京都医塾化学科です。
このページでは「東北医科薬科大学医学部の化学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“東北医科薬科大学医学部”の受験を考えている方
・“東北医科薬科大学医学部の化学がどのような問題か知りたい”という方
にオススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2022年度
形式: マーク式
制限時間:理科2科目で120分
配点:100点
出題の傾向と特徴
理論化学と有機化学のウェイトが高く、無機化学からの出題は少なめです。特に理論化学の内容については万遍なく扱い、関連する計算問題を非常に多く出題しています。また、「分野の内容を掘り下げた深い内容の出題」「工業的内容との関連」が特徴で、この傾向は理論化学、無機化学、有機化学と分野を問わず見られます。(2022年度は出題されず。)
【毎年恒例の出題単元】
毎年必ず出題されているという単元は無く、偏りなく万遍なく出題する事で、数年かけて全範囲を網羅(一周)するといった印象です。
【頻出の出題単元】
『化学基礎』から物質の構成、化学反応式と量、酸・塩基の中和滴定、酸化還元滴定、『化学』から気体・溶液、反応速度、化学平衡の単元が頻出です。
【制限時間に対する問題量】
必ず通覧を行って問題の質を見抜き、解けるものから確実に解いていきましょう。例えば、2022年度の総問題数(マーク数)は24題ですが、その内12題(50%)が計算問題です。解答形式はマーク式で、選択肢の数値(①~➉)から選ぶ十択方式が基本(稀に八、九択有り)ですから、記述式の問題のつもりできちんと計算しなければなりません。ただし、選択肢を上手く利用する事で正答に至る時間は短縮できますから、マーク式の問題を解く技術を磨く事で十分対処できます。
2022年度(最新の過去問)の分析
さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問】
理論化学より、メタン・プロパン混合気体の完全燃焼による組成分析です。基本、化学反応式と量のモル計算(メタンの物質量をxmol、プロパンの物質量をymolとでもおいて、完全燃焼式より、生成した水、二酸化炭素の物質量をx、yで表して連立させて解く)なのですが、無機化学の知識、逆滴定、沈殿生成と、複数の話題を絡めて総合的な思考力を見ており、良問と言えるでしょう。マーク数6の内、問1は化学反応式が正しく書ければ終わりなのですが、一応質量比を求めているので計算問題に含める事にすると、無機化学の知識問題の問3を除いて5題が計算問題です。逆滴定で二酸化炭素の物質量を求める下りは、滴定公式を用いて、元の200mL水溶液について、(水素イオンの総和)=(水酸化イオンの総和)で立式(もちろん滴定量は補正)すると速いのですが、沈殿の生成量は実験に用いた20.0mLで計算しなければならないので、桁数のミスを犯さないように注意する必要があります。
【第2問】
理論化学より、電気分解、溶解度積の問題です。前半の電気分解の問題は、空所補充で電気分解の基本を確認、電気分解を利用した化学物質(NaOH、Cu、Al)の製造(無機化学の知識)、二つの電解槽を並列につないでの電気分解(AgNO3水溶液、希硫酸の電気分解)の計算で締めです。水の電気分解が塩基性条件、酸性条件で二度登場しており、気付けば簡単に解けるのですが。後半は基礎知識を正誤問題で確認した後、CuSのみを沈殿させる[S2-]の範囲を溶解度積から計算させる定番の問題で締めです。全体的に基本問題の感が強いです。計算問題もマーク数6の内3題とやや少な目です。
【第3問】
無機化学より、カルシウム、リンの化合物と反応です。空所補充から始まり、正誤問題を経て、最後は理論化学の酸化還元滴定の計算で締めと、他の設問とスタイルは一緒なのですが、知識内容を問う設題が多く、計算問題(理論化学)はマーク数6中、2題(酸化数、および酸化数の総和を答える問題は普通計算しないのですが、誤解して計算する人もいるかも知れないという事で計算問題に含めました)とかなり少ないです。最後の計算もCa2+を一度CaC2O4として沈殿させ分離した上で、再び弱酸遊離によって生成したH2C2O4をKMnO4で滴定しているので、問題の意味が正しく取れれば、お馴染みの「シュウ酸を過マンガン酸カリウムで滴定」しているだけの問題です。(Ca2+⇒CaC2O4⇒H2C2O4と化学反応式の係数が全て1なので、Ca2+(mol)=H2C2O4(mol)となります。)完答しておきたい設問です。
【第4問】
有機高分子化学より、合成繊維の単量体と結合様式、特にポリビニル系の合成繊維ビニロンについて問題文中で合成過程を詳しく解説し、空所補充から正誤問題を経て計算問題で締めと、最後まで定型のスタイルを崩しません。マーク数5の内、最後の2題が計算問題(ナイロン66の生成量、ビニロンのアセタール化の度合いの計算)なので、単なる知識問題と思って臨むとストレスを感じる人もいるかもしれません。ただし、内容的には至極簡単で、過去に合成繊維の問題を解いている人ならば十分完答、満点が期待できます。
【総評】
計算問題が非常に多いです。昨年度(2021年度)以前の3年間(2019~2021年)は総問題数(マーク数)が25題で固定されていましたが、10題~13題(40%~52%)が計算問題でした。また難易度的には、以前は一見難解に思える設題が毎年1題~数題出ていたのですが、2022年度は該当する問題は無く、難易度のバランス調整のために出題していた基本・標準的な、入試では定番の問題ばかりになって解きやすくなったとの印象です。易化したと思われますので、その分高得点勝負は避けられないでしょう。ただし、次年度以降もこの傾向が続くとは限らないので、従来通り、ペース配分に気をつけて、解ける問題を解き切る方針で良いと思われます。
尚、無機化学、有機化学ともに知識事項としてはかなり深い内容が出題される事もあるので、化学基礎・化学の2冊の教科書については隅々まで目を通すとともに、できれば、図説、参考書で知識に厚みを持たせて受験に臨めると更に良いでしょう。
≪2022年度の目標値≫
化学を得点源にしたい受験生… 9~10割
他教科を得点源にしたい受験生…7~8割
まとめ
というわけで、今回は東北医科薬科大学医学部の化学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
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