京都医塾数学科です。
このページでは「日本医科大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“日本医科大学医学部”の受験を考えている方
・“日本医科大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方
オススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2022年度
形式: 記述式
制限時間: 90分
配点: 300点
出題の傾向と特徴
【毎年恒例の出題単元】
毎年、微分積分の単元からの出題があります。標準的な計算はもとより、極限の扱い方や微分の定義、応用的な積分方程式など、幅広い範囲で難易度の高い問題が出題されてきています。調べる対象となる関数も、相応に複雑な形をしていることが多いため、標準以上のレベルの問題集を用いて、十分な量の演習をこなしておかなければなりません。
【頻出の出題単元】
微分積分以外の単元からは、図形と方程式および確率からの出題が多いです。図形と方程式に関しては、問題中で複雑な方程式を与えられることが多いため、素早く正確に、適切な式変形を実行する力が求められます。普段から式変形の工夫を意識した演習を行いましょう。確率については、座標平面等、他の単元と絡めた問題が頻出です。そういった意味でも、座標平面上における点の座標やグラフに関連する問題には、十分に慣れておく必要があるといえます。
【制限時間に対する問題量】
90分で大問4題の設定ですが、1問1問の分量が多く、時間内に完答することは難しいでしょう。解くべき問題を見定めて、確実に点を取っていかなくてはなりません。
2022年度(最新の過去問)の分析
さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問】(難易度:やや難)
複素数平面の問題。
原点Oを中心とする半径2の円Cの周上にある点P(z) について、点Q(w)を以下の式のように定めます。
\[w=\frac{(4+2i)z+4-4i}{z+2-2i}\ …①\]
ア)イ)点P(z) が円 \(C\) 上を動くとき、点Q(w) がどのような円周上にある点なのかを求めます。
①の式を\(z\) について解き、\(|z|=2\) に代入することで、複素数 \(w\) についての方程式を導くことができます。基礎的な問題ですから、ミスなく計算を進めましょう。
ウ~カ)\(z=w\) を満たす曲線 \(C\) 上の点をB(\(\beta\ \))とおき、\(\displaystyle\frac{z-w}{z-\beta\ } \) を求める問題(ただし、\(z≠w\) とする)。
ア)イ)より、点Q(\(w\)) は中心 \(\alpha\ =-2i\) ,半径4の円周上の点です。この円と円 \(C\) との交点が点B(\(\beta\ \)) であることは、図をかいてみれば明らかです。
\(\beta\ =2i\) であり、さらに問題の条件から \(w=\displaystyle\frac{(4+2i)z+4-4i}{z+2-2i}\ \) となります。これらを \(\displaystyle\frac{z-w}{z-\beta\ }\ \) に代入し、\(z\) について整理すれば、解が導けます。
キ~サ)点P(\(z\)) が \(z≠\beta\ \) かつ \(\sqrt{5}\ \)PQ ≦ BP を満たしながら \(C\) 上を動くときの、BPの最大値と最小値を求める問題。
PQ\(=|z-w|\), BP\(=|z-\beta\ |\) より、\(\sqrt{5}\ |z-w|≦|z-\beta\ |\) となります。
また、ウ~カ)より \(\displaystyle\frac{z-w}{z-\beta\ }\ =\displaystyle\frac{|z-2-2i|}{|z+2-2i|} \) なので、\(\displaystyle\frac{|z-2-2i|}{|z+2-2i|} ≦\frac{1}{\sqrt{5}\ }\ \) という不等式が導けます。
不等式から、P(\(z\)) は中心 \(3+2i\),半径 \(\sqrt{5}\) の円(これを円 \(D\) とおきます)の内部または周上に存在することが分かります。
さらに元の条件から、P(\(z\)) は原点中心、半径\(2\)の円 \(C\) の周上の点でもあります。
すなわち、点P(\(z\)) の軌跡は、円 \(C\) の円周のうち、円 \(D\) の内部または周上に含まれる部分となります。これらの図を座標平面上に表して考えれば、BPの最大・最小は容易に求まるでしょう。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 7割
他教科を得点源にしたい受験生… 4割
【第2問】(難易度:標準)
正の整数 \(n\) について、整数 \(x, y\) が \(1≦x≦n, 1≦y≦n\) をそれぞれ満たす。
箱Aには赤球 \(x\) 個と白玉 \(n-x\) 個、箱Bには赤玉\(y\) 個と白玉 \(n-y\) 個が、それぞれ入っている。
サイコロを振って、1の目が出たら箱Aから、1以外の目が出たら箱Bから、1個の球を取り出す。
赤球が取り出されたとき、箱Aから赤球が取り出された確率を \(p\) とおく。
問1 \(p\) を求めよ。
条件付き確率の公式通りに計算するだけです。箱Aから赤球が取り出される確率を答えないように注意しましょう。
問2 \(\displaystyle\frac{1}{6}\ ≦p≦\displaystyle\frac{2}{7}\) を満たす座標平面上の点 \((x, y)\) の個数 \(N(n)\) を求めよ。
確率は全く関係なく、2元の不等式から格子点を求める問題です。\(xy\) 平面に図示して考えましょう。また、不等式の変形において、\(x≧0, y≧0\) であることに注意して進めるようにしましょう。
不等式を \(y\) について解き進めると、\(\displaystyle\frac{x}{2}\ ≦y≦x\) となります。2直線 \(y=\displaystyle\frac{x}{2}\ , y=x\) および \(x=n\) で挟まれた部分(境界線を含む)に含まれる格子点の個数を考えましょう。ただし、問題の条件から \(x≧1\) なので、原点だけは除外します。
このとき、直線 \(y=x\) 上の点は、任意の自然数 \(x\) について格子点になります。一方で、直線 \(y=\displaystyle\frac{x}{2}\ \) 上の点は、\(x\) が偶数の場合にのみ、格子点となります。以上のことから、\(x\) が偶数の場合と奇数の場合において、各 \(x\) の値における、2直線間にある格子点の個数の求め方が変化することがわかります。さらに \(n\) が偶数か奇数かによって、総和に変化が生じることも見えてくるでしょう。
格子点の問題としては標準的なレベルです。難しいと感じた受験生は、いま一度テキストで類問を解き直しておきましょう。
問3 問2の \(N(n)\) に対して、 \(N(n)<2022\) を満たす最大の整数 \(n\) を求めよ。
これも典型的な問題といえます。特に躓く要素もありませんので、問2が解けているのであれば、こちらも完答したいところです。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 完答
他教科を得点源にしたい受験生… 6割
【第3問】(難易度:難)
2次曲線の問題です。以下のとおりに条件が設定されています。
(文字定数の条件)
\(a>b>0, m>0, k>0\)
(曲線)
楕円 \(C\):\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}\ +\displaystyle\frac{y^2}{b^2}\ =1\)
直線 \(l\):\(y=-mx+k\)
(その他の条件)
点A:楕円 \(C\) と直線 \(l\) の第1象限における接点
点H:原点Oから直線 \(l\) に下ろした垂線の足
角 \(\theta\ \):直線OA, OHのなす角(ただし、\(0<\theta\ <\displaystyle\frac{\pi\ }{2}\ \))
問1 点Aの座標を \(m, a, b\) を用いて表せ。
接点Aの座標を \(x_{1}, y_{1}\) などと置いて、楕円の接線の方程式を立てましょう。この式が、直線 \(l\) と一致するという条件から、 \(x_{1}, y_{1}\) の値を求めます。接線の問題を解くうえでは基本的な考え方ではありますが、計算がやや複雑になりますので、何について解くのか、ゴールを見失わないようにしましょう。
問2 線分OHの長さ \(h\) を \(m, a, b\) を用いて表せ。
\(k\) の値は、問1の時点で \(m, a, b\) の式として表せているはずです。あとは直線 \(l\) と原点Oとの距離を求めるだけですから、公式を用いて計算しましょう。
問3 \(\sin{\theta\ }\ \) を \(m, a, b\) を用いて表せ。
線分OHの長さはすでにわかっています。線分OAの長さについても、座標から即座に求めることができます。以上より、△OHAについて、\(\cos{\theta\ }\ \) が求まります。あとは相互関係の公式を用いて\(\sin{\theta\ }\ \) の値を求めるとよいでしょう。
問4 \(a, b\) を固定し、正の実数 \(m\) を動かすとき、\(\sin{\theta\ }\ \) の最大値 \(M(a, b)\) を求めよ。
問3より、\(\sin{\theta\ }\ =\displaystyle\frac{m(a^2-b^2)}{\sqrt{(m^2+1)(m^2a^4+b^4)}\ }\ \) …①ですので、この式の最大値を求めます。
解法としては、ここから \(m\) の関数として微分し、増減表を書いて最大値となり得る点を探す、というものも考えられますが、\(f'(m)=0\) を求めるために \(m\) の4次方程式を解く必要が出てくるため、現実的な方法とは言えません。
式の値の最大値(最小値)を求める際によく使われる手法としては、他に相加平均≧相乗平均の利用があります。今回はそちらの方向で進めていきましょう。①の式から直接、不等式を作ることは難しいですから、分母分子を \(m\) で割り、分母の方に \(m\) を寄せます。あとは分母の最小値を求めることで、式①の最大値が分かります。
相加相乗平均を使える形にするために、逆数を取る、1つの文字で分母分子を割る、という式変形を行うことはよくあります。曖昧になっている受験生は、知識を整理し直しておきましょう。
問5 \(a, b\) を \(a>b>0\) かつ \((a-b)^2+(b-1)^2≦\displaystyle\frac{3}{4}\ \) を満たすように動かすとき、\(M(a, b)\) の最大値を求めよ。
条件式が、明らかに円の内部を表す形になっていますので、円を利用できるような形で解き進めていくようにします。
\(a-b=x, b-1=y\) とおき、\(x, y\) の式として考えていきましょう。
\(M(a, b)=\displaystyle\frac{a^2-b^2}{a^2+b^2}\ \) を \(x, y\) の式として表すと、\(\displaystyle\frac{a^2-b^2}{a^2+b^2}\ =1-\displaystyle\frac{2}{\displaystyle\frac{a^2}{b^2}\ +1}\)より、\(=1-\displaystyle\frac{2}{\frac{(y+1)^2}{(x+y+1)^2}+1}\ \) …① となります。
この式①が最大になるのは、\(\displaystyle\frac{2}{\frac{(y+1)^2}{(x+y+1)^2}+1}\ \) が最小のとき、すなわち \(\displaystyle\frac{(y+1)^2}{(x+y+1)^2}\ \) が最大となるときです。
さらに、\(\displaystyle\frac{(y+1)^2}{(x+y+1)^2}\ =\displaystyle\frac{1}{(\frac{x}{y+1}\ +1)^2}\ \) なので、最終的には \(\displaystyle\frac{x}{y+1}\ \) の最小値を求める問題に帰着します。
\(\displaystyle\frac{x}{y+1}\ =k\) とおくと、\(y=\displaystyle\frac{1}{k}\ x-1\) …② ですから、直線②が領域 \(x^2+y^2≦\displaystyle\frac{3}{4}\ , a>b>0\) に含まれるときの \(k\) が最小値になる条件を、グラフから考察することになります。条件 \(a>b>0\) は \(x, y\) の条件に書き換えておくことを忘れないようにしましょう。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 6割
他教科を得点源にしたい受験生… 4割
【第4問】(難易度:標準)
関数 \(f(x)=\sqrt{\displaystyle\frac{1-\sqrt{x}\ }{1+\sqrt{x}\ }\ }\ \) (ただし、\(0≦x≦1\))に対して、曲線 \(y=f(x)\) と \(x\) 軸、\(y\) 軸で囲まれた図形を \(y\) 軸まわりに1回転させてできる回転体の体積を \(V\) とする。
問1 曲線 \(y=f(x)\) の凹凸を調べて増減表を書き、グラフの概形をかけ。また、変曲点の座標を求めよ。
微分により導関数を求めると、極値を持たないことが分かります。問題文の指示通り、第2次導関数まで求めて変曲点を特定しましょう。計算が煩雑になるため、必要な情報だけを抜き出して考える(変曲点を求めるだけであれば分子の情報だけあればよい)、あるいは初めに両辺を2乗した状態からスタートし、陰関数の微分として処理するなど、工夫して計算していきましょう。
問2 \(V\) を求めよ。
\(y\) 軸まわりの回転体ですから、変数と積分区間に注意して計算を進めましょう。三角関数を用いた置換をはじめ、標準的な積分計算の知識が問われます。問1が解けていなくても、問2を解くことは可能です。諦めず最後まで問題に目を通し、解ける問題を解きましょう。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 7割
他教科を得点源にしたい受験生… 5割
【総評】
例年通り、全体を通して高い計算力と工夫の力が求められる試験でした。特に方程式や不等式の計算に関しては、様々な計算手法・工夫を押さえておかなければ、解答の方向性は見えていても、解き進めることができない、という状態に陥る可能性があります。
まとめ
というわけで、今回は日本医科大学医学部の数学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
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