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2022年度帝京大学医学部の数学過去問対策・分析

2022年度帝京大学医学部の数学過去問対策・分析

 

京都医塾数学科です。

このページでは「帝京大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“帝京大学医学部”の受験を考えている方
・“帝京大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方

オススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2022年度(最新の問題より) 
 形式:空欄補充
 制限時間:120分で2教科 (実質60分)
 配点:100点(筆記試験全体の配点は300点)

 帝京大学医学部の数学は「60分・空所補充式」という形式が続いています。
 また、大問数が4題と固定されています。

出題の傾向と特徴(5年分)

形式に加え、近年5箇年分(1箇年当たり2日分ずつ)の傾向をまとめます。

※「赤本」に掲載されている、1日目・2日目を対象とします。

【出題範囲】

 私立医学部ではかなり珍しく、数学Ⅲは出題範囲外となっています。数学Ⅲが未習、または学校の進度が遅く数学Ⅲの対策が十分でない現役生の受験生には魅力的な大学でしょう。ただ、受験科目が「英語と、数学・理科・国語から2科目」という形式ですから、数学を使わないという選択肢も存在します。

【頻出の出題単元】

 出題される範囲が数ⅠAⅡBと限られた中でも、特に積分からの出題が目立ちます。過去5年分(×2日分の合計10回分)の全てで出題されています。特に面積計算が多く出題され、「6分の1公式」をはじめとする面積公式が適用できるものばかりです。これらの計算公式を、どんな場面で適用できるのかを含めて適切に使いこなせるようにしておきましょう。

 その他、指数・対数関数や数列、場合の数と確率、三角関数の出題頻度が高くなっています。

 一方で、整数やデータの分析は、出題される頻度は低くなっています。

【難易度・制限時間に対する問題量】

 約60分で大問4つという、医学部入試でもよくある形式になっています。計算量もそこまで多くはありません。ただ、小問に分かれている形式の出題も多く、基礎~標準レベルの問題をサクサクと解き進める力が求められます。
 いわゆる難問・奇問と言った問題は少ないので、各頻出単元の典型問題を見て、「直ぐに解法が思い浮かぶ」と言えるようにしておきましょう。

2022年度(最新の過去問)の分析

さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。

※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【第1問】(難易度:①標準 ②易) 

(数学①)

 関数 \(y = (x+1)(x-3)|x-1|\) のグラフCについて、特定の条件を満たす接線や、曲線で囲まれた部分の面積を求める問題。
 絶対値付きの関数ではありますが、グラフの作図は容易です。(ⅰ) \(x≧1\), (ⅱ) \(x<1\) の範囲で場合分けし、グラフを描きます。問題文の時点で因数分解の形になっているため、式は展開せず、そのまま利用しましょう。
 空欄ア,イでは、傾きが \(\displaystyle \frac{11}{4}\ \)となるグラフCの接線のうち、接点の \(x\) 座標が最大・最小となるものを求めます。
 \(f(x) = (x+1)(x-3)|x-1|\) とおけば、当然 \(f'(a) = \displaystyle \frac{11}{4}\ \)となるような \(a\) が接点の \(x\) 座標です。\(f'(x)\) は2次式ですから、\(a\) の最大・最小は、2次関数の最大・最小を求めることと同義です。定義域に注意して解き進めましょう。
 空欄ウ,エでは、接点の \(x\) 座標が最大となる接線について、線対称な直線を求めます。なお、対称軸は直線 \(x=1\) です。基本通り “対称軸上の点が、対称な2直線上の点の中点になる” という条件から、直線の方程式を導きましょう。
 空欄オでは、ここまでに求めた、① グラフCの接線、② 接線と \(x=1\) に関して対称な直線、③ グラフC、の3曲線によって囲まれた部分の面積を求めます。グラフCの式が切り替わる点の \(x\) 座標と、2直線の交点の \(x\) 座標に注意して作図を行いましょう。積分計算自体は、ただの多項式関数の積分ですから、ミスなく解き切りたいところです。グラフの対称性に気付くことができれば、計算の手間はかなり省けます。

(数学②)

 小問集合です。

 (1) 2つの放物線と接線について、接線の方程式および接線と放物線で囲まれた部分の面積を求める問題。
 基本通り接線の方程式を作り、囲まれた部分の面積を表す式を立てましょう。

 (2) 積分方程式の問題。
 \(f(x)\) が \(x\) の多項式であることに注意して解きましょう。(1) 同様、基本的な解法が理解できていれば、躓くことはないはずです。

≪2022年度の目標値≫

数学を得点源にしたい受験生… ①10割 ②10割

他教科を得点源にしたい受験生… ①6割 ②8割

【第2問】(難易度:①標準 ②標準) 

(数学①)

 小問集合です。

 (1) 数列 \(a_{n} = \sin \displaystyle\frac{n \pi\ }{6}\ \ \)および \(b_{n} = \cos \displaystyle\frac{n \pi\ }{3}\ \ \)について、以下の問いに答えよ。

 (ⅰ) \( \displaystyle\sum_{n=1}^{50}(a_{n}+b_{n})\ \) および \( \displaystyle\sum_{n=1}^{250}(a_{n}・b_{n})\ \) を求める問題。
 \( \displaystyle\frac{n \pi}{6}\) は、\(n = 1~12\) でちょうど「1周」します。そのため \(a_{n}\) の値は、これら12個の \(n\) によって循環すると考えることができます。\(b_{n}\) の値も同様に、\( \displaystyle\frac{n \pi}{3}\) の「1周」分、すなわち \(n = 1~6\) のときの値に注目して計算を行います。
 \(“a_{n} + b_{n}”\) と \(“a_{n}・b_{n}”\) どちらの計算においても、\((n=1, 2, … , 12)\) の場合を求めておけば、総和が出せます。

 (ⅱ) \(x\) の2次方程式 \(2x^2-4a_{n}x-3b_{n} = 0\) が負の重解を持つ場合の \(n\) のうち、最小のものを求める問題。
 まずは \(a_{n}\) , \(b_{n}\) を定数とみなし、① 判別式、② 放物線の軸の位置の2要素から、負の重解を持つための \(a_{n}\) , \(b_{n}\) の条件を考えます。\(D = 0\) かつ \(a_{n}<0\) より、三角関数を含む方程式と、その解が満たすべき条件が導かれます。方程式自体は非常に簡単なものですから、ここまで解けたのであれば、最後まで解き切ってしまいましょう。

 (2) 原点Oから出発し、数直線上を動く点Pについて考える問題。
 サイコロを三回投げ、
 ①.1投目:\(+\) 方向に、出た目の数だけ進む
 ②.2投目:\(-\) 方向に、出た目の数だけ進む
 ③.3投目:\(+\) 方向に、出た目の数だけ進む
という条件のもと、点Pが動きます。このとき、点Pが \(+3\) の位置にいる確率を求めよ、という問題です。
 ”①,③ で出た目の和” \(-\) “② で出た目” \(=\) “数直線上における点Pの位置”
ですから、まずは ①,③ で、どのような目が出ればよいのかを特定します。
 例えば、①で “2” , ③で “3” が出ている場合、点Pが \(+3\) の位置にいるためには、② で “2” が出ていなくてはならず、それ以外のパターンは存在しません。このことから、①②③ の出目すべてを調べる必要はなく、①③ の出目の組合せだけを追えば良いことがわかります。② で出た目を引いて 3 になる可能性がある、すなわち ①+③=4~9 となる場合の数を、表を用いて考えましょう。

(3) サイコロを 4 回投げ、出た目の積について確率を考える問題。
 出た目を順に \(a, b, c, d\) としたときに、\(ab=cd\) となる確率を求めます。
 \(a , b\) の目の組合せと積を、表にして数え上げましょう。
 積が \(1, 9, 16, 25\) となる組合せは、1つずつしかありません。同様に、積が \(2, 3, 5\) となる組合せは2つずつ存在します。この要領で、全ての積の値について、いくつずつ \(a, b\) の組合せが存在するかを考えれば、確率が求まります。
 (2)もそうですが、サイコロを 3 回以上投げているからといって、必ずしも 3 つ 4 つの出目の組合せを考えなくてはならないわけではありません。上手く条件を整理して、サイコロ2個の問題に落とし込めないか、考えてみましょう。

(数学②)

 数学① と同様、小問集合です。

 (1) 関数 \(f(θ) = 8-2 \sin{2θ}\ ( \sin{θ}\ + \cos{θ}\ – \displaystyle\frac{1}{2}\ )+2( \sin{θ}\ + \sin{θ}\ )\) の最大値を求める問題。
 倍角の定理より、\( \sin{2θ}\ = 2 \sin{θ}\ \cos{θ}\ \) とすると、\(f(θ)\) は \( \sin{θ}\ \) , \( \cos{θ}\ \) の対称式となります。このような問題では、 \( \sin{θ}\ \) , \( \cos{θ}\ \) の基本対称式が文字 \(t\) の多項式で表せることを利用しましょう。
 \( \sin{θ}\ + \cos{θ}\ =t\) とおくと \( \sin{θ}\ \cos{θ}\ = \displaystyle\frac{t^2-1}{2}\ \) となります。

  (2) \(x^{200}+x^{199}+7x^{198}+2x^{197}+4x^{196}\) を \(x^2+x+1\) で割った余りを求める問題。
  \(x^2+x+1\) を見たときに \(x^3=1\) が即座に思い浮かぶかが、成否の分かれ目です。\(1\) の3乗根 ω を用いた式の値を求めるのと同じ要領で、\(x^{200}+x^{199}+7x^{198}+2x^{197}+4x^{196} = (x^3)^{66}・x^2+(x^3)^{66}・x+7(x^3)^{66}+2(x^3)^{65}・x^2+4(x^3)^{65}・x\) として \(x^3=1\) を代入すると、簡単な多項式の割り算で余りを求めることができます。

≪2022年度の目標値≫

数学を得点源にしたい受験生… ①8割 ②10割

他教科を得点源にしたい受験生… ①6割 ②6割

【第3問】(難易度:①易 ②標準) 

(数学①)

 小問集合です。

 (1) 3次方程式の問題。
 与えられた条件(三角形の各辺の長さと∠Aの大きさ)を元に、\(t = \cos{θ}\ \) としたときの \(t\) の3次方程式を作ります。何をもとに立式するかで悩むところですが、今回は三角形の 1 つの内角 A の大きさを \(3θ\) と置いていることから、三角形の辺や角についての関係式であることがわかります。
 このような式で真っ先に思いつくのは、やはり正弦定理か余弦定理でしょう。余弦定理をもとに、三辺の長さと \( \cos{3θ}\ \) の等式を作ることができます。3倍角の公式を用いることで、\(t\) の3次方程式に書き換えることができます。

 (2) 放物線 \(y = x^2\) 上の2点 A\( (a, a^2)\) , B\( (-a, a^2)\) と、原点Oの3点を通る円の半径 \(R\) を考える問題。
 円の中心は \(y\) 軸上にあるため、その座標は \((0, R)\) と表せます。また、点Aから中心までの距離 \(d\) について \(R = d\) が成り立つので、半径 \(R\) を \(a\) の式で表すことができます。ここさえ立式してしまえば、あとは代入計算と極限(実質的には2次関数の最小)を考えるだけの問題です。

(数学②)

 ランプが赤か青に点灯する確率を考える問題。
 3行2列に並んだ計6個のランプがあり、スイッチを入れると一斉に点灯します。その際 \( \displaystyle\frac{1}{3}\ \) の確率で赤色に、\( \displaystyle\frac{2}{3}\ \) の確率で青色に点灯します。
 なお、各ランプにどちらの色が出るかは独立とします。

 (1) ちょうど3個のランプに赤が点灯する確率
 6個のランプ各々において、定められた確率のもと、赤 or 青のどちらかが点灯します。
 ・独立な試行を複数回行う
 ・全体の試行回数と、各事象の起こる回数が具体的に分かっている
 以上の条件から、反復試行の確率として処理すれば良いことが分かります。

 (2) 少なくとも1個のランプに赤が点灯する確率
 余事象「すべてのランプに青が点灯する」確率から求めましょう。

 (3) 少なくとも1つの列ですべてのランプに赤が点灯する確率
 (2)と同様に「少なくとも」ときたら「余事象」と行きたくなるところですが、この余事象は「すべての列で、少なくとも1つのランプに青が点灯する」となり、むしろ問題文よりも条件が複雑になってしまいます。
 ここは地道に、
・1列目のみすべて赤が点灯する確率
・2列目のみすべて赤が点灯する確率
・すべてのランプに赤が点灯する確率
の3通りに場合分けし、1つずつ計算していきましょう。

 (4) どの列でも少なくとも1個のランプに青が点灯する確率
 先に述べた通り、これが (3) の余事象となります。

 (5) どの行でも少なくとも1個のランプに青が点灯する確率
 ある行において、少なくとも1個のランプに青が点灯する確率は、余事象である「その行のすべてのランプに赤が点灯する」確率から求めることができます。これがすべての行について”同時に起こる”わけですから、それらの確率の積で答えが導けます。

≪2022年度の目標値≫

数学を得点源にしたい受験生… ①10割 ②9割

他教科を得点源にしたい受験生… ①8割 ②6割

【第4問】(難易度:①標準 ②標準) 

 (1) 正の整数の組 \((x, y, z)\) について、方程式 \( \displaystyle\frac{1}{x}\ – \frac{y}{8}\ + \frac{1}{z}\ = \frac{1}{4}\ (x ≧ z ≧ 2)\) を満たすものが何組あるか、また、その条件を満たす中で \(x + y + z\) の最大値がいくらであるかを求める問題。
 与式を変形すると \( \displaystyle\frac{y}{8}\ + \frac{1}{4}\ = \frac{1}{z}\ + \frac{1}{x}\ \) となります。ここで、条件 \((x ≧ z ≧ 2)\) を \( \displaystyle\frac{1}{x}\ ≦ \frac{1}{z}\ ≦ \frac{1}{2}\ \) と変形すると \( \displaystyle\frac{1}{x}\ + \frac{1}{y}\ ≦ \frac{1}{z}\ + \frac{1}{z}\ = \frac{2}{z}\ \) となります。ここで、これらの方程式と不等式を合わせると \( \displaystyle\frac{y}{8}\ + \frac{1}{4}\ ≦ \frac{2}{z}\ \) という不等式が導かれます。
 ここまでが、基本となる解法の流れです。あとは、導いた不等式から取り得る \((x, z)\) の組を特定し、解を導くだけです。解の組合せは全部で 7 組しかありませんから、すべて調べ上げたうえで解答しましょう。

 (2) 与えられた領域内に含まれる格子点について考える問題。
 エでは \(y≦ -2x+6\) , \(y≦ x+3\) , \((x-1)^2+(x-4)^2≦ 25\) のすべてを満たす領域に含まれる格子点の個数を求めます。
 まずは図示してみることが大事です。実際に書いてみると、格子点の \(x\) 座標は \(-2\), \(-1\), \(0\), \(1\), \(2\), \(3\) のいずれかであることがわかります。あとは、それに対応する \(y\) 座標の個数を調べていくだけです。
 オでは、エで調べた格子点のうち \((x + y) \log_{10}{3}\ – y \log_{10}{2}\ \) の値が最小になるような点の座標を求めます。エが解けていれば、各格子点の座標は既に分かっている(あるいは容易に求められる)状態のはずですから、代入して答えを特定すれば良いでしょう。 

(数学②)

 \(x, y\) の不等式 \(( \log_{10}{x}\ )^2+( \log_{10}{y}\ )^2- \log_{10}{x}\ ^2- \log_{10}{y}\ ^2-2≦ 0\) について、与えられた \(x, y\) の式の値が最大・最小になる場合を考える問題。
 ア, イ, ウでは、\(xy = k_{1}\) としたときの \(k_{1}\) の最大値と、そのときの \(x\), \(y\) の値が \(10\) の何乗であるかを求めます。
 \( \log_{10}{x}\ = X\) , \( \log_{10}{y}\ = Y\) のように置き換えて考えると、与えられた不等式の示す領域が、中心 \((1, 1)\) , 半径 \(2\) の円 \(O\) の内部(境界を含む)であることが分かります。このとき \(xy = k_{1}\) の両辺で対数をとると \( \log_{10}{xy}\ = \log_{10}{k_{1}}\ \) となるため、\(X+Y = \log_{10}{k_{1}}\ \) が導けます。この方程式で表される直線 \(l\) と円 \(O\) が接するときが \( \log_{10}{k_{1}}\ \) が最大・最小となるときです。
 エ, オも同様に、円と直線の関係から最大・最小を求めましょう。

≪2022年度の目標値≫

●●を得点源にしたい受験生… ①8割 ②7割

他教科を得点源にしたい受験生… ①6割 ②4割

【総評】

 数学①,②ともに、基礎~標準レベルの問題がほとんどです。問題集に載っている典型的な解法は、ひと通り押さえておかなくてはなりません。解法が定着していれば、手が出ない問題は、ほとんどないはずです。

【まとめ】

というわけで、今回は帝京大学医学部の数学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!

 京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください。

投稿者:福本 皓太

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    7年
  • 出身大学
    帝塚山大学人文学部
  • 特技・資格
    剣道三段
  • 趣味
    読書、旅行
  • 出身地
    京都府
  • お勧めの本
    忘れられた日本人

受験生への一言
数学の楽しさは、多くの場合苦しさと表裏一体です。できないこと、難しいことから逃げずに、真正面から取り組んでください。その先に、今まで認識できていなかった世界が広がっています。