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2022年度大阪医科薬科大学医学部数学の過去問対策・分析

2022年度大阪医科薬科大学医学部数学の過去問対策・分析

 

京都医塾数学科です。このページでは「大阪医科薬科大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“大阪医科薬科大学”の受験を考えている方
・“大阪医科薬科大学の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2022年度
形式:記述
制限時間:100分
配点:100点(筆記試験全体の配点は400点)
大阪医科薬科大学の数学は「100分・記述式」という形式が続いています。

【頻出の出題単元】

直近5年では、毎年「確率」が出題されています。内容は基本的なものが多く、問題文を正確に読み取れれば完答できるようになっています。条件付き確率に関する出題も多いです。教科書レベルの問題を繰り返し練習し、基本的な考え方を身につけておきましょう。
また、数Ⅲの「微分法・積分法」からも毎年出題されています。
「微分法・積分法」は、グラフの概形から面積や回転体の体積を考える、オーソドックスな問題はあまり出題されません。「微分法」では、平面図形・空間図形の面積や体積に関する最大値・最小値を求める問題、「積分法」では、定積分と不等式や漸化式を絡めた問題が出題されています。図形の体積を求める問題は立体の切り口を考えるなど、図形的なセンスが必要となることが多いです。また、図形を考える際に三角比を利用することが多いので、計算を素早く処理するために、三角関数の微分・積分はよく訓練しておきましょう。

【制限時間に対する問題量】

大問5題に対して試験時間が100分であり、正確な記述・証明が必要とされるため、あまり時間に余裕はありません。それほど複雑な計算は要求されませんが、図形や式の対称性を利用するなどして、テキパキと問題をこなしていくことが大事になります。

【証明問題に関して】

整数や有理数・無理数、不等式などに関連する証明問題は毎年出題されています。各大問の後半部の証明問題は難度が高くなる傾向にありますが、前半部は、受験生ならば一度は経験したことのある証明問題が多いです。普段の学習から、整数に関する証明問題や図形の証明問題に数多く触れておきましょう。また、後半部の証明問題は、前半部の結果を用いて証明できるようになっていますので、誘導に乗れるように各大問の流れを意識しながら解きましょう。また、文字が多い証明問題では、対称性を利用することで記述量を減らすことができます。証明問題だけでなく求値問題でも、対称性を利用することで計算量を減らせますので、文字の対称性に注目するようにしましょう。

2022年度(最新の過去問)の分析

ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【第1問 場合の数・確率】(易)

黒石 \(3\) 個と白石 \(7\) 個を一列に並べることを考える問題です。
(1) 並び方の総数を求める問題です。
(2) 黒石が \(3\) 個連続する確率を求める問題です。
(3) 「\(2\) つ以上の連続した白石の両端に黒石がある」部分を含む確率を求める問題です。

(1)(2)は、よくある基本的な問題です。
(3)は、そのまま考えると場合分けが多くなってしまうので、余事象を考えましょう。余事象を考えた際の場合分けの一つが、(2)になります。
それほど難しい問題ではないため、この問題を素早く解き、他の問題に時間を残すことが大事になります。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…完答。

【第2問 \(n\) 次式とその \(k\) 次導関数に関する等式の証明】(やや難)

(1) \((x+1)^m=\displaystyle \sum_{k=0}^{m} {\frac{1}{k!} \frac{d^k}{dx^k} (x^m)}\) を証明する問題です。
(2) \(f(x)\) が実数係数の \(n\) 次多項式のとき、\(f(x+1)=\displaystyle \sum_{k=0}^{n} {\frac{1}{k!} \frac{d^k}{dx^k} f(x)}\) を証明する問題です。 

(1)は、左辺に二項定理を用いて、両辺の \(l\) 次の項の係数を比較すれば証明できます。
(2)は、\(f(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_1x+a_0\) とおいて、(1)と同様に二項定理を用いて \(f(x)\) の \(a_lx^l\) の項について両辺を比較すれば証明できます。その際に、\(k\text{≧}l+1\) のとき、\(\displaystyle \frac{d^k}{dx^k}(x^l)=0\) を利用しましょう。
式の見た目が仰々しく、式の処理も難しいため、(1)を証明するのも大変でしょう。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(1)まで。
他教科を得点源にしたい受験生…解けなくても良い。

【第3問 面積の大小比較を用いた不等式の証明】(易)

(1) 曲線 \(C:y=\displaystyle \frac{1}{x}\)、直線 \(x=a\)、直線 \(x=b\) および \(x\) 軸で囲まれた部分の面積 \(S(R)\) を求める問題です。
(2) 曲線 \(C\) 上の \(x\) 座標が \(a\)、\(b\)、\(\sqrt{ab}\) である点をそれぞれ \(\textrm{A}\)、\(\textrm{B}\)、\(\textrm{D}\) として、線分 \(\textrm{AD}\)、\(\textrm{DB}\)、\(x=a\)、\(x=b\) および \(x\) 軸で囲まれた部分の面積 \(S(T)\) を求める問題です。また、\(x\) 座標が \(\displaystyle \frac{a+b}{2}\) である曲線 \(C\) 上の点における \(C\) への接線を \(m\) として、直線 \(m\)、\(x=a\)、\(x=b\) および \(x\) 軸で囲まれた部分の面積 \(S(U)\) を求める問題です。
(3) 不等式 \(\displaystyle \frac{2}{a+b}<\frac{\log b-\log a}{b-a}<\frac{1}{\sqrt{ab}}\) を証明する問題です。

(1)は、単純な定積分計算の問題です。
(2)は、\(S(T)\) は台形を二つ合わせた形、\(S(U)\)は台形なので、それぞれ台形の面積を求めることによって、計算できます。
(3)は、曲線 \(C\) のグラフは下に凸なので、\(S(U)<S(R)<S(T)\) が成り立ちます。そこで、(1)と(2)の結果を使えば容易に証明できます。
非常に典型的な、面積の大小比較を用いた不等式の証明問題です。考えなければならない面積もそれほど難しくないため、完答が目標です。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…完答。

【第4問 正方形の通過領域】(やや難)

\(\textrm{A}\) \((\cos\theta,0)\)、\(\textrm{C}\) \((0,\sin\theta)\) を対角線とする正方形 \(\textrm{ABCD}\) を考える問題です。ただし、\(\textrm{AC}\) の中点を \(\textrm{M}\) とするとき、\(\textrm{M}\) のまわりに反時計回りに \(\textrm{A}\) を \(\displaystyle \frac{\pi}{2}\) だけ回転させた点が \(\textrm{B}\) です。また、\(\theta\) が \(0\text{≦}\theta\text{≦}2\pi\) の範囲を動くとき、正方形 \(\textrm{ABCD}\) の周と内部が通過してできる図形を \(W\) とします。
(1) \(\overrightarrow{\textrm{MB}}\) の成分を求める問題です。
(2) 点 \(\textrm{B}\)、\(\textrm{D}\) の座標を求める問題です。
(3) \(W\) が \(x^2+y^2\text{≦}1\) によって表される領域に含まれることを証明する問題です。
(4) \(W\) の面積を \(S\) とするとき、\(S\text{≧}2\) を証明する問題です。

(1)は、\(\overrightarrow{\textrm{MA}}\) を成分表示し、複素数平面を利用した回転の考え方を用いれば、求められます。
(2)は、(1)を利用して、\(\overrightarrow{\textrm{MB}}\) や \(\overrightarrow{\textrm{MD}}\) を考えれば、求められます。
(3)は、正方形の各頂点 \(\textrm{A}\)、\(\textrm{B}\)、\(\textrm{C}\)、\(\textrm{D}\) と原点 \(\textrm{O}\) の距離が \(1\) 以下であることを示せれば、証明できます。
(4)は、面積 \(S\) を素直に求めようとすると大変なので、証明すべき不等式の右辺に注目します。面積が \(2\) となる図形を考えると、点 \((1,0)\) \((0,1)\) \((-1,0)\) \((0,-1)\) を頂点とする正方形が見えます。\(W\) の面積はこの正方形の面積以上のはずなので、このことに気づくと証明できます。
(2)までは、基本的な事項が理解できていれば解けるはずです。(3)以降は、図形的な考察が必要となり、時間内に解ききるのは、難しいでしょう。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(3)まで。
他教科を得点源にしたい受験生…(2)まで。

【第5問 条件を満たす点の集合の個数】(標準)

数字 \(1,2,\cdots,n\) の順列 \(x_1,x_2,\cdots,x_n\) に対して、\(xy\) 平面上の点の集合 \(\{(1,x_1),(2,x_2),\cdots,(n,x_n)\}\) を考えます。この集合が直線 \(y=x\) に関して線対称であるような順列を対称な順列と呼び、対称な順列の個数を \(a_n\) とします。
(1) 数列 \(\{a_n\}\) が漸化式 \(a_n=a_{n-1}+(n-1)a_{n-2}\) を満たすことを証明する問題です。
(2) すべての自然数 \(k\) に対して、\(a_{3k+1}\equiv a_{3k}\)、\(a_{3k+2}\equiv 2a_{3k}\) \((\textrm{mod}\ 3)\) を証明する問題です。
(3) すべての自然数 \(n\) に対して、\(a_n\) は \(3\) の倍数でないことを証明する問題です。

(1)は、点 \((n,a_n)\) に注目します。まず \(a_n=n\) であれば、残りの \(n-1\) 個の点の集合が対称な順列であれば良く、その個数は \(a_{n-1}\) です。また、\(a_n=m\) \((m\neq n)\) であれば、\(a_m=n\) であり、残りの \(n-2\) 個の点の集合が対称な順列であれば良く、その個数は \(a_{n-2}\) です。\(m\) の選び方は \(1\) から \(n-1\) まで \(n-1\) 通りあるので、漸化式が成り立つことを証明できます。
(2)は、問題文に \(a\equiv b\) \((\textrm{mod}\ m)\) とは、\(a-b\) が \(m\) の倍数であることを意味すると書いてあるので、\(a_{3k+1}-a_{3k}\)、\(a_{3k+2}-2a_{3k}\) が、\(3\) の倍数であることを(1)の漸化式を利用して証明することになります。
(3)は、まず(1)を利用して、\(a_{3k}\) が \(3\) の倍数でないことを数学的帰納法を用いて証明します。そうすれば、(2)で証明した事実を用いて、すべての自然数 \(n\) に対して、\(a_n\) は \(3\) の倍数でないことを証明できます。
(1)の証明からつまずく受験生も多いでしょう。ただし(2)は、(1)の漸化式を用いれば、比較的簡単に証明できます。(1)ができなくてもあきらめずに、(2)以降が(1)の結果を用いて解けないかを考えましょう。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(2)(3)。
他教科を得点源にしたい受験生…(2)のみ。

【総評】

確実に解けるべき問題とそれ以外の問題の難易度の差が大きかったため、解くべき問題の取捨選択は、比較的行いやすかったでしょう。確実に解くべき問題以外の問題に対して、どれだけ粘り強く立ち向かえたかが、差を分けたでしょう。

まとめ

まずは、解くべき問題を確実に解くことが重要です。その上で、計算を素早く処理し、的確な記述・証明をできるようになりましょう。証明問題では高い論証能力が必要となりますので、普段の学習から正確な考察ができるように心がけましょう。

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投稿者:杉多 孝文

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    5年
  • 出身大学
    京都大学医学部
  • 特技・資格
    柔道初段
  • 趣味
    スポーツ観戦、読書
  • 出身地
    兵庫県
  • お勧めの本
    神様のカルテ

受験生への一言
「分かるとできるは全然違う。できるようになるまでやる。」それが大事です。