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2023年度関西医科大学医学部の数学過去問対策・分析

2023年度関西医科大学医学部の数学過去問対策・分析

京都医塾数学科です。

このページでは「関西医科大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“関西医科大学医学部”の受験を考えている方
・“関西医科大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方
にオススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2023年度(最新の問題より) 
形式:記述式(各設問の答えは解答用紙の指定欄に記入し、枠内に答えの導出過程を記入する形式となっています)
制限時間:90分
配点:100点(筆記試験の総得点は400点)
また、2023年度は第4問が選択問題(同じ図形に対して求めるものが異なる)という今までにない形式となっています。

出題の傾向と特徴(過去6年分)

【出題内容と問題の難易度】

記述式の問題では思考力を問う論証問題が出題されます。また、複雑な計算が必要となる微分法・積分法の問題も出題されます。そのため思考力と計算処理能力との両方が必要となります。

また関西医科大学は「入試過去問題活用宣言」に参加しています。過去の国公立大学の問題を積極的に活用する傾向にあります。

総じて「国公立大学の医学部受験者」を意識した内容であると言えるでしょう。

【頻出の出題単元】

どの単元からも幅広く出題されますが、数学Ⅲ「微分法」「積分法」からの出題が多いです。これらの単元は関数を微分して増減表を書いたり、グラフを描くために極限を計算したり、「手順通り基本に忠実に解く」ことが問われる単元です。また三角関数や指数関数も登場することから、数学ⅠAⅡBの内容の理解度も問われます。どれも計算量が多くなる単元でもあるので、これまでの問題演習の経験の多寡が影響するでしょう。また、数学Ⅰ「集合と命題」や数学Ⅲ「複素数平面」などの受験生の多くが苦手であったり演習が不足したりしている単元の出題もしばしば見られます。苦手単元や未習単元を減らす必要があります。

【制限時間に対する問題量】

計算力が問われる問題が多く、時間内にすべての問題に解答することは非常に難しいです。そのため、手をつける問題を取捨選択し、効率的に得点する必要があります。加えて典型的な問題も出題されるため、今まで問題を解いてきた経験が解くべき問題の見極めに活きると言えるでしょう。

2023年度(最新の過去問)の分析

 ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【第1問 数と式・整数】(難易度:やや易)

(1)の4次式の因数分解を用いて(2)で不定方程式の整数解を求めるという非常にシンプルな問題構成となっています。(1)では基本通り「\(a\) , \(b\) のどちらかの文字に関して整理」することで2次式の因数分解に持ちこめます。さらに(2)も基本通りの「2次不定方程式の整数解の解法」を用いれば特殊な部分はありません。

一見すると次数が高い式が並び、難しく見える問題ですが、標準的な問題で培った知識を引き出せば、短時間で正答にたどりつけます。

≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…素早く完答したい
他教科を得点源にしたい受験生…完答したい

【第2問 数列】(難易度:やや難)

(1),(2)のテーマは「等差数列」ですが、ある自然数 \(k\) について「\(a_{k+1}=b_{k+1}\)」「\(a_{2k+1}=0\)」といった見慣れない条件が与えられています。基本通り、公差を文字でおけばすんなりと解ける問題ですが、典型問題に見えずに白紙答案となってしまう恐れがあります(文章題を苦手とする場合、問題を正しく理解できない可能性すらあります)。

(3)の漸化式の問題は平易に見えますが決して簡単なパターンではなく、(4)(5)では「二項係数に関する発展的な知識」が問われます。(4)は「確率の最大値」で用いる解法の応用、(5)は二項定理の展開式を恒等式と見て式の値を求める方法が必要になります。

等差数列から始まった問題ですが、各問題で知識を的確に引き出さなければならないため、完答は難しいでしょう。

≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(3)まで
他教科を得点源にしたい受験生…(2)まで

【第3問 ベクトル】(難易度:標準)

※本問は2017年度徳島大学前期試験(理工学部等)で出題された問題と全く同じものです。
※関西医科大学は「入試過去問題活用宣言」に参加しています。

三角形の内接円の円周上にある点Pを始点とするベクトルについて「内積や大きさに関する値」を計算し、最後にベクトルの内積の最大・最小を求めるという構成となっています。内接円の円周上の点に限らず、三角形の内部の点を始点として同様の構成になっている問題は国公立大学ではしばしば出題されます。しかし、「このような問題は初めて見た」という受験生も多くいたと思われます。

また(2)以降では始点を内接円の中心に取り換えることが最善の解法となりますが、この考え方はベクトルの応用問題で積極的に使われます。そのため、ベクトルの問題をどれだけ幅広く解いてきたか、という経験が結果に直結し「差がつきやすい」問題と言えるでしょう。

≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答したい
他教科を得点源にしたい受験生…(1)まで

【第4問 積分法】(難易度:やや難)

陰関数の形で表された曲線の「①\(y\)軸まわりの回転体」もしくは「②\(x\)軸まわりの回転体」のどちらを求めるか選択して解く問題となっています(途中の設問も一部異なります)。

多くの受験生が初めて見る問題形式と考えられます。そのため、少なからず「どちらを答えるべきか」で迷ってしまい、不安な状態で解き始めることになります。

①を選ぶと \(x,y\) の4次式を扱わなければならず、文字のおきかえで2次方程式の理論に持ちこめるとはいえ、場合分けも必要、さらに\(y\)軸まわりの回転体も計算量が多く、完答は難しいでしょう。

②を選んでも、ヒントがあるとはいえ \(\displaystyle \int 2\sqrt{x^{2}+4}dx \) の計算という高度な内容を含み、考え方が難しいうえに計算量も多いため、こちらも完答は難しいでしょう。

どちらを選んでも一筋縄では最後までたどりつけません。面積や体積を求める積分法の入試問題を「どのような問題であっても高確率で完答できる」と自信を持てるまで訓練を積んでいるかどうかが大きく影響します。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(3)まで
他教科を得点源にしたい受験生…(2)まで

【総評】

着実に積み上げてきた知識または計算処理能力、あるいはその両方を問う問題が多く出題されました。第1問と第3問で着実に得点を重ね、第2問や第4問で解ける問題を選んで少しでも得点を上積みできるかがカギになります。

まとめ

  多くの大問に応用問題が含まれますが、決して難問ばかりが出題されるわけではありません。入試の過去問などの応用問題ばかりを解いて準備するのではなく、基本知識が備わっているかを問う問題の練習により基本知識の抜けをなくすことが合格への最短経路となります。

京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください。

投稿者:福居 宏大

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    7年
  • 出身大学
    京都大学大学院理学研究科
  • 特技・資格
    数学
  • 趣味
    数学
  • 出身地
    数学
  • お勧めの本
    Rational homotopy theory (Graduate Texts in Mathematics) ※数学科に進学した人向けです。

受験生への一言
数学をしましょう。