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2022年度久留米大学医学部の数学過去問対策・分析

2022年度久留米大学医学部の数学過去問対策・分析

京都医塾数学科です。

このページでは「久留米大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“久留米大学医学部”の受験を考えている方
・“久留米大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2022年度(最新の問題より) 
形式: マークシート形式
 ※2020年度以降はマークシート形式、2019年度までは空所補充形式でした。

制限時間:90分
配点:100点(筆記試験の総得点は400点)

出題の傾向と特徴(7年分)

 2019年度までは空所補充形式であったものが、2020年度以降マークシート形式に変わりました。しかし、制限時間の90分に変更はなく、2016年度以降、大問が6題に固定されているため、2016年度以降の7年分についての傾向をまとめます。

毎年恒例の出題単元

 ここ7年間では、6年度で数学Ⅲの微分・積分が出題されています(2022年度は出題されませんでした)。単純な計算から面積・体積を求める問題、極限と積分が融合した問題まで、年によって様々で、難易度も年によって変動するため、一概に完答すべしとは言い切れません。
 しかし、標準的な問題が解けるだけの実力があれば、かなりの割合で正答できることは確かです。微分・積分の計算が苦手な受験生は、絶対的な自信が得られるまで計算演習を繰り返しましょう。
 また、面積や体積の問題では、式を見てパッとグラフが描けるレベルのことが多いため、三角関数や指数・対数関数などの基本関数のグラフはパッと描けるようにしておきましょう。

頻出の出題単元

 問題数が多く、幅広い範囲から出題されている中でも、「図形と方程式」や「数列と極限」からの出題が目立ちます。
 「図形と方程式」は関連事項が多く、苦手な受験生も多いのではないでしょうか。特に、円に関連する問題は頻出であるため、円の方程式の決定や直線との位置関係、円の接線などの典型問題には、即座に反応して適切な解法が選択できるよう訓練しておきましょう。また、作図に慣れておくことは必須です。
 「数列と極限」に関しては、数列の和の求め方や漸化式の基本的な解法はもちろんのこと、数列や級数の収束条件などの基礎知識もしっかり覚えておきましょう。
 どちらの単元も、問題の難易度としてはそこまで高くないため、丁寧にかつ素早く解ききれるようにしておきましょう。

制限時間に対する問題量

 基礎~標準レベルの問題が多く出題されていますが、90分の時間制限で大問6題という設定は、相当練習を重ねておかなければ、高得点を狙うことは難しいです。
 計算速度だけでなく、適切な解法選択ができているかを常に気にしながら演習に取り組みましょう。
 また、試験開始時に全体的なペース配分を考えてから解き始めることも重要です。

2022年度(最新の過去問)の分析

ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【第1問 領域(楕円)と2変数関数の最大・最小】(標準)

 領域 \(\displaystyle\frac{x^2}{4}+\displaystyle\frac{y^2}{3}=1\), \(x≧0\) と\(2変数関数=k\)とおいたグラフが共有点をもつときの最大・最小を求めます。
 しかし、(1)\(x+y=k\)(傾き\(-1\)、切片\(k\)の直線)、(2)\(x^2+y=k\)(頂点\((0,k)\)、上に凸の放物線)はグラフが描けますが、(3)\(x^2+xy+y^2=k\) のグラフを描くことはできません。
 そこで、(3)は楕円の媒介変数表示を利用します。
 \(\left\{ \, \begin{aligned}& x=2\cos\theta \\& y=\sqrt{3}\sin\theta\end{aligned}\right. \) (ただし、\(\displaystyle-\frac{\pi}{2}≦\theta≦\frac{\pi}{2}\))とおくことで、\(x^2+xy+y^2=4\cos^2\theta+2\sqrt{3}\sin\theta\cos\theta+3\cos^2\theta\) となり、三角関数の最大・最小の問題になります。
 ※(1)(2)も同様に、媒介変数表示を使えば、三角関数の最大・最小の問題になります。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答

【第2問 立方体内の三角形の個数】(標準)

 AからHの文字が1つずつ書かれたカードが3枚ずつあり、この中から3枚取り出す場合の数の問題です。また、そのAからHを頂点とする立方体ABCD-EFGHが用意されています。
 (1)は、取り出した3文字の組み合わせを求める問題です。文字の種類が何種類か(AAA、AAB、ABCの3タイプ)で場合分けして考えます。
 (2)は、取り出した3文字を頂点とする三角形の個数を求める問題です。(1)のABCタイプのときに三角形ができますね。
 (3)は、(2)で求めた三角形のうちの直角三角形の個数を求める問題です。実際に三角形をいくつか書き出してみると、直角三角形と正三角形しかなく、正三角形の方が数が少ないため、余事象の発想で求めましょう。もちろん直接、直角三角形の個数を数え上げることも可能です。その場合は、直角三角形が2種類あることに着目しましょう。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(2)(3)

【第3問 複素数の実数条件と方程式の表す図形】(標準~やや難)

 (1)は、複素数 \(w\) の実数条件 \(w=\overline{w}\)と条件式 \(w=\displaystyle\frac{(1-2i)z}{(z-2)i}\) から \(z\) を消去し、複素数 \(w\) の軌跡を求める、いわゆる連動型の軌跡の問題です。式変形はやや複雑ですが、典型的な変形であるため、必ず練習しておきましょう。
 また、複素数 \(z\) を\(z=x+yi\) とおいて計算していくことも可能です。この場合、複素数 \(w\) の実数条件は、\((虚部)=0\) を使うことになります。
 (2)は、(1)で求めた円を図示することで、実軸との共有点が点 \(0\) と点 \(2\) であることが分かります。\(z\neq2\) より A\((0)\) であるため、点 \(0\) と点 \(5-5i\) との距離を求めることになります。
 (3)は、\(|z-(a+6i)|\) が(1)で求めた円周上の点 \(z\) と点 \(a+6i\) との距離であることを使って最小値を求める問題です。頻出の問題ですので、必ず練習しておきましょう。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(1)(2)

【第4問 正四面体の内接球と極限】(標準~やや難)

 まずは、問題文を正確に読み取る必要があります。正四面体の内接球 \(C_1\) に外接し、正四面体の3
つの面に接する球が4つずつ増えていきます。正四面体の4つの角に、半径が小さくなりながら球が増えていきます(『もやしもん』のA・オリゼーみたいな感じです。ちょっと違うか…)。
 (1)(ホ~ミ)は、1辺の長さが \(a\) の正四面体の内接球の半径を求める問題です。正四面体の体積か切断面を利用して求めましょう。少なくともこの問題は正解したいところです。
 (1)(ム~ヤ)と(2)は、1つの球 \(C_2\) がちょうど内接する正四面体と、もとの正四面体の相似比を求めることができれば、等比数列と無限等比級数の問題になります。相似比は、2つの正四面体の高さから求められます。そして、無限級数と言えば、「初項 \(a\)、公比 \(r \quad(-1<r<1)\) の和 \(S\) は \(S=\displaystyle\frac{a}{1-r}\) 」ですね。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(1)(ホ~ミ)

【第5問 約数の個数】(標準)

 約数の個数といえば、「ある自然数 \(N\) が \(N=a^lb^mc^n\cdots\) (\(a, b, c, \cdots\)は素数) と因数分解できるとき、自然数 \(N\) の正の約数の個数は \((l+1)(m+1)(n+1)\cdots\) 」ですね。
 (1)は、72 と 48 の正の約数の個数が求められれば難なく解ける問題です。公式を知らなくても、数え上げられるレベルです。
 (2)は、正の約数の個数が 2 の自然数は「素数」であるため、3桁の素数で最小、最大のものを考えましょう。ちなみに、最小は 100 から、最大は 1000 から考えましょう。
 (3)は、正の約数の個数が奇数の自然数は「平方数」であるため、2桁の平方数を考えましょう。
 (4)は、与えられた方程式を \(《n》\) の2次方程式と見て解くと、\(《n》=7\) が得られます。つまり、正の約数の個数が7であるため、\(n=a^6\) ( \(a\) は素数)と表されます。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(1)(2)(4)

【第6問 積分漸化式】(標準)

 (1)は、\(n=0\) のときであるため、\(\displaystyle I_{m,0} = \int _1^e x^m dx \) を求めるだけです。
 (2)は、\(\displaystyle I_n=\int\sin^nxdx\) や \(\displaystyle I_n=\int(\log x)^n dx\) などの積分漸化式と同様、以下のように部分積分で解くことができます。
\begin{eqnarray}
\displaystyle \int x^{m+1} (\log x)^{n+1} dx &=& \int \Bigl(\frac{1}{m+2} x^{m+2} \Bigr)’ (\log x)^{n+1} dx
\\ &=& \frac{1}{m+2} \biggl( x^{m+2} (\log x)^{n+1} – \int x^{m+2} (n+1) (\log x)^n \frac{1}{x} dx \biggr)
\\ &=& \frac{1}{m+2} \biggl( x^{m+2} (\log x)^{n+1} – (n+1) \int x^{m+1} (\log x)^n dx \biggr)
\end{eqnarray}
となることから
\begin{eqnarray}
\displaystyle I_{m+1,n+1} &=& \frac{1}{m+2} \biggl( \Bigl[ x^{m+2} (\log x)^{n+1} \Bigr]_1^e – (n+1) \int_1^e x^{m+1} (\log x)^n dx \biggr)
\\ &=& \frac{e^{m+2}}{m+2} – \frac{n+1}{m+2} I_{m+1,n}
\end{eqnarray}
 (3)は、(2)の結果を \(m=n=2\) のときから順々に使っていくと求められます。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(1)

【総評】

 基本的な公式、典型的な問題の解法をしっかりと頭に入れておけば解ける問題がほとんどです。そのため、合格点を取るために重要なことは「時間配分」と「計算速度とその精度」です。ペース配分に注意しながら解き進めましょう。

まとめ

 合否を分ける一番の要素は、解法の選択と、計算速度どその精度です。普段から、問題が解けた・解けなかったという部分だけでなく、最適な方法で解けたかどうかに焦点を当てて演習を行いましょう。また、試験開始時に全体を見通してどこから解き始めるかの判断もかなり重要になってきます。模試や過去問演習を通して、解くべき問題・そうでない問題の判断技術を養っておきましょう。

京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください。

投稿者:西浦 洋介

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    22年
  • 出身大学
    同志社大学工学部
  • 特技・資格
    ガンプラ
  • 趣味
    ガンプラ、漫画、テレビ
  • 出身地
    京都府
  • お勧めの本
    NARUTO、アオアシ、怪獣8号などなどいっぱい

受験生への一言
基礎を疎かにせず