京都医塾数学科です。
このページでは「近畿大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“近畿大学医学部”の受験を考えている方
・“近畿大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方
オススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2022年度
形式:穴埋め+記述式
制限時間:60分
配点:100点(筆記試験全体の配点は4科目400点)
近畿大学医学部の数学は2016年度以降「60分・全3問:大問1(穴埋め)、大問2(答えのみ記述)、大問3(論述)」という形式が続いています。
出題の傾向と特徴
【出題単元の特徴】
近畿大学医学部は、医学部としては珍しく「数学Ⅲの単元からの出題がない」大学です。そのため、試験範囲は数学ⅠAⅡBのみとなりますが、これらの単元からは幅広く出題されており、難易度も教科書レベルから入試標準、難関レベルまで、様々です。最低限、標準レベルの問題を解き切ることのできる力は求められますので、数学Ⅲの知識は問われないとはいえ、決して簡単な試験とはいえません。
【頻出の出題単元】
ここ5年間では、場合の数・確率、図形、微分積分(数学Ⅱ)などの単元が頻出です。場合の数・確率では、典型パターンから外れた問題が出題されることが多いため、普段から数え上げなどに慣れておく必要があります。図形分野では、平面図形・空間図形ともに、難易度の高い問題が多く、相応の実力が要求されます。また、ベクトル等の問題であっても、幾何の定理を上手く利用した方が解きやすい問題なども出題されていますので、図形の扱いには十分に習熟しておかなくてはなりません。微分積分は、典型的な、極値や最大最小を求める問題、面積計算、微分係数の定義式など、基礎~標準レベルの問題が多く出題されています。微分積分の計算だけでなく、多項式関数については、グラフの概形や方程式の解とグラフの交点との関係など、基本的な知識は確実に押さえておきましょう。
【制限時間に対する問題量】
60分3問ということで、時間に余裕がありそうに見えますが、実際に解いてみると、かなりの作業量が要求されます。内容から考えると、60分の時間設定はかなり厳しいものであり、日頃の学習の質と量が問われる試験となっています。解法の定着、正確かつ素早い計算の技術は当然身につけているものとして、図形処理の能力や、行き詰まったときに試行錯誤して答えを導き出す粘り強さも求められます。
2022年度(最新の過去問)の分析
さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問】(難易度:やや易)
三角形の辺の内分点や頂点から下ろした垂線などを取り、各線分の比や長さを求める、典型的な問題です。特筆して難しい要素はなく、中学数学レベルの知識があれば、十分に解き切れる問題となっています。
あえてポイントを挙げるとすると、(2) [ ウ ]で「1つの鋭角を共有する直角三角形→相似を利用する」に気付けるか、でしょうか。それ以降の問題においては、三平方の定理だけでも答えは出せますが、相似比やメネラウスの定理などの、比を利用する方法で解くと計算が楽になります。[ エ ],[ オ ]の問題なども、\(\frac{BE}{AE}\)=[ エ ] , \(\frac{AH}{DH}\)=[ オ ] という問い方からして、三平方よりはまず比を利用して長さを求めようと考えるのが自然でしょう。
[ エ ]では[ ウ ]と同様に三角形の相似比が、[ オ ]ではメネラウスの定理が有効に使えます。[ エ ][ オ ]でも三平方の定理を使って答えを導くことは可能ですが、それなりに面倒な計算をクリアする必要があります。計算を楽にする工夫として、掛け算は後回しにする、和と差の積の因数分解の利用、などを積極的に使っていきましょう。また、三平方の定理から答えた場合でも、あとから相似比やメネラウスの定理が使えたな、と気づいたときには、検算で正しい比になっているか確認することで、自分の解答が正しいかの裏付けが取れます。
最後の[ カ ]は、4点を通る円の半径を求める問題です。円周角の定理の逆から、線分\(BH\)が直径であることさえ分かれば、三平方の定理で長さを出すことができます。
全体を通して、高度な図形処理の能力よりも、計算力が問われる問題となっています。可能な限り時間をかけず、かつ正確に解き切りたいところです。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 10割
他教科を得点源にしたい受験生… 8割
【第2問】(難易度:難)
ある感染症について、その感染モデルを考える問題です。このような問題を初めて目にする受験生にとっては、前提となる条件が掴みづらく、難しく感じられたのではないでしょうか。
問題文には前提として、患者の状態は下記の3つに分かれると書かれています。
①(感染1~3日目) 感染者であり、かつ他者にも感染する(感染性がある)状態
②(感染4日目) 感染者であるが、他者には感染しない状態
③(感染5日目) 感染者ではなくなった状態
さらに、①の段階の患者からは、他者1人に感染します。
これだけでは、まだ条件が分かりにくいのですが、
調査1日目:感染者1人からスタート → 2日目:感染者2人 → 3日目:感染者4人 → 4日目:感染者8人 → 5日目:感染者14人
と、問題文に示されているため、これをヒントに、どのように感染していくのかを考えることになります。
ポイントは、調査1~4日目までの感染者数は、倍々ゲームで増えていること、4日目 → 5日目で、増え方に変化があることです。これは、1日目の感染者(1人)が4日目の時点で②の段階に入ったため、4日目→5日目の新規感染者が減ったことが原因であると考えられます。
調査 ( n ) 日目 | (1) | (2) | (3) | ⑷ | ⑸ |
全感染者数 | 1 | 2 | 4 | 8 | 14 |
新規感染者数 | 1 | 1 | 2 | 4 | 7 |
感染性ありの患者数 | 1 | 2 | 4 | 7 | 13 |
表にまとめると、以上のようになります。
こうしてまとめていくと、調査 n日目における、
・「全感染者数」=\((n-3)日目からn\)日目までの「新規感染者数」の和
・「新規感染者数」=\((n-1)\)日目の「感染性ありの患者数」
・「感染性ありの患者数」=\((n-2)日目からn\)日目までの「新規完成者数」の和
となっていることが分かってきます。
ちなみに、この例のモデル(つまり(1)の問題設定)であれば「②段階の患者を感染性ありの患者から除外する」ことと「③段階の患者を全感染者から除外する」ことが隣接した日で起こるため、
「全感染者数」=「感染性ありの患者数」\(×2\)
と考えても答えが出せます。数学は最低限の得点でよい、という受験生はこの方法で(1)のみを解いた後、別の問題に取り組むようにしても良いでしょう。(2)以降は、先述の和で求める方法で求める必要があります。
(1)を解いたときの「調査10日目」までの表は、以下のようになります。
調査 n日目 | ⑴ | ⑵ | ⑶ | ⑷ | ⑸ | ⑹ | ⑺ | ⑻ | ⑼ | ⑽ |
全感染者数 | 1 | 2 | 4 | 8 | 14 | 26 | 48 | 88 | 162 | 298 |
新規感染者数 | 1 | 1 | 2 | 4 | 7 | 13 | 24 | 44 | 81 | 149 |
感染性ありの患者数 | 1 | 2 | 4 | 7 | 13 | 24 | 44 | 81 | 149 | 274 |
(2)は、予防対策によって、①段階の患者が②段階になるまでの日数が1日だけ減ります。
つまり、「感染性ありの患者数」で参照する「新規感染者数」の日数が1日分少なくなるため、
・「感染性ありの患者数」=\((n-1)日目からn\)日目までの「新規完成者数」の和
となります。なお、患者が③段階になるまでの日数、および②段階の患者が感染させる他者の数は変化しないため、「全感染者数」と「新規感染者数」の出し方は変わりません。
調査 n日目 | ⑴ | ⑵ | ⑶ | ⑷ | ⑸ | ⑹ | ⑺ | ⑻ | ⑼ | ⑽ |
全感染者数 | 1 | 2 | 4 | 8 | 11 | 18 | 29 | 47 | 76 | 123 |
新規感染者数 | 1 | 1 | 2 | 3 | 5 | 8 | 13 | 21 | 34 | 55 |
感染性ありの患者数 | 1 | 2 | 3 | 5 | 8 | 13 | 21 | 34 | 55 | 89 |
(3)では、①段階から②段階への移行期間が、さらに1日短縮されます。表は以下のようになり、(2)が解けたのであれば非常に簡単に答えが出せますから、ここまでたどり着いた受験生は、是非とも取り切ってほしい問題です。
調査 n日目 | ⑴ | ⑵ | ⑶ | ⑷ | ⑸ | ⑹ | ⑺ | ⑻ | ⑼ | ⑽ |
全感染者数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
新規感染者数 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
感染性ありの患者数 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 6割
他教科を得点源にしたい受験生… 3割
【第3問】(難易度:標準)
2つの放物線で囲まれた図形・領域について考える問題です。
\(f(x) = x^{2}+2ax\),\(g(x) = -x^{2}+4ax+12a^{2}\) \((ただし,a>0)\)
という関数が与えられています。
定数に文字が含まれていますが、どちらも \(a>0\) という条件に注意すれば、図示は容易です。問題を見て、難しい、手を付けられない、と感じた生徒は、まずこれらのグラフを正確に図示することから始めましょう。
(1) 2曲線で囲まれた図形の面積を求めます。正しく作図ができていれば、
\(-2\int_{-2a}^{3a} (x-3a)(x+2a) \, dx\)
という式までは立てることができます。
放物線どうしの共有点を求める際に、\(g(x)-f(x)=0\) の方程式を解いているはずですから、その途中経過を利用して、因数分解した形のまま積分の式を作ることがポイントです。
この形であれば、「\(\frac{1}{6}\)公式」を利用することにも、気づきやすくなります。公式を利用せずとも計算は可能ですが、ミスを減らす、かつ時間短縮のためにも、使えるようにしておきたいところです。
(2) \(y≧f(x) , y≦g(x)\)を満たす\(x , y\)について、\(2x-y\)の最大値が9となるaの値、最小値が9となるaの値を求めます。(1)で面積が求められなかった場合でも、図さえ描けていれば解き進めることが可能な問題ですから、諦めることなく、粘り強く挑んでください。
このような領域の最大最小の問題では、式変形ではなく図を利用して考えます。\(2x-y=k\)と置くことによって、放物線で囲まれた領域と直線の位置関係から、解を求めることが出来ます。
各放物線に接する場合と、放物線どうしの共有点を通る場合において\(k\)の値が最大最小を取り得ることに注意して場合分けを行いましょう。
典型的な問題ですから、解けなかった生徒は、基礎的な問題集を使って解法を確認しておく必要があります。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 8割
他教科を得点源にしたい受験生… 5割
【総評】
第1問、第3問が基本~標準レベルの問題であるのに対して、第2問はかなり難易度が高くなっています。ちょっとした条件の捉え違いで0点になることもあり得る問題ですから、ここに時間を使いすぎずに、他の2問をミスなく確実に解くことが重要です。受験の基本ではありますが「解ける問題を確実に解く」意識を強く持って、1点でも多く取っていく姿勢で問題に取り組んでください。
まとめ
というわけで、今回は近畿大学医学部の数学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
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