京都医塾英語科です。
このページでは「滋賀医科大学医学部の英語」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“滋賀医科大学”の受験を考えている方
・“滋賀医科大学の英語がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
※令和3年度から英語は入試問題の傾向が少し変わりました。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2022年度の試験方式
形式: 記述式
制限時間:英90分(記述式)
配点: 200点
【二次試験英語の得点率目安】
・英語を得点源にしている受験生の得点率…78~82%
・合格者の平均得点率(予想)…60~65%
・合格最低得点域(予想)…52~55%
出題の傾向と特徴
【出題形式】
記述式に関しては大問が3つ出題され、その内訳は…
大問1:設問は全て英語で出題され、択一問題が平均3-4問、21年より復活した短文下線訳を含めた記述式が11-12問課される。2022年の配点は76点。
大問2: 設問は全て英語で出題され、択一問題が平均6-7問、21年より復活した短文下線訳を含めた記述式が10問課される。2022年の配点84点。
大問3:日本語で170-200字程度(英単語だと100字弱程度)の和文英作が出題される。配点40点。
【頻出の出題単元】
文法の観点から言えば、英作文を含めた総合的な英語力が試されるため単元を絞った学習はしないほうがいいでしょうが、関係詞や分詞、接続詞が絡んだり、慣用句を使用する問題が頻繁に出現する印象です。また指示語を特定したうえで解く問題が課されるので普段から意識して学習する必要があります。大問1・2の語彙・慣用表現は難易度が標準的なものが多いので、日常的に語彙力の強化を徹底すれば読解に詰まることはないでしょう。医学的な専門用語はそこまで見られず、注釈もあるので参照しながら読んでいきましょう。
ただし、英作文は非常に注意が必要です。詳細はこの後の分析で述べますが、大問1・2とは難易度の桁が違います。共通テストでの国語・社会の配点が高いことで有名な(実際文系からの理転受験者・再受験者も比較的多い)滋賀医科大学ですが、その影響からか元々の和文自体が英語にストレートに置き換えにくいものになっています。目安としては5000-7000語程度の語彙力がないとすらすら解けないでしょう。まずは、文法の徹底と単語力の強化が至上命題となるでしょう。
因みに自由英作文はここ数年は出ていませんが、かつては出題がありました。時間に余裕のない受験生の方は絶対の必要性はありませんが、総合力をつけるという意味も含めて、対策しておくとよいかもしれません。
【制限時間に対する問題量】
令和2年度以前の形式と比べて分量は大幅に減ったとはいえ、大問1が800語程度、大問2が600語程度とある程度効率的に解かなければ間に合わなくなる分量です。初見では圧倒される受験生もいるかもしれません。しかし、大問1・2は語彙や設問自体の難易度が国公立医学部英語の中でも比較的易しく、文章内容の理解や問題ごとの該当範囲の特定は苦戦するほどではありません。該当範囲に至っては基本的に問題と本文は並列する(所謂、時系列的に対応する)ので読みやすい部類に入ります。その分、問題数が多いので、ゆっくりと解いている暇はありません。英作文を除けば、単純計算で30問前後を60-70分程度で解かなければならず、1問につき2~2.5分程度です。もちろん記述問題も含めているので実際は2分で収まるものが少ないのが実情です。普段から速読を意識し、効率的に文章を読み解く練習をしておかないと苦戦必至といえます。英作文も難易度が高いので最低でも20分は時間を割き、推敲しましょう。元の和文を簡単な日本語に置き換えるだけで5分はかかってしまいますので、早い段階から(少なくとも夏以降から)は英作文の対策を始める必要があります。
2022年度(最新の過去問)の分析
ここまでは大まかな傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問】(難易度:標準)
第1問は、万里の長城に関する新たな研究結果のついての論説文です。分量は大目ですが、本文、設問共に標準の域を出ません。とはいえ、設問4や5のように記述問題を解く中で、指示語を特定しその内容を記述の解答に反映させなければならない問題が課されます。択一問題の選択肢も知っている語句の品詞派生語句が多いなど、一筋縄ではいきません。まずは、該当範囲の文章に構文をつけ、ディスコースマーカーや前後の文章関係から文意をずらさずに解き進めていく練習を積んでいくことをお勧めします。
≪2022年度の目標値≫
英語を得点源にしたい受験生…60点(76点中)
他教科を得点源にしたい受験生…41点(76点中)
【第2問】(難易度:やや難)
第2問は、クリーンーシュリンプという生物を例に挙げながら生態系における相利共生について述べている論説文です。600語と比較的短めですが、修辞的な(言葉巧みに美しく表現する)英語の言い回しが多く、直訳だけでは何を言っているのかわからなくなってしまうような難解な文章です。設問の難易度も大問1よりも大問2のほうが難しく感じます。大問を通じて意識しておくべきことは、修辞的な文章ほど「ここでは何を言いたいのか」を考えることです。例えば、「顧客」という英語が出てきますが、これはシュリンプにとっての「掃除の対象」を表し、相利共生の相手を指します。下線言い換え問題でも、直訳では選択肢と一致していないように見えても、文意から推測すると「その場では」選択肢と同じ意味になる、ということがあります。複雑な文章こそ、基本に忠実に筆者とキャッチボールをするような意識で取り組んでみてください。
≪2022年度の目標値≫
英語を得点源にしたい受験生…66点(84点中)
他教科を得点源にしたい受験生…45点(84点中)
【第3問】(難易度:やや難)
滋賀医科大学最後の砦である和文英訳は、筆者はよく京都大学の理系の過去問風な英作文だと形容しますが、英語の知識だけでなく日本語の解釈能力も必要となる難問です。引用されている和文はエッセイストの星野道夫氏の著作からのものですが、リード文にもあるように自分が解釈し考えたことも含めて英作しなければいけません。和文の日本語に固執しすぎず、まずは簡単な日本語へと置き換えるところから始め、そこに自分の解釈が明確に表れる表現を取り入れるとうまく書き上げることができるでしょう。筆者の視点からは気を付けてほしい箇所がいくつかありますが、その中でも2つほど取り上げてみます。まず2段落目の体言止めの文です。体言止めは英語でも時たま見かけますが、基本的には筆者の意図を読み取った上で、意味上の関係に則って解釈する必要があります。前置詞句として表現するのか、それとも次の文章の主語として扱うのか、など人によって解釈の違いが出ますが、これを滋賀医科大は狙ってきているわけです。英文としての体裁が整っていればよほどの原点はありませんから、丁寧に、しかし臆することなく書き上げましょう。
2つ目は同じ文章の「関わり」という言葉です。relationやconnectionなどいくつか候補はありますが、こういう抽象的な言葉にこそ解釈は表れがちです。単なる「つながり」ではなく、文意から「自然と人の間の相互関係」を示している言葉であると捉えるとinteractionやmutualityなどのワードが思いつくでしょう。普段の学習でも、ただ訳をするだけ、とりあえず和文を英単語の使い分けも考えずに書いてみる、という雑な取り組み方をせず、筆者の意図を考えたり、辞書通りの直訳を避けるなど工夫してみましょう。英語はそもそもコミュニケーションのツールですので、相手の意図を読み取り、自分の意図を反映する練習を積むことが肝要です。
≪2022年度の目標値≫
英語を得点源にしたい受験生…31点(40点中)
他教科を得点源にしたい受験生…21点(40点中)
【総評】
滋賀医科大学医学部を合格するために英語で意識したいことは、大問1・2でいかに得点するか、です。大問3は配点がそこまで大きくありませんから、点数差が開きにくいといえるでしょうが、大問1・2は英語が得意な受験者からすれば8割程度は取れる難易度です。近年、数学が易化していましたが、令和3年には再び超難化しました。このまま難化が続く場合には、英語の得点率が合否を決める可能性も大いにあります。理科の完成度が高いほど優位になる滋賀医科大学では浪人生が有利になる傾向がありますが、現役生でも英語の得点率を高めることによってその差を埋めることができます。文法を抜けなく習得し、語彙力を強化することは必須ですが、分析にも書いた解く際に意識すべきことを普段から如何に実践しているかで得点のしやすさは大きく変わるでしょう。他の大学で練習教材としておすすめなのは、神戸大学の長文問題や京都大学の英作文です。ぜひ活用してください。
まとめ
というわけで、今回は滋賀医科大学医学部の英語についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
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