京都医塾数学科です。
このページでは「埼玉医科大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“埼玉医科大学”の受験を考えている方
・“埼玉医科大学の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2022年度(最新の問題より)
形式:マーク
制限時間:50分
配点:100点(筆記試験全体の配点は400点)
埼玉医科大学の数学は2017年度以降「60分・マーク式(全4題)」という形式が続いていましたが、
2021年度から「50分・マーク式(全4題)」の形式になりました。
出題の傾向と特徴(6年分)
大問数・問題形式が固定されてきた2017年度以降の6年分についての傾向をまとめます。
【恒例の出題単元】
過去10年以上、ほぼ毎年場合の数・確率の問題が出題されています(2021年度は出題無し)。
順列・組合せを初めとする場合の数の計算や、反復試行や条件付き確率といった知識を必要とする問題だけではなく、数え上げを用いて根気強く調べ上げる事を必要とする問題も目立ちます。樹形図などを駆使して正確に数え上げを実行する訓練も積んでおきましょう。
【頻出の出題単元】
場合の数・確率を除くと、数Ⅲ積分やベクトルの単元が頻出です。
どちらも難易度の高い問題は少なく、基本的な解法で解けるものが中心に出題されています。知識の定着度と計算の正確さが重要になってきます。特に数Ⅲの積分は、定積分の計算や面積・体積の計算など、時間のかかる問題が多いですから、ただ解けるというだけでなく、最も効率の良い解法が選択できるよう、常に意識した学習をしなくてはなりません。
また、どちらの単元においても、作図による考察はほぼ必須です。素早く正しい図が描けるように、普段から練習を重ねておきましょう。
【制限時間に対する問題量と難易度】
2021年度から、試験時間が60分から50分に短縮されました。
時間が短くなって大問数はそのままと、一見すると制限が厳しくなったようにも見えますが、第1問の小問集合で問題数が減っていたり、全体的な計算量も抑えめであったりと、分量は例年と比べて明確に少なくなっています。
問題途中で(あるいは問題の解き始めで)手が止まってしまった時は、問題文の誘導や、穴埋めで現れている式の形などが良い手掛かりとなってくれます。誘導がかなり丁寧に書かれていることも同大学の特徴ですから、過去問演習では、問題文の読み方や流れの掴み方まで意識して取り組んでいきましょう。短い時間制限の中で、冷静に問題を読み、正確に情報を拾い上げる力が試される試験です。
2022年度(最新の過去問)の分析
ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問 小問2問】(易)
問1は、定数 \(a\) を係数に含む3次方程式が3つの異なる実数解を持ち、うち2つの絶対値が等しい時の \(a\) の値を求める問題です。
3次方程式の実数解の個数に関する問題は、まずは因数分解によって1次式と2次式の積に変形する事を意識しましょう。
因数定理によって \(x=-1\) が解であることが確定できるので、残りの( 2次式 ) =0の方程式が
(ⅰ) \(x=1\) を解に持つ
(ⅱ) 絶対値が等しい異なる2つの解( \(x=±α\) ) を持つ
のいずれかであると分かります。
※解答欄の形を見ると、「絶対値が等しい解」が \(x=±1\) である事が分かるので、実は(ⅱ)を検討する必要はありません。
問2は、「定積分を含む関数」の典型問題です。
このパターンは、大きく分けて2通りの解答方針があります。
① \(\int_{a}^{b}f(t)dt\) (積分区間の両端が共に定数) …計算結果が定数になるので、式全体を \(=k\) (定数)と置く
② \(\int_{a}^{x}f(t)dt\) (積分区間の端に変数を含む) … \(x\) で微分すると \(f(x)\) になる
\(x=a\) を代入する(積分区間の幅を0にする)と、式の値が0になる
今回の問題は①のパターンに当たります。
\(\int_{1}^{2}f(t)dt\) と \(\int_{0}^{3}g(t)dt\) の2つを置く必要がありますが、条件式が2つあるため、連立すれば求められます。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…完答。
【第2問 微分法・積分法】(易)
接線の傾きを関数で表したもの、つまり導関数 ( \(f'(x)\) ) が与えられた状態から \(y=f(x)\) と直線で囲まれた部分の面積や \(y=f(x)\) の接線の方程式を求めさせる問題です。
特に難しいところはありませんので、確実に得点源にしておきたい問題です。
まずは \(f(x)\) を求めることになるのですが、 \(f'(x)\) を「不定」積分するので、積分定数 \(C\) の存在を忘れないようにしましょう。
※ \(C\) の値については、判明している関数の値:\(f(1)=\frac{1}{2}\) を利用して求めることができます。
問1は、求めた関数 \(y=f(x)\) と直線 \(y=1\) との交点の座標を求めます。
連立方程式を解くだけの問題です。
問2は、定積分を計算するだけです。
対数関数の積分は、部分積分を利用して求めましょう。
問3は、 \(y\) 切片が2である \(y=f(x)\) の接線の方程式を求めます。
接点が不明の時は、接点を \( ( t , f(t) ) \) と置くことから始めるのが鉄則です。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…完答。
【第3問 図形と計量】(やや難)
道を曲がることができる棒の長さの最大値を考えるという、実用性がある状況を題材にした問題です。
共通テストではよく見る形式の問題ですが、私立医学部の対策に特化しているとなかなか経験が無いかもしれません。
しかし、問題文で条件設定をしてくれているので、見かけで敬遠せずに得点できるところから確実に得点しましょう。
問1は、三角比の定義を用いて線分の長さを表す問題です。
2つの直角三角形に着目すること、求める文字 ( \(d\) ) について解くことを意識しましょう。
問2は、問1で求めた三角比を含む式の最大値を求めます。
微分して増減表を作るという、よくある問題の流れなので、問1が解けていれば難なく求められます。
問3は、問1・問2の結論を用いて棒の長さの最大値を求めます。
問1で設定した点 \(B\) の \(y\) 座標: \(d\) が曲がった先の道路の幅:2m よりも小さくないと棒が通れないので、
( \(d\) の最大値 ) ≦ 2
となればよい事が分かります。
問2と違って \(l\) に具体的な値を代入できず、極値(→最大値)を取る時の \(\theta\) が有名角にならないので計算が煩雑になってしまいますが、丁寧に計算していきましょう。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…問2までを確保、余裕があれば問3も。
他教科を得点源にしたい受験生…問1のみ確保。
【第4問 場合の数・確率】(標準)
正八角形の頂点から異なる3点を選ぶ試行を続け、作られる三角形の形状が2回の試行で一致する確率を考えます。
問1は、二等辺三角形やすべての辺の長さが異なる三角形ができる個数を調べます。
二等辺三角形であれば、頂角に着目して対称性を意識するとカウントしやすくなります。
すべての辺の長さが異なる三角形の個数は、すべての三角形の個数 ( \( {}_{8}C_{3} \) ) から二等辺三角形の個数を引くことで求められます。
問2では、特定の形状を持つ三角形の個数を調べます。
正八角形の辺と共有する三角形の辺(1つまたは2つ)に着目するとよいでしょう。
問3では、三角形の形状の種類を答えます。
問2までの考察を活かせば、容易に答えられるはずです。
問4では、問3までで調べた事を用いて「2回連続で同じ形状の三角形ができる」という確率、さらにその中での条件付き確率を求めます。
確率の計算方法自体は非常に単純なので、問3までを解き進められた受験生であれば、問題なく正答できるでしょう。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…問2がカギ。詰まってしまったら、問1・問3のみ確保して他の問題を優先。
【総評】
恒例だった「場合の数・確率」が2021年度は出題されませんでしたが、やはり復活しました。2023年度も出題される可能性は非常に高いです。
全体的な難易度は(問題によって多少の差はありますが)そこまで高くなく、計算量も控えめです。50分の試験時間を考えると妥当な分量に収まっていると言えます。
まとめ
試験時間が変更されて2年目でしたが、問題の難易度・分量はこの2年で固まってきたと言えます。
同じ形式の過去問が2回分しかありませんが、時間に対する処理量には慣れておきましょう。
出題される内容は基礎~標準レベルに収まるものばかりなので、難しい問題集に手を出す必要はありません。使い慣れた問題集を何周も解き直し、手早く正確に計算処理をこなす力をつけておきましょう。
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