着用する防弾ベストにも使われています。
ケブラー繊維の合成
さて、そんなやばい耐久性をほこるケブラー繊維ですが、合成の化学反応式は高校化学で十分理解できるレベルです。以下のような反応になります。
ちなみに、この反応式を含めて、ややマニアックですが、医学部入試にもアラミド繊維のことが出題されています。見てのとおり、ベンゼン環が何個も連続した構造になるので、分子がとても平べったい形になります。それゆえ、たくさんの分子を重ね合わせることが容易になり、密度が大きくなるので、頑丈な繊維となるのです。
ケブラー繊維の弱点
ここまでケブラー繊維の凄さを語ってきましたが、実は弱点もあります。それは、アルカリ性の水溶液には溶けてしまう、という点です。上記の合成反応の逆反応がアルカリ性の水溶液によって促進されてしまうので弱い、ということなのです。
最後に
今回扱った話の内容は「合成高分子」という高校化学の終盤で学習する分野です。受験生のみなさんの中には苦手だと思っている方もおられるのではないでしょうか。紹介した「100 Year Hoodie」は有名人の西村ひろゆき氏がYouTubeでの放送でいつも着ているものです。この記事を見ている方の中にも彼の放送を見たことがある人もいるのではないでしょうか。
学習内容と現実が意外とリンクしていることを知っていただいて、少しでも苦手意識の軽減に役立ててくれればと思います。