医学部専門予備校 京都医塾 » 京都医塾公式ブログ » 医学部入試問題分析 » 2022年度昭和大学医学部の数学入試問題対策・分析

京都医塾公式ブログ

2022年度昭和大学医学部の数学入試問題対策・分析

2022年度昭和大学医学部の数学入試問題対策・分析

京都医塾数学科です。

このページでは「昭和大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“昭和大学医学部”の受験を考えている方
・“昭和大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方

におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2022年度(最新の問題より) 
形式:結果のみを答える。(途中式は答えない)

制限時間:出願時に国語か数学かを選んだうえで、英語と合わせて140分
配点: 100/400点(Ⅰ期)

出題の傾向と特徴

2018年度から途中式を答えることがなくなりましたので、以降の5年間についてまとめます。

【頻出の出題単元】

 微積分が例年出題されています。媒介変数で表される曲線で囲まれた図形を\(x\)軸の周りに回転させてできる立体の体積(2018年度、2019年度)や、漸化式との融合問題(2022年度)のように色々な出題パターンがあるので、典型問題はひと通り演習しておきたいところです。
 また、図形範囲も複素数平面(2022,2020、2019、2018の各年度)、ベクトル(2022,2020、2018の各年度)と頻出ですので、こちらも典型問題はひと通り押さえておきたいですね。
 他に、場合の数・確率や数列も頻繁に出題されます。

【制限時間に対する問題量】

 英語と合わせて140分ですので、単純に半分にすると70分。大問は4つなので、制限時間に対する問題量はやや多いです。また、計算が煩雑になることが多いですので、典型問題の計算がスムーズにできるよう訓練が必要になってきます。
 また、時間配分に気をつける必要があります。数学に時間をかけてしまったあまり、英語長文を読む時間が足りなくなったということがないようにしましょう。そのためにも、自分がどのレベルの計算にどれくらいの時間がかかるかについても普段から意識して訓練しておきましょう。

2022年度(最新の過去問)の分析

 ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【第1問 複素数平面】(難易度:やや易)

 穴埋め形式の問題ですので「~の円である」という言葉から、複素数平面上の円の方程式の形になるように式変形をしていくと(1)~(3)を求めることができます。
 \(\beta=\)\(\displaystyle \frac{z^6}{\alpha}\)を見たときに、複素数の累乗だからド・モアブルの定理を使えないかなと考えられれば後は式変形をしていけば見えてきます。「\(\beta\)が描く図形」とあるので、円か直線になるのではという推測ができれば式変形もスムーズにいきます。
 最後の(5)は複素数平面というより、図形と方程式と考えた方が計算が楽になります。この、複素数平面上の図形をベクトルや図形と方程式の知識で解くという考え方は、複素数平面の問題では割とポピュラーな考えです。使い分けられるように図形の知識に慣れておきましょう。

 ≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(3)まではなんとか解きたい

【第2問 平面ベクトル】(難易度:やや易)

(1) 内積の値を求める問題。\(|\overrightarrow{\textrm{AB}}|=|\overrightarrow{\textrm{OB}} -\overrightarrow{\textrm{OA}}| \)の両辺を2乗することで簡単に求めることができます。

(2) 点Hがどのような点であるかを考えて立式するだけです。点Hは垂心ですので、各頂点から対辺におろした垂線の交点ですから「直線OH⊥直線AB」かつ「直線AH⊥直線OB」になります。\(\overrightarrow{\textrm{OH}}\)を基準のベクトルである\(\overrightarrow{\textrm{OA}}\)と\(\overrightarrow{\textrm{OB}}\)で表して、その後「OH⊥AB」より \(\overrightarrow{\textrm{OH}} \cdot \overrightarrow{\textrm{AB}} =0\)で一つ、「AH⊥OB」より \(\overrightarrow{\textrm{AH}} \cdot \overrightarrow{\textrm{OB}} =0\)でもう一つ立式すれば\(\overrightarrow{\textrm{OH}}\)を求めることができます。

(3) (2)と同様に点Dを考えると、2直線OH、ABの交点ですから、 \(\overrightarrow{\textrm{OD}} \ =\)\(k\overrightarrow{\textrm{OH}}\)で\(\overrightarrow{\textrm{OD}}\)を表し、点Dが直線AB上にあることから、それぞれの基準のベクトルの係数の和が1になることを利用しましょう。

(5) ベクトルでの外心の求め方はいくつかありますが、(4)を誘導と見て、\(\overrightarrow{\textrm{OG}}\)を基準のベクトルである\(\overrightarrow{\textrm{OA}}\)と\(\overrightarrow{\textrm{OB}}\)で表して、\(|\overrightarrow{\textrm{OG}}|=|\overrightarrow{\textrm{AG}} |=|\overrightarrow{\textrm{BG}}| \)を利用して、辺々2乗して立式すれば求めることができます。

 ≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答

【第3問 小問集合】(難易度:やや難)

(1-1) 動点の問題ですので、ひとまず適当な値で点を止めて図を描いて考えましょう。そのとき、文字を用いて動点の座標を表すのがポイントです。問題文で動点Pの座標が\((0,t)\)とおかれていますので、もう一つの動点Qの座標も\(t\)を用いて表しましょう。単位円上の点ですので三角関数を用いて(\(\cos\displaystyle \frac{\pi}{2}t\),\(\sin\displaystyle \frac{\pi}{2}t\))と表します。後は、直線PQの方程式を求めて、直線\(x=-1\)との交点を求めればRの座標も求めることができます。

(1-2) 極限の問題ですので、まずは原則通り1を代入すると\(\displaystyle\frac{1-1}{0}+1\)となるため、分数部分が不定形になってしまいます。不定形の処理をしていくのですが、三角関数の不定形の処理ですので、\(\displaystyle\frac{\sin \theta}{\theta}\)の形を目指して式変形を試みます。その際、\(\theta→0\)となるように変数を置換しましょう。その後、式変形をすれば分母に\(\sin\theta\)が現れますので、定番の形に持ち込めます。

(2-1) \(n=1\)なので、代入して計算するだけです。この手の問題に慣れていれば、半円の話に持ち込めますし、思いつかなくても\(x=\sin\theta\)と置換すれば求めることができます。

(2-2) この形(積分と漸化式の融合、しかも三角関数)を見て、部分積分と気づければ後は計算するだけなのですが、それなりに経験がないと手が動かないと思います。その場合は思い切ってとばしてしまいましょう。

(2-3) (2-2)ができていればその結果を使います。使わなくても出来ますが、途中の計算量が膨れるので、時間制限を考えるとお勧めできません。

 ≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(2-1)まで
他教科を得点源にしたい受験生…(1-1)(2-1)を手堅くとって、他の問題に時間をかけましょう

【第4問 場合の数】(難易度:標準)

 一般的に、確率ではなく「場合の数」を問うている問題は、文章読解が難しいか、数え上げが面倒であるかのどちらかであることが多いです。ですので、手が止まった時点でいったん立ち止まり、残り時間と他の大問を確認するようにしましょう。今回は(2-3)までは素早く解きたいです。

(2-4) 「少なくとも~」という言葉を見たら補集合を考えるのが定番ですが、ひとまず、パターンを書き出して補集合の方が楽になるのかを確認するようにしておきましょう。ときどき、補集合の方が面倒である場合があります。
 今回は補集合「『ST』、『TS』という並びを含まない」を考えます。2つのSと2つのTが全てバラバラというパターンはイメージしやすいですが、『SS』や『TT』の塊ができるパターンに気づけるかで正答できるかどうか決まってきます。後は、「〇〇が隣り合わない」→「その他を並べて、隙間に〇〇を入れていく」を繰り返していくだけです。
 ミスがないように丁寧に数えるとそれなりに時間がかかりますので、繰り返しになりますが時間配分には気を付けてください。

【総評】

 前半の複素数平面や平面ベクトルは典型的なパターンですので、テンポよく解いていきたいです。この辺りの解法や途中の計算で手が止まることがないように普段の学習時から訓練しておきたいですね。
 第3問(小問集合2問)は見た目に反して、(1)の方が基本的な知識の組合せになります。数学を武器にしたい受験生の方は、こうした融合問題で誘導に乗って手が動くようになるまで基礎を反復しましょう。
 「合わせて○○分」の試験では、常に時間を気にしながら解かないと、緊張して視野が狭くなると、気づいたら時間が過ぎていたということがありえます。それを防ぐために、2周するつもりでまずは1周解いていくと良いと思います。その場合は1周目は30秒で解法が思いつかなければ、保留して次の問題に取り組むようにしましょう。

まとめ

というわけで、今回は昭和大学医学部の数学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!

京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください。

投稿者:山本 靖

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    17年
  • 出身大学
    京都大学法学部
  • 特技・資格
    なし
  • 趣味
    読書、散策
  • 出身地
    山口県
  • お勧めの本
    「銃・病原菌・鉄」 中野好夫さんのエッセイ

受験生への一言
受験全体でもそうですし、数学の問題を解くときもそうですが、冷静に状況を判断することと、いざやると決めたら目標に向かって突っ走る気持ちとのバランスや切り替えが大切です。