京都医塾数学科です。このページでは「岩手医科大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“岩手医科大学”の受験を考えている方
・“岩手医科大学の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2022年度(最新の問題より)
形式: マークシート形式
制限時間:英語・数学を合わせて120分
※2020年度までは数学だけで60分でしたが、2021年度から英語・数学を合わせて120分になりました。
配点: 100点(筆記試験の総得点は350点)
出題の傾向と特徴
2017年度以降、マークシート形式、大問3題に固定されているため、2017年度以降の6年分についての傾向をまとめます。
【毎年恒例の出題単元】
例年、数学Ⅲ積分法(面積・体積)が出題されています。2021年度ではその出題がなくなりましたが、2022年度には、再び出題されました。
また、2022年度では出題がありませんでしたが、2021年度までは以下のように2分野以上の融合問題が出題されています。
2021年度…第1問 ベクトル+微分法
2020年度…第1問 データの分析+場合の数
2019年度…第3問 2次曲線+複素数平面+積分法
2018年度…第2問 数列+場合の数
2017年度…第2問 ベクトル+図形と計量
【頻出の出題単元】
バランスよく広い分野から出題されています。その中でも、数学Ⅰ図形と計量、数学A場合の数・確率、数学B数列、数学Ⅲ微分法・積分法からの出題が目立ちます。特に、積分や図形考察による求積問題は頻出です。
【制限時間に対する問題量】
大問3題とはいえ、毎年、複雑な計算を要求される問題が出題されているため、制限時間内ですべての問題を解ききることはかなり難しいと言えます。また、見た目で圧倒されるような問題でも、実は標準的な問題であったりするため、「問題を見極める力」と「正解すべき問題を確実に正解する力」が必要な大学です。
2022年度(最新の過去問)の分析
ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問 等比数列の和】(難易度:標準)
全ての項が正の、初項 \(a\)、公比 \(r\) \((r \neq 1)\) の等比数列 \(\lbrace a_n \rbrace \) を考えます。
\(\displaystyle S_n=\sum_{k=1}^{n} a_k\)、\(\displaystyle T_n=\sum_{k=1}^{n} \frac{1}{a_k} \) とすると、\( S_9:T_9=36:1\) が成り立っています。
問1 \(\displaystyle \frac{S_n}{T_n}\) を求める問題です。
問2 \(a_5\) の値と \(a_1 \cdot a_2 \cdot a_3 \cdot a_4 \cdot a_5 \cdot a_6 \cdot a_7 \cdot a_8 \cdot a_9\) の素因数分解の結果を求める問題です。
問3 \(\displaystyle \frac{S_9}{S_6}=\frac{13}{4}\) のときの \(r\) を求める問題です。
問4 問3の条件が成り立っているとき、 \(n ≦ 20 \) を満たす \(\lbrace a_n \rbrace \) の各項のうち、整数であるものの総和を求める問題です。
問1 \(S_n\) は初項 \(a\) 公比 \(r\) 項数 \(n\) の等比数列の和、\(T_n\) は初項 \(\displaystyle \frac{1}{a}\) 公比 \(\displaystyle \frac{1}{r}\) 項数 \(n\) の等比数列の和になっているので、それぞれ計算しましょう。\(T_n\) がよく分からなければ、数列 \(\left \lbrace \displaystyle \frac{1}{a_n} \right \rbrace\) を初項からある程度書き出してみましょう。等比数列になっていることに気づけるはずです。一般項や和の式を見てもどんな数列かよく分からないときは、初項から書き出してみると、規則性に気づけることがあります。
問2 問1で求めた \(\displaystyle \frac{S_n}{T_n}\) に \(n=9\) を代入しましょう。そうすると、\(a^2 r^8 =36 \) と分かります。よって、\(a_5=ar^4\) が求められます。このとき、全ての項が正の数列を考えていることに注意しましょう。
次に、\(a_1 \cdot a_2 \cdot a_3 \cdot a_4 \cdot a_5 \cdot a_6 \cdot a_7 \cdot a_8 \cdot a_9=a^9r^{36}\) なので、これは、前半で求めた \(ar^4=6\) を利用すれば求められるでしょう。また、\(a_5\) を中心として、\(a_1\) と \(a_9\)、\(a_2\) と \(a_8\)、\(a_3\) と \(a_7\)、\(a_4\) と \(a_6\) を組にすると、それぞれの積が \(a^2r^8\) になっているので、それを利用しても良いでしょう。
問3 \(S_6\) と \(S_9\) はそれぞれ初項 \(a\) 公比 \(r\) 項数 \(6\)、初項 \(a\) 公比 \(r\) 項数 \(9\) の等比数列の和です。
そこで、
\(\begin{align} \displaystyle \frac{S_9}{S_6} &= \frac{\displaystyle \frac{a(r^9-1)}{r-1}}{\displaystyle\frac{a(r^6-1)}{r-1}}\\ &= \frac {(r^3-1)(r^6+r^3+1)}{(r^3-1)(r^3+1)}\\ &= \frac{r^6+r^3+1}{r^3+1}\end{align}\)
となります。よって、\(\displaystyle \frac{r^6+r^3+1}{r^3+1}=\frac{13}{4}\) を解けば良いでしょう。問3は、問1,2が解けていなくても解けるようになっています。前半の設問が解けていなくても、後半の設問が独立していないか確認するようにしましょう。
問4 問2と問3を利用して、\(a_n=2\cdot3^{\frac{1}{3}(n-2)}\) と分かります。この数列で項が整数となるのは、\(n=3m-1\) (\(m\) は自然数)のときです。よって問4は、\(a_2+a_5+a_8+a_{11}+a_{14}+a_{17}+a_{20}\) を求める問題になります。これらの和は、初項 \(2\) 公比 \(3\) 項数 \(7\) の等比数列の和になっています。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…問3まで
【第2問 回転体の体積】(難易度:標準)
関数 \(f(x)=x \sin 2x \) について、2つの曲線 \(C_1:y=f(x) \) と \(\displaystyle C_2:y=f\left(x- \frac{\pi}{2}\right) \) を考える問題です。
問1 曲線 \(C_1\) と \(C_2\) の \(0≦x≦ \displaystyle \frac{\pi}{2}\) における共有点の \(x\) 座標を求める問題です。
問2 \(\displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{4}} x \sin 2x dx\)、\(\displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{4}} \sin^2 2x dx\)、\(\displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{4}} x \sin^2 2x dx\) をそれぞれ求める問題です。
問3 \(\displaystyle 0≦x≦\frac{\pi}{2}\) の範囲で曲線 \(C_1\) と \(C_2\) によって囲まれた図形の面積 \(S\) を求める問題です。
問4 問3で考えた図形を \(x\) 軸の周りに1回転させてできる回転体の体積 \(V\) を求める問題です。
問1 \(\displaystyle x \sin 2x =\left(x-\frac{\pi}{2}\right) \sin 2\left(x-\frac{\pi}{2}\right)\) を解きましょう。
\(\begin{align} \displaystyle \sin 2\left(x-\frac{\pi}{2}\right)\
&=\sin (2x-\pi)\\
&=- \sin 2x \end{align}\)
を利用すると良いでしょう。
問2 \(\displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{4}} x \sin 2x dx\) は、部分積分法を用いて計算しましょう。
\(\displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{4}} \sin^2 2x dx\) は、半角公式を利用しましょう。
\(\displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{4}} x \sin^2 2x dx\) は、半角公式を利用してから部分積分法を用いて計算しましょう。
どれも基本的な計算になっています。必ず正答したい問題です。
問3,4 \(y=f(x)\) は偶関数なので、グラフは \(y\) 軸対称になっています。なので、\(\displaystyle -\frac{\pi}{2}≦x≦0 \) の範囲と \(\displaystyle 0≦x≦\frac{\pi}{2} \) の範囲とでは左右対称な形になっています。 \(\displaystyle y=f\left(x- \frac{\pi}{2}\right) \) は、\(y=f(x)\) を \(x\) 軸方向に \(\displaystyle \frac{\pi}{2}\) だけ平行移動したものなので、曲線 \(C_1\) と \(C_2\) によって囲まれた図形は、\(x=\displaystyle \frac{\pi}{4}\) に関して対称な図形になります。よって、問3、4ともに、\(\displaystyle 0≦x≦ \frac{\pi}{4}\) の範囲を問2を利用して計算したのちに、\(2\) 倍すれば良いでしょう。これに気づけなくても、\(\displaystyle 0≦x≦ \frac{\pi}{4}\) と \(\displaystyle \frac{\pi}{4}≦x≦ \frac{\pi}{2}\) の範囲を、それぞれ計算すれば良いでしょう。\(\displaystyle \frac{\pi}{4}≦x≦ \frac{\pi}{2}\) の範囲の計算は、問2の計算途中に出てくる不定積分を利用しましょう。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…時間をかけてでも完答したい
【第3問 正三角形の頂点・各辺の中点・重心に球をおく場合の数】(難易度:標準)
正三角形の頂点・各辺の中点・重心に同じ大きさの円が描かれています。その円に球を1つずつ並べる並べ方を考える問題です。重心のまわりに回転して同じ配列になる並べ方は1通りと数えます。また、同じ色の球は区別しないものとします。
問1 1から7の自然数が1つずつ書かれた球を、正三角形に描かれている円のところに1つずつ並べます。1が頂点に置かれる並べ方と全ての並べ方が何通りあるか求める問題です。
問2,3,4 白球1個と赤球6個、白球2個と赤球5個、白球3個と赤球4個、白球と赤球合計7個を、それぞれ、正三角形に描かれている円のところに1つずつ並べる並べ方を求める問題です。
問1 前半は、1の球を一つの頂点に固定し、他の6個の球の並べ方を考えれば良いでしょう。
後半は、1の球を中点と重心に置く並べ方をそれぞれ考えます。中点に置くときは、前半と同じ考え方ができます。重心に置くときは、2の球を頂点に置くか中点に置くかで並べ方が変わります。よって、それぞれの場合において、残りの5個の球の並べ方を考えれば良いでしょう。
問2,3,4 最後の設問以外は、どのような並べ方があるか、書き出して調べ上げていきましょう。その際に、頂点・中点・重心に置く白玉の個数に注目していくと、数え上げやすくなります。
最後の設問は、白球1個と赤球6個、白球2個と赤球5個、白球3個と赤球4個と、それらの白球と赤球の個数を入れ替えたもの、白球7個、赤球7個の並べ方を合算しましょう。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…問2まで
他教科を得点源にしたい受験生…問1まで
【総評】
第2問では、複雑な計算が要求されました。時間内に解ききるのは難しい問題だったでしょう。第3問は、数え上げる必要があるため、正確に合わせるのは難しかったでしょう。問題を見極め、飛ばす問題は飛ばし、正解すべき問題で確実に正解することが重要になります。
まとめ
60分という制限時間の中で合格点をとるためには、素早く問題を見極め、素早く正確に処理する必要があります。このような力を養うためには、過去問による訓練が最も有効です。しかし、それだけでは知識面の強化が不十分ですので、過去問を解いたことで明らかになった弱点を、使い慣れた問題集を用いて何度も練習しましょう。図形と計量や積分法の求積問題は頻出単元であるため、是非練習しておきましょう。
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