京都医塾数学科です。
このページでは「神戸大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“神戸大学医学部”の受験を考えている方
・“神戸大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2022年度(最新の問題より)
形式: 記述式
制限時間:120分
配点:150点(筆記試験の総得点は810点(共通テスト360点+2次試験450点))
出題の傾向と特徴(5年分)
毎年恒例の出題単元
過去5回で、「微分・積分」、「数列」の問題は毎回出題されています。
「微分・積分」は、問題文を正しく解釈できれば、立式はさほど難しくはなく、そのあとの計算も標準的です。論理的に正しいのはもちろんのこと、きっちり答えを合わせられるかが明暗を分けます。
「数列」は、「図形と計量」や「整数の性質」といった他の単元との融合もあり、見慣れない形の漸化式が出てくることもあります。
また、証明問題も毎年出題されています。求値問題を含めて、神戸大学の数学の問題には丁寧な誘導がついていることが多く、解答の方針に迷うことは少ないかもしれませんが、日ごろから定理や公式の証明・導出に興味・関心を持って学習に取り組んでいるかによって、差がつくことでしょう。
頻出の出題単元
上記の単元に加えて、「ベクトル」、「場合の数と確率」、「極限」からの出題も多くみられます。他にも「複素数平面」や「2次曲線」など、現役生が手薄になりがちな単元からの出題もあり、特定の単元にヤマを張った勉強をするわけにはいきません。
また、図示を要求する問題もよく出題されています。手際よく見やすい図やグラフを描く練習をしておきましょう。
制限時間に対する問題量
例年、思考力や計算力、表現力をバランスよく測る、標準的な良問が5題出題されています。積分計算の小問集合が出題されたこともありますが、おおむねどの問題も誘導的な小問に分かれています。120分で5題ということは1題あたり24分の解答時間となりますが、見直しまで含めるとそこまで余裕のある設定ではありません。とはいえ、本学の医学部医学科志望者であれば、例外的に難しい年度を除いては、満点を目指したいところです。
2022年度(最新の過去問)の分析
ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問 数列とその極限】(やや易)
この問題で与えられた漸化式は、\(a_{n+2}={a_{n+1}}^{p}{a_n}^q\)という形をしています(この問題においては\(p=q=\displaystyle\frac{1}{2}\))。この漸化式と\(a_1>0,a_2>0\)とから、「任意の自然数\(n\)に対して\(a_n>0\)」…(☆)と分かりますから、漸化式の両辺の自然対数を取って、\(b_n=\log{a_n}\)とおけば、数列\(\{b_n\}\)の隣接3項間漸化式が現れます。この際、対数の底はなんでも構わないのですが、問題の誘導に合わせて、ここではネイピア数\(e\)を底とする自然対数を取っています。ここまでくれば、あとは説明不要でしょう。ただし、(☆)の確認を忘れてはいけませんから、そこは注意が必要です。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答
【第2問 図形と計量、数列とその極限】(標準)
図形と数列の極限の融合問題です。円\(C_n\)に内接する正\(m\)角形\(P_n\)を作り、さらに\(P_n\)に内接する円\(C_{n+1}\)を作る、といったことを繰り返していきます。図を正確に描いて落ち着いて考えれば、(1)、(2)までは図形問題としても数列の極限問題としても、内容的には難しくありません。ただし、\(m\)や\(\theta=\displaystyle\frac{2\pi}{m}\)は定数であること、最終的には\(\theta\)と\(n\)で答えないといけないことを忘れて計算に没頭してしまうと、途中で迷子になる可能性はあります。また、(2)は無限等比級数の収束条件を満たしていることの確認も忘れないようにしましょう。最後の(3)は、与えられた極限の式を使える形に工夫して変形します。
数学が苦手な人にとってはやや難しく感じるかもしれませんが、ここで大きく失点するわけにはいかず、踏ん張りどころでしょう。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答
【第3問 微分・積分】(標準)
関数の極値と図形の面積をストレートに問われています。方針で迷うことはないでしょう。
(1)は極値を問われていますから、与えられた関数\(f(x)=\log{(1+x^2})-ax^2\)を微分すると、\(f'(x)=\displaystyle\frac{2x(1-a-ax^2)}{1+x^2}\)となります。\(f'(x)\)の分母\(1+x^2\)は常に正です。\(f'(x)\)の分子を\(g(x)=2x(1-a-ax^2)\)とおくと、\(g(x)\)は3次関数で、\(0<a<1\)より最高次の係数は負で、3次方程式\(g(x)=0\)は相異なる3つの実数解を持つことから、\(f(x)\)の増減表を書くことができます。このように、単なる計算問題とは言え、それなりに気を付けるべきことはあります。
(2)は与えられた条件から\(a=\log{2}\)と決定し、(1)で書いた増減表と\(f(x)\)が偶関数であることに注意すると、グラフの概形がわかり、立式することができます。あとは標準的な積分計算です。これも医学部医学科志望者であれば合わせにいきたいところです。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答
【第4問 2次曲線、図形と方程式】(やや難)
双曲線\(\displaystyle\frac{x^2}{4}-\frac{y^2}{4}=1…➀\)と直線\(y=\sqrt{a}x+\sqrt{a}…②(a>0)\)の2交点\(\mathrm{P,Q}\)を結ぶ線分\(\mathrm{PQ}\)の中点\(\mathrm{R}(s,t)\)の軌跡を求める問題です。式だけで処理できる問題であり、双曲線のグラフの概形などの知識は不要で、実質的には図形と方程式(軌跡)の問題です。
(1)は、そもそも➀と➁が2交点を持つための条件を求める問題で、以降の小問にも影響してきます。➀と➁を連立して導かれる\(x\)についての方程式\((1-a)x^2-2ax-(4+a)=0…③\)が、相異なる2つの実数解を持つ条件を求めます。無論、\(x^2\)の係数\(1-a\)が\(0\)でないことが必要です。
(2)は、\(s,t\)の値を\(a\)を用いて表しますが、\(\mathrm{P,Q}\)の\(x\)座標をそれぞれ\(p,q\)としたとき、\(p,q\)が方程式③の2解になっていることから、解と係数の関係を用いて解決します。③の2解\(p,q\)を直接求めてもいいですが、筋が悪い印象を採点者に与えることは避けられないでしょう。
(3)は、\(s\)の取りうる値の範囲を求めます。(2)の結果から、横軸の変数を\(a\)、縦軸の変数を\(s\)としたグラフが描けますから、あとは(1)の結果に注意して\(s\)の範囲を求めます。式だけで処理するよりわかりやすいでしょう。
(4)は、いよいよ\(t\)を\(s\)で表現します(\(s,t\)を\(x,y\)に置き換えれば、\(\mathrm{R}\)の軌跡の方程式になります)。媒介変数となっている\(a\)を消去しますが、\(s\)の値によって\(t\)の符号が異なることに注意が必要です。
少し完答しづらい問題かもしれません。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(3)まで
【第5問 等式の証明、指数・対数関数、整数の性質】(標準)
(1)、(2)は互いに独立した小問でありながら、(3)の誘導にもなっています。
(1)は、条件式\(a^x+b^y=(ab)^z\)の両辺の対数を取ります。第1問と同じく、底はなんでも構いません。あとは、示したい式\(\displaystyle\frac{1}{x}+\frac{1}{y}=\frac{1}{z}\)の左辺から\(x,y\)を消去すると右辺と一致することを示します。よくあるタイプの問題ですが、等式の証明ですから、答案の書き方には注意を要します。
(2)は、\(p\)を素数としたとき、\(\displaystyle\frac{1}{m}+\frac{1}{n}=\frac{1}{p}\)を満たす自然数\(m,n\)(\(m>n\))を求める問題です。「素数である」というのは非常に強い条件で、具体的に数値を与えられた定数に準じた扱いができます。ですから、もしわかりにくければ、\(p=5\)などの場合にどうなるかを考えてみましょう。
(3)では、(1)、(2)の結果を利用します。ただし、(2)を利用するにあたって\(m>n\)を示す必要があり、これを怠ると減点は免れないでしょう。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答
【総評】
例年通り、真っ当な学習を続けてきたかどうかが試される、神戸大学らしい良問のセットでした。完全記述式のため、満点を取るのは容易なことではありませんが、丁寧な誘導付きで難問はなく、高得点での戦いになったことでしょう。時間的にも、無理のない分量です。
まとめ
神戸大学の数学入試問題は、あらゆる単元からバランスよく出題され、証明や図示を要求する問題も多々見られます。他の理系学部との共通問題であることもあって、手も足も出ない難問は少ないですが、限られた時間の中で、論理的に正しく記述し、最後まで計算を合わせるには、相応の訓練が必要です。信頼のおける指導者から添削指導を受け、ブラッシュアップしていきましょう。また、定理や公式の証明も、教科書等でこまめにチェックしておきましょう。地道な努力が、高得点に直結します。
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