京都医塾化学科です。
このページでは「大阪医科薬科大学の化学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“大阪医科薬科大学”の受験を考えている方
・“大阪医科薬科大学の化学がどのような問題か知りたい”という方
にオススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2023年度
形式: 記述・論述式(一部選択式)
制限時間: 2科目で120分
配点: 100点
出題の傾向と特徴
大阪医科薬科大学の入試問題では、毎年大問4つで構成されています。理論化学と有機化学からの出題が多く、無機化学の出題は2019年度に硫化物沈殿に関する問題があったのみで、ほとんど見られません。しかし、2022年度には3年ぶりに無機化学の出題(合金、鉄の性質・反応)が見られました。次年度の入試にも無機化学が登場するかは不明ですが、無機化学分野も十分に仕上げておくことが理想です。また、有機化学の大問中に理論化学に関する出題が見られることもあり、理論化学の割合が大きいことが特徴です。
【頻出の出題単元】
上述の通り、理論化学の割合が大きいため、理論化学に関しては入念に勉強をしておきましょう。とりわけ、反応速度と化学平衡、酸塩基や酸化還元の滴定問題などはほとんどの年度で出題されています。有機化学に関しては、構造決定や、天然高分子化合物が出題されることが多いため、こちらも十分に確認しておきましょう。
【制限時間に対する問題量】
60分で大問が4つであり、各設問の難易度も標準レベルが多いため、医学部入試においては一般的な問題量と言えます。年度によって多少異なりますが、計算が煩雑でない年度は余裕を持って解き終わることもできるでしょう。各年度ごとに大問1つは平易な問題が入っているため、素早く終わらせて、ほかの問題への時間配分の調整に活用しましょう。
2023年度(最新の過去問)の分析
さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問】 硫化亜鉛型結晶格子
問1~問4:単位格子に関して、粒子数、亜鉛イオンにだけ着目した場合の結晶格子、同じ粒子の配置を取る物質の代表例、一辺の長さやイオン半径の間に成り立つ式を求める問題など、全てが基本~標準問題でした。
問5、問6:いわゆる、限界半径比を求める問題でした。塩化セシウム型や塩化ナトリウム型のイオン結晶ではよく出題されますが、硫化亜鉛型のイオン結晶の限界半径比は、やや難易度の高い問題のため、扱ったことがなかった受験生もいたのではないでしょうか。化学が得意な受験生は、ここも得点して差を付けたい問題です。
≪2023年度の目標値≫
化学を得点源にしたい受験生… 9割
他教科を得点源にしたい受験生… 7割
【第2問】 錯体の形成と滴定
問1、問2:平衡定数の大小関係と、平衡定数の関係を求める問題でした。与えられたK1~K4の文字式と、(Ⅰ)~(Ⅳ)式の平衡定数との関係を求められれば、(Ⅰ)~(Ⅳ)式の平衡は大きく右に偏っているという記述から答えを導くことができました。
問3:化合物X、Y、さらにEDTAと、Mg2+、Ca2+の間に起こる反応を問題文から読み取り、その情報を基に水道水に含まれるCa2+の質量を求める問題でした。問題文の情報が読み取りづらく、どのような反応が起こるのかイメージできなかった受験生も多かったのではないでしょうか。今年度の出題の中では最も難しい問題でした。
問4:石灰岩(炭酸カルシウム)が二酸化炭素が溶け込んだ雨水により溶解するときの反応式を書く問題でした。様々な問題で聞かれる反応式のため、確実に正答しておきたい問題でした。
問5:今回の滴定に関する文章の空欄を補充する問題でした。最後の一文にある、「高い洗浄力をもつセッケン水」という表現と、この大問を通じてMg2+やCa2+の話が出てきていたため、硬水中でセッケンの洗浄力が弱まることを連想する、という流れでした。この問題も、問題文の情報を正確に読み取れている必要があり、難易度の高い問題でした。
≪2023年度の目標値≫
化学を得点源にしたい受験生… 7割
他教科を得点源にしたい受験生… 5割
【第3問】 中和滴定、酸化還元滴定
問1~問3:滴定に用いる実験器具と、その扱いに関する問題、問3は酸化還元滴定において、酸性にするために加える酸を答える問題でした。いずれも基本問題のため、確実に得点しておきたい問題です。
問4:中和滴定の滴定結果から、水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度を求める問題でした。典型問題のため、計算ミスにだけ気を付けながら、確実に正答したい問題です。
問5:シュウ酸の半反応式を答える問題でした。こちらも基本問題のため、確実に得点しておきましょう。
問6:中和滴定と酸化還元滴定の滴定結果から、シュウ酸と酢酸のモル濃度を求める問題でした。少しだけ難易度の高い問題ですが、標準問題の範囲内に収まるレベルのため、この問題も正答して、得点を稼いでおきましょう。
≪2023年度の目標値≫
化学を得点源にしたい受験生… 10割
他教科を得点源にしたい受験生… 8割
【第4問】 糖類
問1:糖に関する基本知識の空欄補充の問題でした。すべて基本知識のため、全問正解を目指しましょう。
問2:スクロースの完全燃焼で発生する二酸化炭素と水の質量を求める問題でした。基本的な計算問題のため、計算ミスに気を付けて正答したい問題です。
問3:鎖状構造の単糖類の不斉炭素原子の個数を答える問題でした。鎖状構造の構造式をきちんと暗記できていたかどうかによって、正答できたかが分かれる問題です。重要な知識のため、覚えていなかった受験生は十分確認しておきましょう。
問4:フェーリング反応で得られた酸化銅(Ⅰ)の質量から、加水分解の割合を求める問題でした。フェーリング反応における量的関係を知らなかった場合、解答が難しい問題でした。反応式の係数などが問われる場合もあるため、フェーリング反応のイオン反応式には目を通しておくと良いでしょう。
問5:α-ガラクトースの構造式を書く問題でした。基本知識のため、確実に得点しておきましょう。
問6:三糖類の化合物Yの還元性の有無を説明する問題でした。例えばスクロースのように、還元性を示す部分同士で結合している場合は還元性を示さないことを思い出せれば、説明もしやすかったのではないでしょうか。
≪2023年度の目標値≫
化学を得点源にしたい受験生… 9割
他教科を得点源にしたい受験生… 7割
【総評】
第2問以外は、標準的な難易度の問題が並びました。そのため、第2問以外で出来る限りの失点を抑え、第2問では、問1や問2、問4などの、基本~標準レベルの問題を確実に取っておくことが求められます。基本問題での取りこぼしを減らすためにも、各単元の基本知識は入念に確認しておき、頻出問題は解法も確認して、確実に得点できるような状態に仕上げておきましょう。
まとめ
というわけで、今回は大阪医科薬科大学医学部の化学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
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