京都医塾数学科です。このページでは「帝京大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“帝京大学”の受験を考えている方
・“帝京大学の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2024年度
形式: マークシートと記述(募集要項より) 例年空所補充式です。
制限時間: 2教科で合わせて120分(実質60分)
配点:100点(筆記試験全体の配点は300点)
【出題の傾向と特徴】
形式に加え、近年5箇年分の傾向をまとめます。
※「赤本」に掲載されている、1日目を対象とします。
私立医学部では珍しく、数学Ⅲは出題範囲外となっています。ですから、数学Ⅲが未習、または学校の進度が遅く数学Ⅲの対策が十分でない現役生の受験生には魅力的な大学です。
また、受験科目が「英語と、数学・理科・国語から2科目」という形式ですから、そもそも数学を使わないという選択肢も存在します。
【頻出の出題単元】
出題される範囲が数学ⅠAⅡBと限られていますが、微積分の範囲からは毎年出題されています。数学Ⅲの範囲の微積分はもちろんありませんが、いわゆる「六分の一公式」などの計算の工夫も含めてしっかりと学習しておく必要があります。また、計算の工夫として、積の微分公式などもおさえておくとよいでしょう。
また、指数・対数関数や数列、場合の数と確率、三角関数からの出題も多く、こちらもしっかりと押さえておきましょう。
【制限時間に対する問題量】
約60分で大問4つという、医学部入試でもよくある形式になっています。計算量も他の私立医学部と比べるとそこまで多くはありません。それでも、典型問題を素早く正確に処理する計算力が必要ですし、受験テクニックを用いて、計算時間を短くできることも大切です。
また、パッと解法が思い浮かばない問題を飛ばすという判断も必要になります。(そもそも、飛ばす判断をするのにも訓練が必要です)
2023年度(最新の過去問)の分析
ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問 微分法】(易)
(1)は放物線に、外部の点から引いた接線の問題です。教科書にも出てくる定番の問題ですので、解けるだけでなく、素早く正確に解ける必要があります。
自分で接点の\(x\)座標を\(t\)とおいて、接線の方程式を作り、点(1,-\(\frac{1}{8}\))を通ることから\(t\)の2次方程式を作りましょう。
(2)3次関数の導関数の問題です。\( f(p) \)=\( f(2p) \)=0から\(x\)=\(p,2p\)で\(x\)軸と交わることに気付ければ、\( f(x) \)が3次関数であることと合わせて、\( f(x) \)=\( r(x-q)(x-p)(x-2p) \)と置くことができます。
後は、微分して導関数を求め、与えられた条件である\( f’(p) \)=\( f’(2p) \)=\(\frac{p^2}{3}\)から連立方程式を作りましょう。その際、本来は数学Ⅲの範囲になりますが、積の微分公式を用いると計算がスムーズです。計算スピードを上げるために、積極的に利用していきましょう。
また、未知の文字3つに対して、式が2つしかありませんが、求める式が\(p\)の式ですので、\(q\),\(r\)を\(p\)の式で表すように変形していけばよいです。(実際に計算すると、\(r\)は具体的な数になります)
≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…素早く完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答
【第2問 三角関数・ベクトル】(標準)
(1)典型的な三角関数の連立方程式です。京都医塾でも、定番の問題として扱っています。しかも今回は\(sin(x+y)=\)アという形で、ヒントもあります。
実際には、連立方程式のそれぞれの式を辺々2乗して、その2式を足すことで\(sinxcosy+cosxsiny\)が求まります。典型的な加法定理の形ですね。また、\(x+y \)の範囲を確認すると、\(-π<x+y<π\)より、\(x+y=0\)、よって\(y=-x\)になります。後は、\(y=-x\)をいずれかの式に代入して\(x\)、\(y\)を求めましょう。
(2)与えられた条件をどう使うかに気づければ簡単な問題です。
条件の式を\( \overrightarrow{a} \)\(-2\)\( \overrightarrow{b} \)\(=\)\( \overrightarrow{x} \)、\(-2\)\( \overrightarrow{a} \)\(+7\)\( \overrightarrow{b} \)\(=\)\( \overrightarrow{y} \)とおいて考えると考えやすいです。
それから、求めたい\( \overrightarrow{a} \)\(+\)\( \overrightarrow{b} \)を\( \overrightarrow{x} \)と\( \overrightarrow{y} \)を用いて、\(3\)\( \overrightarrow{x} \)\(+\)\( \overrightarrow{y} \)と表してしまえば、後は大きさを求めるだけです。
ベクトルの大きさの話ですので、2乗して最大・最小を考えてみましょう。
パッと式変形できなければ、試行錯誤をする時間的余裕はあまりないため、飛ばすことも検討しましょう。
≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…できれば完答したい
他教科を得点源にしたい受験生…(1)をなんとか取りたい
【第3問 確率・整数・データの分析】(やや易)
(1)アイは典型的な確率の問題ですので、確実にとっておきたいです。ウは平均値・分散といったデータの分析の知識が必要となります。
分散の計算方法である、「(二乗の平均)-(平均の二乗)」を使えるかが鍵です。この計算方法がパッと出てこないのであれば、飛ばしてしまいましょう。
後は、通分すると分子に\(a^2\)+\(b^2\)+\(c^2\)\(-ab-bc-ca\)の形がでてくるので、\((a-b)^2\)+\((b-c)^2\)+\((c-a)^2\)と変形できれば答が見えてきます。\((a-b)^2\)+\((b-c)^2\)+\((c-a)^2\)が18になる\(a\),\(b\),\(c\)の組を求め、並びかえていきましょう。
(2)こちらもエは典型問題ですので、確実にとりたいです。オも整数の典型問題ですが、整数の問題に不慣れだと何をすればよいのか分からないかもしれません。
最小公倍数の問題ですので、最大公約数に着目しましょう。今回は問題文で与えられていないので、自分でおきましょう。最大公約数を\(g\)とすると、\(a=ga’\)、\(b=gb’\)と表せ、最小公倍数\(n\)は\(n=ga’b’\)と表せます。
後は、\(n\)の素因数が2,3,5,7,11 一つずつなので、グループ分け問題と考えると計算しやすいです。
2,3,5,7,11の5つの数字を\(g\), \(a’\), \(b’\)の3つのグループに入れていけばオを求めることができます。
出題頻度が低かった整数・データの分析の知識を絡めた出題ですので、戸惑った受験生もいたかもしれませんが、落ち着いて知っている知識を引っ張り出しましょう。
≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…ウ、オ以外は取りたい。
【第4問 指数・対数関数】(やや易)
(1)\(t=\)\(3^x\)と置き換えて、\(t\)の関数と考える指数関数の典型的な問題です。置き換えたときに\(t\)の範囲を確認しておきましょう。
\(t\)の3次関数になるので、微分して導関数を求め、増減表を書きますが、これも微分の典型的なパターンですので、問題なく処理できます。他教科を得点源にしたい受験生の方も、ここは確実に取りたいです。
(2)常用対数表などが与えられてないため、\(log_{2}{10^5}\)を\(5\)\(log_{2}{2}\)\(+\)\(log_{2}{5^5}\)と変形して\(5+\)\(log_{2}{5^5}\)を作り、\(log_{2}{5^5}\)の真数部分\(5^5\)を\(2^n\)で挟んで考えます。\(2^{11}\)\(<\)\(5^5\)\(<\)\(2^{12}\)ですので、\(11<\)\(log_{2}{5^5}\)\(<12\)となります。後は辺々に5を加えればいいですね。
オも同様に与えられた対数を変形していけば答えにたどりつけます。
なお、解答のみを答える問題ですので、常用対数の問題で見慣れている\(log_{10}{2}\)\(=0.3010\)を覚えていれば、底の変換公式で \(\frac{log_{10}{10}}{log_{10}{2}}\)とし、\(1÷0.3010\)を計算してもかまいません。
≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 完答
他教科を得点源にしたい受験生… (1)は完答したい
【総評】
データの分析や整数からの出題があったとはいえ、典型問題や教科書レベルの知識を使う問題が多いことは変わりありません。解法が定着していれば、手が出ない問題はほとんどないと思います。後は、試験の緊張感の中、その問題を解くのか飛ばすのかを取捨選択することができるかが大切です。
まとめ
今回は帝京大学医学部の数学についてまとめてみました。
他の私立医学部のような難問は出題されていません。学校の副教材やチャートのような参考書で、繰り返し典型問題を解いて、その解法を身につけられているかどうかがカギになります。また、その際に常に時間を計って、ひとつひとつの問題にどのくらいの時間をかけているかを意識して解くようにしてください。
京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください。