京都医塾数学科です。
このページでは「久留米大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“久留米大学”の受験を考えている方
・“久留米大学の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2024年度(最新の問題より)
形式:全5問 マークシート形式
制限時間:90分
配点:100点(筆記試験の総得点は400点)
出題の傾向と特徴
2020年度以降の5年分についての傾向をまとめます。
【頻出の出題単元】
バランスよく広い分野から出題されています。微分法・積分法のいずれかは2020年度以降毎年出題されており、それ以外では場合の数と確率・ベクトル・数列・図形と方程式・整数などが頻出です。
【制限時間に対する問題量】
基本~やや難レベルまで幅広く出題されています。計算量の多い問題や根気よく数え上げる必要のある問題もあり、90分で解き切るにはかなりの処理速度が必要です。 2023年度以降は大問数が6→5に減少していますが、全体の計算量はむしろ増えています。問題を注意深く観察して、解き進めるか、思い切って飛ばすかの取捨選択も必要になるでしょう。
2024年度(最新の過去問)の分析
ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。特に第1問と第4問について詳しく触れていきます。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問 数と式、整数】(難易度:標準)
(1) 「平方完成」というヒントに乗れるかどうかがポイントです。式の中で平方完成を行うとすればyに関する2次式部分のみなので、素直に平方完成をしてみます。すると、与式は以下の形に整理できます。
\begin{equation} x^2 – 9(y-2)^2 = -56 \end{equation}ここで有名な因数分解 \( a^2-b^2 = (a-b)(a+b) \) を適用できます。あとはマークに合う形に式を整えましょう。後半は \( (3y-6+x)(3y-6-x)=56 \) から掛けて56になるペアを見つけていく作業が発生しますが、\( (3y-6+x)+(3y-6-x) \) が偶数であることや \( 3y-6+x \geq 3y-6-x \) を利用して候補を絞り込んでおくと手間を省けます。
(2) 前半は解の公式を適用するだけですが、文字を含む面倒な形なので計算ミスには注意しましょう。後半は、散りばめられたヒントに気づくことが重要となります。まず、\( x,y \) は整数ですから、「少なくとも」前半部分で現れた \( \sqrt{9y^2-36y-20} \) は自然数でなければいけません。この事実を用いて \( y \) の候補を絞り込みます(「少なくとも」という必要条件から絞り込むわけですから本来十分性の確認が必要ですが、マーク形式なので細かい議論は適宜スキップしてもよいでしょう)。ルートの中身である \( 9y^2-36y-20 \) が平方数でなければいけませんから、非負整数 \( k \) を用いて \( 9y^2-36y-20 = k^2 \) と表せるはずです。 これはまさに(1)で解いた方程式ですので、(1)を利用して \( k,y \) のペアがわかり、\( x \) も求めることができます。
≪2024年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(2)前半まで
【第2問 図形、数列の極限】(難易度:標準)
二等辺三角形 \( △OAB \) の中に、帰納的に直角三角形を構成する問題です。
(1) \( △OP_{n}P_{n+1} \) が \begin{equation} \angle P_{n}OP_{n+1}=\frac{\pi}{2} \end{equation} \begin{equation} OP_{n}=x_{n} \end{equation} \begin{equation} OP_{n+1}=x_{n+1} \end{equation} \begin{equation} P_{n}P_{n+1}=y_{n} \end{equation}を満たす直角三角形であることを利用し、漸化式を立てます。
(2) 前半で無限等比級数の和を求め、後半では三角関数の極限の知識の用いて計算します。問1が分かっていれば、比較的得点しやすい問題でしょう。
(3) 整理すると、\( \theta^{2p+3} \) の極限値が \( \theta^{p}\sqrt{S_{n}} \) の極限値を支配することがわかります。結局 \( 2p+3 = 0 \) でしか極限が0以外に収束しないことに気づけば、ゴールは目の前です。
≪2024年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…問2まで
【第3問 図形と方程式】(難易度:標準)
前半では不等式を満たすxy平面上の領域を求めさせて、後半では領域と直線が共通部分を持つ中で \( \theta \) の範囲を求めさせる問題です。内容は基本的ですが、対数関数と三角関数が登場するため、幅広い基礎知識が求められるでしょう。
(1) 真数条件を踏まえて計算していきます。結局、円の一部を切り落としたような領域になることがわかるので、三角形と扇形に分割して考えるとよいです。
(2) \( \theta \) の範囲を求めるため、\( \mathrm{sin} \theta \) の範囲を求めます。\( \mathrm{sin} \theta \) が最大になるのは、直線 \( y = \sqrt{3}x – 2\mathrm{sin} \theta \) が点 \( (1, 0) \)を通るときで、最小となるのは第2象限で \( x^2 + y^2 = 1 \) と接するときです。それぞれの \( \mathrm{sin} \theta \) の値を求め、\( \theta \) の範囲を書き出していきましょう。
≪2024年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…問1まで
【第4問 極方程式、積分】(難易度:やや難)
螺旋状の曲線に対して、面積や曲線の長さを求めさせる問題です。そもそもグラフの概形がわかっていなければ何をしているのかイメージが難しく、極形式で表される曲線の積分も慣れていなければ手が付けられないです。経験によって差がつく問題といえるでしょう。
(1) 前半は \( x^4\mathrm{cos}2x = \frac{1}{2}x^4(\mathrm{sin}2x)’ \) と捉えて部分積分を計算することで求めることができます。基本的な問題であり、ここは落とせません。後半は第1象限で曲線 \( C \)とy軸に囲まれた面積を求める問題です。原点からの距離が単調に大きくなりながら螺旋を描くグラフで、\( 0 \leq \theta \leq \frac{\pi}{2} \) ではxはyの関数とみなせます。
よって、\( x = r\mathrm{cos}\theta = \theta^2\mathrm{cos}\theta, y = r\mathrm{sin}\theta = \theta^2\mathrm{sin}\theta \) と変数変換を行えば、問1の結果を用いて
\begin{equation}
\begin{split}
\int_{0}^{\frac{\pi^2}{4}}xdy &= \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} ( 2\theta^3\mathrm{sin}\theta\mathrm{cos}\theta + \theta^4\mathrm{cos}^2\theta ) d\theta \\
&= \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \{ \theta^3\mathrm{sin}2\theta + \theta^4(\frac{1+\mathrm{cos}2\theta}{2}) \} d\theta \\
&= \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \frac{\theta^4}{2} d\theta \\
&= \frac{\pi^5}{320}
\end{split}
\end{equation}と計算を進めることができます。
なお、極方程式 \( r = f(\theta) \) の \( a \leq \theta \leq b \) における面積公式 \( \frac{1}{2}\int_{a}^{b} f(\theta)^2 d\theta \) を知っていれば、前半を無視して直ちに計算することができるため、時間を短縮できます。
(2) \(x, y \) は媒介変数 \( \theta \) で表されているので、求める曲線の長さは以下の式で計算することができます。
\begin{equation}
\int_{-\frac{\pi}{3}}^{\frac{\pi}{4}}\sqrt{ \bigg( \frac{dx}{d\theta} \bigg)^2+ \bigg( \frac{dy}{d\theta} \bigg)^2 } d\theta
\end{equation}
被積分関数は
\begin{equation}
\begin{split}
\sqrt{ \bigg( \frac{dx}{d\theta} \bigg)^2+ \bigg( \frac{dy}{d\theta} \bigg)^2 } &= \sqrt{ \theta^2\{ ( 2\mathrm{cos}\theta – \theta\mathrm{sin}\theta )^2 + ( 2\mathrm{sin}\theta + \theta\mathrm{cos}\theta )^2 \} } \\
&= \sqrt{\theta^2(4+\theta^2)} \\
&= |\theta|\sqrt{4+\theta^2}
\end{split}
\end{equation}
と変形できるので、積分区間 \( \theta \geq 0 \) の部分と \( \theta < 0 \) の部分で場合分けして絶対値を外すことで計算できます。
≪2024年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…問1まで
他教科を得点源にしたい受験生…問1で部分点を狙う
【第5問 数列、組合せ】(難易度:標準)
\( {}_n \mathrm{C}_r \) 形の数を規則に沿って並べていく問題です。数列らしさはありますが、数列の知識がなくとも(2)まではパズル感覚で解き進めることができる問題です。とはいえ見慣れない数列を扱うため、試験時間内に要領を掴みきれなかった受験生は難しく感じたでしょう。
(1) \( a_{8,8} \) は左から8列目、下から8段目に位置する項なので \( a_{8,8} = {}_{2\cdot8-1} \mathrm{C}_8 = {}_{15} \mathrm{C}_8 \) とわかります。
(2) \( {}_{203} \mathrm{C}_{97} \) からは現実的に書き並べることはできないので、少し考える必要があります。 \( {}_{203} \mathrm{C}_r \) 形を並べていくとき、\( {}_{203} \mathrm{C}_1 \) から \( {}_{203} \mathrm{C}_{102} \) までは左から102列目、下から1~102行目のマスに順番に並べることになります。それ以降の\( {}_{203} \mathrm{C}_{103} \) から \( {}_{203} \mathrm{C}_{203} \) は、下から102行目、左から1~101行目のマスに右から並べていきます。このように「並べる過程で折れまがる」ポイントがわかれば、どのような\( {}_n \mathrm{C}_r \) 形でも対応する \( a_{i,j} \) を求めることができます。
(3) 結局のところ、\( {}_{2n-1} \mathrm{C}_r \) 形の項を \( r =0 , … ,2n-1 \) まで足し合わせたものですから、二項展開式を活用すると良いでしょう。
≪2024年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…問2まで
【総評】
第1、4、5問はやや癖があり、完答するのは難しいところです。第2、3問は比較的解きやすいものの、解ききるには経験値が必要です。試験時間に対して一定量の計算は多く、日頃から素早く・正確に問題を処理していく訓練をしているか否かが得点率に大きく影響するでしょう。特定の問題に時間を掛けすぎないよう、「何を切り捨てるか」を咄嗟に判断する力も求められます。
まとめ
2024年度の過去問でも見たように計算量は増加傾向にあり、「計算を短時間で素早く正確に処理する」能力が求められます。基礎知識を定着させることは前提として、常日頃から計算力を磨くことを意識しましょう。また、癖のある問題で得点する対応力を磨く意味でも、数年分の過去問演習を行うことは効果的です。
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