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2022年度大阪大学医学部の数学過去問対策・分析

2022年度大阪大学医学部の数学過去問対策・分析

 

京都医塾数学科です。

このページでは「大阪大学医学部医学科の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“大阪大学医学部”の受験を考えている方
・“大阪大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方

におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2022年度(最新の問題より) 
形式: 記述式
制限時間:150分
配点:500点(筆記試験の総得点は2000点(共通テスト500点+2次試験1500点))

出題の傾向と特徴(6年分)

毎年恒例・頻出の出題単元

 「微・積分」は毎年出題されています。接線の方程式を求めたり、関数の増減を調べたり、図形の面積や体積を求めるといったことに加えて、方程式や不等式の証明への応用も散見されます。
 「極限」は上記の「微・積分」との融合で頻出です。
 「整数の性質」についての論証問題も隔年くらいの頻度で出題があります。
 そのほか、「場合の数と確率」、「数列」、「ベクトル」、「複素数平面」など、受験生が苦手or手薄になりがちな単元からの出題があり、気が抜けません。
 融合問題が多いという特徴もあります。

制限時間に対する問題量

 近年は易化傾向にはありますが、例年、一定以上の思考力・計算処理能力・表現力・図形的センスを要求する問題が5題並びます。制限時間は150分なので、1題あたり30分かけられる計算になりますが、繁雑な計算や論理的に正確な記述をする必要があり、決して余裕はありません。年によっては、捨て問に近い難問も見られ、時としてそのような問題を見極める眼力も必要となります。

2022年度(最新の過去問)の分析

 ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【第1問 複素数平面】(標準)

 複素数平面の問題であると同時に、軌跡の問題でもあります。点\(w\)の軌跡を求めたいわけですから、与えられた2つの条件から媒介変数となっている\(z\)を消去して\(w\)の式を導きます。すると、\(|w-3|=2r|w-1|\)(\(r\)は正の実数)を得ます。\(2r=1\)すなわち\(r=\displaystyle\frac{1}{2}\)のときは2点\(1,3\)を結ぶ線分の垂直2等分線、それ以外のときは2点\(1,3\)を結ぶ線分を\(1:2r\)の比に内分・外分する点を直径の両端とする円(アポロニウスの円)となることは、知識として知っておいてもよいでしょう。記述式答案としては、\(r≠\displaystyle\frac{1}{2}\)の場合については、両辺を2乗して\(|w-\alpha|=R\)(\(\alpha\)は複素数、\(R\)は正の実数)の形を導く、\(z=x+yi\)(\(x,y\)は実数)とおいて代入するなどといった解法が考えられます。
 やや繁雑な計算が必要で、それなりに気を付けるべきことはありますが、医学科志望者としては是非とも完答したい問題です。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答

【第2問 三角関数、式と証明】(標準)

 これも典型問題ですが、正確な論証が必要で、満点は取りにくいかもしれません。
 (1)はよくある問題で、絶対に取りこぼしたくありません。\(\alpha=\displaystyle\frac{2\pi}{7}\)のとき\(7\alpha=2\pi\)ですから\(4\alpha=2\pi-3\alpha\)…(☆)です。よって、\(\cos{4\alpha}=\cos{(2\pi-3\alpha)}\)…(★)すなわち\(\cos{4\alpha}=\cos{3\alpha}\)です。言うまでもないことですが、(☆)⇒(★)は言えますが、その逆である(★)⇒(☆)は言えません。
 (2)は2倍角の公式や3倍角の公式を利用して、(1)で導いた式の両辺を\(\cos\alpha\)の式で表現します。すると、\(8\cos^4\alpha-4\cos^3\alpha-8\cos^2\alpha+3\cos\alpha+1=0\)を得ます。因数定理より左辺を\(\cos\alpha-1\)で割り切れて、\((\cos\alpha-1)(8\cos^3\alpha+4\cos^2\alpha-4\cos\alpha-1)=0\)となります。\(\alpha\)は鋭角より\(\cos\alpha-1≠0\)ですから、示すべき式\(8\cos^3\alpha+4\cos^2\alpha-4\cos\alpha-1=0\)を導けます。(2)も是非とも取りたい問題です。
 (3)は(1)(2)を踏まえて、\(\cos\alpha\)が無理数であることを証明します。「無理数」とは「有理数ではない実数」のことです。このような否定的な命題を示すにあたっては、背理法が有効であるケースが多々あります。\(\cos\alpha\)が無理数ではない、すなわち、有理数であると仮定し、矛盾を示します。それでは「有理数」とは何か。「整数÷整数の形であらわされる実数」のことです。そこで、\(\cos\alpha=\displaystyle\frac{p}{q}\)(\(p,q\)は互いに素である自然数)などとおき、(2)の結果に代入して分母を払い、約数・倍数の関係から矛盾を導けます。類題経験があるかどうかがカギを握るでしょう。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答

【第3問 軌跡と領域】(やや難)

 パラメータ\(t\)が\(1≦t≦2\)の範囲を動くときの線分\(y=-t^2x+t(0≦x≦\displaystyle\frac{1}{t})\)の通過領域を求める問題です。考えられる解法は主に3つあるでしょう。

 1つ目は、いったん\(x\)を固定し、\(t\)を\(1≦t≦2\)の範囲で動かしたとき、\(y\)がどのような範囲を動くかを考えるという方法で、このような考え方を順像法と言います。このときのコツは、いったんもとの\(xy\)平面の話は忘れて、\(t\)の関数\(y=-t^2x+t(0≦x≦\displaystyle\frac{1}{t},1≦t≦2)\)の値域を求めることに集中することです。
 2つ目は、\(y=-t^2x+t\)を\(t\)についての方程式であると解釈し、その解が\(1≦t≦2\)の範囲にある条件を考えるという方法で、このような考え方を逆像法と言います。このときも、もとの\(xy\)平面のことはいったん忘れて、\(x,y\)は定数として扱って考えます。
 3つ目は、包絡線を使った考え方です。直線\(y=-t^2x+t\)は、実は双曲線\(y=\displaystyle\frac{1}{4x}\)と常に接し、その接点は\((\displaystyle\frac{1}{2t},\frac{t}{2})\)です。このことに気づければ線分の通過領域は直感的に求まります。このような曲線を包絡線と言います。

 順像法・逆像法のいずれの解法を取る場合も、\(x\)の値の範囲によって場合分けが必要で、それなりに長い道のりです。また、包絡線の考え方を用いることができるのは、パラメータが1種類かつ2次で、直線または線分の通過領域を考えるときに限られます。

 類題経験が多数ある人にとっては典型問題かもしれませんが、そうでない人にとっては解決の糸口すら見つからない可能性があり、また、包絡線を使わない解法は場合分けして慎重に考える必要があります。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…領域の境界線の方程式を求める

【第4問 微分法、数列とその極限】(やや難)

 微分法と数列の極限の融合問題です。
 (1)は\(g(x)=f(x)-x=\log{(x+1)}-x+1\)などとおいて微分して増減を調べます。すると\(x≧0\)の範囲で\(g(x)\)は単調に減少し、\(g(1)=\log{2}>0,g(3)=2(\log{2}-1)<0\)ですから、方程式\(g(x)=0\)すなわち\(f(x)=x\)は、\(x>0\)の範囲で(より詳しく言えば\(1<x<3\)の範囲で)ただ1つの解を持ちます。この際、\(g(x)\)が連続関数であることにも触れておくとよいでしょう。
 (2)は平均値の定理を利用します。(1)の解\(\alpha\)は当然定数ですが、本来は変数である\(x\)も定数だと思うことにするとわかりやすいでしょう。すると、平均値の定理より、\(\displaystyle\frac{f(\alpha)-f(x)}{\alpha-x}=f'(c)\)となる\(c\)が、\(x<c<\alpha\)の範囲に少なくとも一つ存在すると言えます。\(0<x<c\)より\(1<x+1<c+1\)であるから\(\displaystyle\frac{1}{x+1}>\frac{1}{c+1}\)すなわち\(f'(x)>f'(c)\)も言えますから、題意を示せました。
 (3)は\(x_1=1,x_{n+1}=f(x_n)\)(\(n=1,2,3,……\))で表現される数列\(\{x_n\}\)が不等式\(\alpha-x_{n+1}<\displaystyle\frac{1}{2}(\alpha-x_n)\)(\(n=1,2,3,……\))を満たすことを示す問題です。式の形からして、(2)を利用することはなんとなくわかります。示したい不等式に’寄せる’つもりで(2)で示した不等式を変形すると、\(0<x<\alphaのとき\alpha-f(x)<f'(x)(\alpha-x)\)ですから、\(0<x_n<\alphaかつf'(x_n)=\displaystyle\frac{1}{x_n+1}≦\frac{1}{2}\)すなわち\(1≦x_n<\alpha\)を任意の自然数\(n\)について示せれば解決します。このような逆算思考が必要で、この問題最大の難所でしょう。ここまで来れば、あとは数学的帰納法です。
 (4)は\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}x_n=\alpha\)を示す問題ですが、これは説明不要でしょう。(3)までで示したことを利用します。
 
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(2)まで

【第5問 微・積分法(面積)】(標準)

 媒介変数表示された曲線\(C\)と\(x軸\)で囲まれた部分の面積を求めます。\(x,y\)をそれぞれ\(t\)について微分して増減を調べると、\(t\)の値が増加するごとに、点\((x,y)\)は右上、左上、左下と移動することがわかります。すると、\(x\)の値を1つに定めても\(y\)の値が1つに決まらない区間が存在することがわかります。そこで、小さいほうの値を\(y_1\)、大きいほうの値を\(y_2\)などとおいて区別するのがこのタイプの問題のコツです。求める部分の面積\(S\)をいったん\(y_1,y_2\)の\(x\)についての定積分の差の形で表現し、これを\(t\)による積分に置換すると、積分区間の結合が出来て、結局は1つの定積分の形になります。あとはそれほど難しい計算ではないので正解したい典型問題です。
 この手の問題に慣れている人なら、最終的には1つの定積分になることは見えているかもしれませんが、記述式答案としては、上記のようなステップを踏むことが必要でしょう。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答

【総評】

 大阪大学にしては標準問題・典型問題が多く、医学科受験生の中では高得点勝負になったことでしょう。いかに真面目に数学の勉強をしてきたかが試されています。5問中3問が数学Ⅲがらみで、微・積分のウェイトが高めになっています。

まとめ

 先述したとおり、近年は易化傾向で、いかにやや難くらいの標準問題に習熟しているかが問われています。このような問題に対応するために、市販の網羅型参考書などで反復練習を積みつつ、標準的な問題を多数出題する他大学(神戸大学・九州大学など)の過去問も使って実戦的な演習もしていきましょう。無論、今後難化する可能性もありますから、以前のレベルの大阪大学の過去問(余裕があれば東京大学や京都大学の過去問)とも格闘して、難問題に立ち向かっていく気力・体力も養っておきましょう。

京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください。

投稿者:田中 和宏

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    8年
  • 出身大学
    京都大学総合人間学部
  • 特技・資格
    勉強
  • 趣味
    囲碁、テニス、カラオケ
  • 出身地
    大阪府
  • お勧めの本
    一生懸命 ふまじめ 囲碁トッププロの生き方

受験生への一言
どうせやらなければいけないことなら、明るく楽しく。数学から(もちろん他の教科からも)たくさんのことを学んでいきましょう。