京都医塾化学科です。
このページでは「近畿大学医学部の化学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“近畿大学医学部”の受験を考えている方
・“近畿大学医学部の化学がどのような問題か知りたい”という方
にオススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2022年度
形式:記述式
制限時間:理科2科目で120分
配点:100点
出題の傾向と特徴
【毎年恒例の出題形式】
理論化学において、計算過程を求められることが多いので、その対策として途中過程を丁寧に書く練習は必須となります。また、その計算も煩雑なものが多いので、計算を工夫して行う意識は普段の演習の時からもっておきましょう。
【制限時間に対する問題量】
上述のとおり、繁雑な計算が多いので、計算問題に時間を掛け過ぎるとあっという間に制限時間を超えてしまいます。基本的な知識を問う問題も出題されるので、それらを手早く解答し、計算に時間を割けるように時間配分に工夫をする必要があります。
2022年度(最新の過去問)の分析
さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問】(気体の発生と性質、赤血球と結合する酸素)
問(1)(a):気体の単離の歴史に関する問題でした。一見するとどの気体なのか分かりにくいですが、一つの気体について多くのヒントが散りばめられているので、それらを総合して解答したい問題でした。
問(1)(b):水素の発生に関する反応式を答える問題でした。基本問題です。
問(1)(c):無機化学で登場する気体に関する化学反応式を答える問題でした。どれも基本的な反応なので、確実に押さえておきましょう。
問(1)(d):次亜塩素酸から酸素が発生する反応を答える問題でした。見慣れない反応ですが本文中に発生する物質が書かれているので、そこが読み取れれば書ける問題でした。
問(1)(e):ラボアジェの名前を答える問題でした。化学の基本法則を提唱した科学者の名前は頻出なので、しっかりと押さえておきましょう。
問(2)(a):ヘモグロビンに関する空欄補充の問題でした。ヘモグロビンに鉄イオンが含まれることと合わせて押さえておきましょう。
問(2)(b):溶解している酸素のモル濃度を求める問題でした。気圧が与えられていますが、溶解している質量が与えられているので、そこから計算できます。
問(2)(c):赤血球中のヘモグロビンの個数を求める問題でした。問題文に必要な情報がすべて書かれているので、それを使って基本的なモル計算で求められます。
問(2)(d):(c)で求めた値を使って結合する酸素のモル濃度を求める問題でした。これも基本的なモル計算で求められます。
問(2)(e):体内の酸素の体積を求める問題でした。ここまでの問題が解けていれば、それらの値を使って基本的なモル計算で求められます。
【第2問】(鉛の単体と化合物)
(1):鉛の単体が希塩酸、希硫酸に溶けにくい理由を答える問題でした。水に不溶な塩が膜になることは頻出事項なので、しっかりと押さえておきましょう。
(2)、(3):鉛が両性元素であることに関する問題でした。水酸化物沈殿から錯イオンを作って溶け直す流れをしっかりと押さえておきましょう。
(4)、(5)、(6):溶液の調製に関する計算問題でした。溶質のmolに着目した立式がスムーズにできるように練習しておきましょう。
(7)~(17):鉛蓄電池に関する問題でした。各極板の反応式から計算問題までいずれも頻出なので、基本の定着と計算問題の練習をしっかりとしておきましょう。
【第3問】(エステルの構造決定、合成高分子)
問(1)(a):ベンズアルデヒドが酸化されて安息香酸が生成するので、その構造式を答える問題でした。基本問題です。
問(1)(b):エステルの加水分解の反応機構を答える問題でした。水分子中の酸素原子はカルボン酸に含まれることは押さえておきましょう。
問(1)(c):生成する安息香酸エステルの質量を答える問題でした。問題文中にありますが、ブタノールの酸素原子が質量数18になっており、それにより分子量が変わっているので注意。
問(1)(d):エステルの合成反応は可逆反応なので、平衡が生成よりに動く方法を考える問題でした。反応物の量が変えられないので、生成物に出てくる水の量を減らすことを考えましょう。
問(1)(e):カルボン酸が炭酸水素ナトリウムと反応し、水層に溶け込むことは基本事項ですが、エステル合成の際にアルコールの分子間脱水も起こるところまで気を付けて答えられた人は少なかったのではないでしょうか。
問(2)(a):熱硬化性樹脂を選ぶ問題でした。シリコーン樹脂はやや細かい知識ですが、近年医学部入試ではよく見かけるようになったので知っておきましょう。
問(2)(b):ノボラックに硬化剤が必要なことを答える問題でした。こちらもやや細かい知識ですが、(a)と同様、医学部入試ではよく問われています。
問(2)(c):ポリ乳酸の構造式を答える問題でした。基本問題です。
問(2)(d):ジラクチドの光学異性体に関する問題でした。メソ体ができることに注意しましょう。
問(2)(e):ポリ乳酸の分子量を答える問題でした。光学異性体の数から重合度がわかるので、そこまでたどり着ければ平易な問題でした。
【総評】
第1問、第2問は必要とされる知識は基本的な事柄がほとんどですが、計算に煩雑なものが多いため、手早く立式・計算できないと制限時間が足りなくなります。また、第3問の有機化合物分野ではやや細かい知識が要求されており、こちらについては教科書だけでは太刀打ちが難しいものもありました。近年の傾向通り、計算力・知識ともに高水準のものが要求されているので、受験に向けてしっかりと準備する必要がありました。
≪2022年度の目標値≫
化学を得点源にしたい受験生…6~7割
他教科を得点源にしたい受験生…5~6割
まとめ
というわけで、今回は近畿大学の化学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください