京都医塾数学科です。
このページでは「東海大学医学部医学科の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“東海大学医学部”の受験を考えている方
・“東海大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2022年度(最新の問題より)
形式: 空所補充式
制限時間:70分
配点:100点(筆記試験の総得点は300点)
出題の傾向と特徴(6年分)
毎年恒例・頻出の出題単元
*2023年度からは「数学Ⅲ」が削除され、出題範囲が「数学ⅠⅡAB(数列・ベクトル)」のみになる予定であることに注意しましょう。
例年、第1問は小問集合、第2問と第3問は小問による誘導付きの大問という構成です。
2022年度までは、微積分、場合の数と確率、極限、複素数平面、ベクトルなどが頻出でしたが、2023年度は、微積分が「数学Ⅱ」までとなり、極限、複素数平面や2次曲線が出題範囲外となります。
制限時間に対する問題量
70分で大問3題なので大問1つあたり20分以上かけられる計算ですが、空所補充形式ということで割り切って、テキパキとこなさないと時間的な余裕はありません。とは言え極端に難しい問題は少なく、比較的容易な第1問を手早く終わらせ、第2問と第3問に時間をかけることが出来れば、対応可能でしょう。
2022年度(最新の過去問)の分析
ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問 小問集合】(易~やや易)
例年通り、第1問は小問集合です。「答えの数値さえ合わせられればよい」と割り切り、テンポよく解答していきましょう。
(1)複素数の計算問題。\(2\)重根号を含む煩雑な虚数の\(8\)乗を求める問題ですが、まずは\(2\)乗してみましょう。するとあっさり極形式で表現できますから、あとはド・モアブルの定理を利用します。
(2)三角関数を含む関数が最小値を取る条件を求める問題。\(\sin{(π-θ)}=\sin{θ}、\sin{(θ+\displaystyle\frac{π}{2})}=\cos{θ}\)などの公式と三角関数の合成を利用して関数を一本化します。むろん、変数の取りうる値の範囲にも注意します。
(3)対数を含む方程式。真数条件の確認を忘れないようにしてください。「もとの式に代入して検算」もしておきましょう。
(4)条件を満たす三角形の個数を求める問題。\(3\)辺の長さがすべて整数ですから、長さの和が\(4\)となる2辺の長さの組み合わせは\(\{1,3\},\{2,2\}\)とすぐにわかります。残る1辺の長さは三角形の成立条件から限定されます。第1問の中では方針に迷いやすいかもしれません。
(5)図形の面積を定積分によって求める問題。\(y=\displaystyle\frac{1}{x^2+9}\)くらいは微分せずともサッと概形が描けるようにしておきましょう。定積分の計算については、「\(x^2+a^2を見たらx=a\tan{θ}とおく\)」で解決します。このとき、特別な事情がない限りは、\(θ\)の範囲は\(-\displaystyle\frac{π}{2}<θ<\frac{π}{2}\)の中で考えるようにしましょう。
(6)数列の和を求める問題。公式\(\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k=\frac{1}{2}n(n+1)\)を利用してもいいですが、等差数列の和の公式を使う方が速いでしょう。
いずれの小問も基本的で、全問正解を狙いたいところです。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答
【第2問 微積分、関数】(標準)
微積分に加え、逆関数についても問われています。
(1)与えられた関数\(f(x)=\displaystyle\frac{ax+b}{x+c}\)を微分するだけの問題。是非とも合わせましょう。
(2)関数\(f(x)\)とその逆関数が一致する条件を求める問題。逆関数を求める手順は大丈夫でしょうか。\(y=f(x)\)とおき、\(x=(yの式)\)と変形した後、\(xとy\)を入れ替えた式の右辺が\(f(x)\)の逆関数\(f^{-1}(x)\)である、という手順がわかりやすいでしょう。記述式であれば、どこで\(xとy\)を入れ替えたのか明記したり、\(0\)で割ってしまっていないことを確認したりと(\(ac-b≠0\)はそのための条件)、いくつか注意するべきことがありますが、空所補充式ですからそこまで神経質になる必要はありません。
さて、(3)の直前に、「以下は、\(b,c\)を用いずに答えること」という注意書きがあります。定数として与えられた文字は\(a,b,cの3つ\)ですから、(3)以降の解答に使える文字は\(a\)のみとなります。
(3)\(2曲線C:y=f(x)とC’:y=f'(x)\)が共有点をもち、しかもその共有点での接線が一致する(すなわち\(2曲線C,C’が接する\))条件を求める問題。見やすさのため、\(f'(x)=g(x)\)とします。このとき、求める条件は、接点の\(x\)座標を\(t\)とおくと、\(f(t)=g(t)かつf'(t)=g'(t)\)となります。あとはこれらの式の分母を払って整理し、\(b,t\)について解くことになります。
(4)(ⅰ)(2),(3)で求めた条件を前提とし、\(C\)と\(C’\)の共有点における接線(共通接線とは意味が異なるので注意)を\(l\)として、\(l\)の\(x切片とy切片\)、\(l\)と\(x軸、y軸\)によって囲まれた三角形の面積(\(S\)とします)を求めます。(3)までが出来ていれば難しくないはずですが、\(a>0,S>0\)であることには注意しておきましょう。また、\(l\)の方程式を求める際、(3)で考えた条件から\(f(t)=f'(t)=f”(t)\)であることに気が付くと少し時短できます。
(4)(ⅱ)\(l\)の\(x切片とy切片\)がいずれも負であるときの\(S\)の最大値を求めます。\(a\)の値の範囲を求めたうえで、微分して増減を調べれば解決します。
受験生が苦手としやすい逆関数に関する(2)がカギを握るでしょう。とは言え標準的な問題です。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(3)まで
【第3問 図形と方程式】(やや難)
問題文の解釈が難しいですが、二等辺三角形の内接円と傍接円に関する問題です。
(1)円\(O_1\)は三角形\(\textrm{ABC}\)の内接円です。今回の場合、三角形\(\textrm{ABC}\)の面積及び\(3\)辺の長さがすぐにわかるので、\(O_1\)の半径はそれらを利用して求めるのが一番速いでしょう。これは易しい。
(2)円\(O_2\)は三角形\(\textrm{ABC}\)の傍接円のうち、中心(\(\textrm{P}_2\)とします)が第\(1\)象限にあるものです。図形の対称性から、その中心の\(x\)座標が\(a\)であることに気づければ速いでしょう。あとは中心\(\textrm{P}_2\)の座標を\((a,y_2)\)などとおいて、\(\textrm{P}_2\)と直線\(\textrm{AC}\)の距離が\(O_2\)の半径\(a\)に一致することを式で表現し、\(y_2\)について解きます。
(3)円\(O_3\)は三角形\(\rm{ABC}\)の内接円及び\(3\)つの傍接円すべてに接する円です。対称性から、\(O_3\)の中心(\(\textrm{P}_3\)とします)が\(x\)軸上の\(x>0\)の部分にあり、\(O_3\)が\(O_2\)、\(y\)軸と接する条件を考えれば必要かつ十分です。よって、\(O_3\)の半径を\(r_3\)とおくと、\(\textrm{P}_3\)の座標は\((r_3,0)\)であり、\(\textrm{P}_2\textrm{P}_3=r_3+a\)となります。あとは両辺を二乗して、\(r_3\)について解きます。
(4)は(3)までが出来ていれば難しくはありません。\(r_3\)を\(a\)について微分して増減を調べてもいいですが、積が定数になる正の数同士の和の形ですから、(相加平均)≧(相乗平均)を利用する方が速いでしょう。等号成立条件を即答できない人が意外に多いですから、念のため確認しておきましょう。
(5)\(O_2\)と\(O_3\)の接点が線分\(\textrm{P}_2\textrm{P}_3\)を\(a:r_3\)の比に内分する点であることを利用すれば、その\(y\)座標(\(Y\)とします)を求めるのは速いでしょう。\(Y\)が最小値を取るときの\(a\)の値およびその最小値は、\(Y\)を\(a\)について微分して増減を調べるのが常識的な解法でしょう。その際、\(\sqrt{a^2+1}=(a^2+1)^{\frac{1}{2}}\)と、\(n\)乗根を\(\displaystyle\frac{1}{n}\)乗の形に書き直して計算するとわかりやすいでしょう。むろん、記述式ではないので、丁寧に増減表を書く必要はありません。
(6)直線\(\rm{BC}\)と\(O_3\)の交点の\(x\)座標を求める問題。2つの図形の方程式を連立して解くだけです。ここで出てくる\(2\)つの\(x\)座標は、\(a\)の値によっては一致することがあり、その場合の交点(接点)は\(1\)つしかありませんが、空所補充式なのでそこまで考える必要はありません。
全体として、難しいことはやっていませんが、入試本番の限られた時間の中で、正しい道筋をたどって最後まで解ききるのは、そこまで容易なことではありません。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(4)まで
【総評】
第1問の小問集合はいずれも基本的な内容で、他の問題にかける時間を確保するためにも、迅速かつ正確に、全問正解を狙いたいところです。第2問は標準的で、(2)さえ乗り切れればなんとかなるでしょう。第3問もやっていることは難しくありませんが、自分で方針を見定めて解く必要があり、分量も多めで、数学入試問題に対する慣れが必要でしょう。
まとめ
東海大学では近年、難問奇問の類はほとんど出題されていません。市販の網羅型参考書で基本問題・典型問題に習熟するとともに、旧センター試験の過去問などを利用して、時間を意識した演習を積みましょう。空所補充形式ではありますが、「裏技」めいたものに走らず、「解けて当たり前の問題を当たり前に解けるようになる」ことを目指しましょう。
また、2023年度は「数学Ⅲ」が範囲外になる予定であることにも注意が必要です。
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