京都医塾数学科です。
このページでは「埼玉医科大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“埼玉医科大学”の受験を考えている方
・“埼玉医科大学の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2024年度(最新の問題より)
形式:第1問、第2問、第3問マークシート形式
※マークシートには、 ア イ ウ に32を答える場合、032として答えなければならないなど特殊なルールがあります。注意事項はきちんと読むようにしましょう。
制限時間:50分
配点:100点(筆記試験の総得点は400点)
出題の傾向と特徴
2020年度以降の5年分についての傾向をまとめます。
【頻出の出題単元】
第1問の小問集合では、バランスよく広い分野から出題されています。第2問以降は数学ⅠAの確率、数学Ⅲの微分法・積分法はほぼ毎年出題されており、図形と計量やベクトルの絡んだ図形問題も頻出です。
【制限時間に対する問題量】
各設問が2~4つの小問からなり、初めに基礎的な問題が出され、徐々に応用的な内容へと進む形式になっています。50分の制限時間に対して問題量はやや多く、複雑な計算を要求される問題も出題されるため、時間配分が非常に重要になります。そのため、過去問による練習は必ず行っておきましょう。
2024年度(最新の過去問)の分析
ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。特に得点の分かれ目となる第3問と第4問について詳しく触れていきます。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問 小問集合】(難易度:易)
問1 \( f(x)=(1-x)e^{1-x} \) の最小値、および変曲点を求めさせる基本的な問題です。
問2 3つの曲線で囲まれた図形の面積の導出です。整理すれば3つすべてが円の方程式を表すことがわかります。ただし、定義域からすべて上半円であることに注意しておきましょう。面積計算は、半円から扇形と三角形をくり抜くことを考えればわかりやすいです。
≪2024年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答
【第2問 微分】(難易度:易)
3次関数 \( f(x)=x^{3}-\frac{4}{3}x \) の接線、および法線に関する問題です。
問1 \( x=0 \) における微分係数 \( f^{\prime}(0) \) を利用します。
問2 接線 \( l \) の方程式を求めてから \( y=f(x) \) と連立させても良いですが、解と係数の関係を用いることで具体的に \( l \) の方程式を求めるまでもなく \( q \) がわかってしまいます。いずれにせよ、\( l \) の方程式と \( y=f(x) \) を連立させてできる方程式が、\( x=t \) を重解に持つことが重要です。
問3 2接線 \( l \) と \( l^{\prime} \) の傾きに対して直交条件を用いるだけです。
≪2024年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答
【第3問 ベクトル】(やや易)
長方形と複数の分点や線分からなる平面図形の問題です。問われている内容は基本的ですが、短い時間の中でいくつかのベクトル計算を要求されるため、普段からベクトルの問題に触れていなければ計算ミスを起こす可能性があります。図形的な考察(”キツネ”型に着目して、メネラウスの定理!)によって面倒な計算を避けることもできますが、不慣れな場合は素直にベクトル計算の流れに乗ったほうがよいでしょう。
問1 \( \overrightarrow{\mathrm{OE}} \) の計算は \( \mathrm{DE:EB=2:1} \) であることを利用しましょう。\( \overrightarrow{\mathrm{OP}} \) を求めるには点 \( \mathrm{P}\) が線分 \( \mathrm{OB}\) 上、および線分 \( \mathrm{CE}\) 上に存在すること(共線条件)を用いて、2通りの表示を考えることが必要です。
問2 問1の後半と同様に、\( \overrightarrow{\mathrm{OQ}} \) を3点 \( \mathrm{O,A,Q}\) と3点 \( \mathrm{C,P,Q}\) がそれぞれ同一直線状にあることから \( \mathrm{OQ:QA} \) が求まります。解答はマークに合う形になるように注意しましょう。
問3 \( \overrightarrow{\mathrm{CP}} \) と \( \overrightarrow{\mathrm{DB}} \) は問1から\( \overrightarrow{\mathrm{OA}} \) と \( \overrightarrow{\mathrm{OC}} \) を用いて表すことができるので、\( \overrightarrow{\mathrm{OA}}\perp\overrightarrow{\mathrm{OC}} \) を用いて内積を計算できます。内積が0であることより、\( \angle\mathrm{\mathrm{ABC}} \) が \( \frac{\pi}{2} \) であることもわかります。
問4 問3から \( \triangle\mathrm{AQR} \) も \( \triangle\mathrm{ABD} \) も直角三角形であることがわかりますから、\( \mathrm{AQ}\cdot\mathrm{AR} \) と \( \mathrm{AB}\cdot\mathrm{AD} \) の比がわかれば終了です。\( \mathrm{AR:RB} \) を求めるために、ベクトルであれば3点 \( \mathrm{A,R,B}\) に対して共線条件を考え、図形考察であれば \( \triangle\mathrm{OQC} \) と \( \triangle\mathrm{AQR} \) の相似比に着目しましょう。
≪2024年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…問3まで
【第4問 確率】(やや易~標準)
色のついたセロハンを取り出し、重ねて観察したときに何色になるかを考察する問題です。個々のセロハンの色に対して重ねたときの色が何色であるか、慎重に問題文を確認した上で取り組みましょう。また、「セロハンを袋に戻す」操作はありませんが、前提条件をよく確認すると復元抽出とみなしてよいことがわかります。
問1 まず始めに、各セロハンを取り出す確率、すなわち
「赤色のセロハンを取り出す確率=\( \frac{1}{2} \)」
「黄色のセロハンを取り出す確率=\( \frac{3}{10} \)」
「無色透明のセロハンを取り出す確率=\( \frac{1}{5} \)」
であることを抑えておきましょう。2枚のセロハンを重ねて赤色になるのは、赤色/赤色、あるいは赤色/無色の組み合わせの場合です。これらは互いに排反な事象ですので、それぞれの確率の和を考えれば計算できます。
問2 求める確率が条件付確率であることに気づくことが重要です。一般に事象 \( A \) が起こったときに事象 \( B \) が起こる条件付確率は以下の式で与えられます。 \begin{equation} P_{A}(B) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)} \end{equation}
今回は事象 \( A \) を「取り出した2枚のセロハンを重ねると赤色に見える」、事象 \( B \)を「取り出したセロハンが両方とも赤色である」と考えて上の式に当てはめればよく、分母の確率は問1の結果を利用できます。
問3 問2と同様に、条件付確率の問題です。取り出したセロハンが赤色/赤色か、あるいは赤色/無色かによって「2枚のセロハンから1枚を無作為に選んだ時、無色のセロハンが取り出される」確率は当然変わります。前者だとあり得ず(確率=\( 0 \))、後者だと\( \frac{1}{2} \)の確率で起こります。以上をもとに、条件付確率を計算しましょう。
問4 最後も条件付確率ですが、条件が少し面倒です。条件を分解して、必要な確率を1つ1つ計算していきましょう。まずは、条件付確率の分母を計算するために「取り出した2枚のセロハンを重ねると黄色に見える」確率を考え、問1と同じように計算しましょう。「取り出した2枚のセロハンを重ねると黄色に見える」確率と「取り出した2枚のセロハンを重ねると赤色に見える」確率の積が、条件付確率の分母にあたります。「CのセロハンとDのセロハンを無作為に1枚ずつ選んで重ねたとき、だいだい色になる」のは、以下の4パターンを考えなければいけません。
①「Cが赤色/赤色、Dが黄色/黄色のセロハンを取り出した上で、CとDの持つセロハンを1枚ずつ選ぶ」
②「Cが赤色/無色、Dが黄色/黄色のセロハンを取り出した上で、CとDの持つセロハンを1枚ずつ選ぶ」
③「Cが赤色/赤色、Dが黄色/無色のセロハンを取り出した上で、CとDの持つセロハンを1枚ずつ選ぶ」
④「Cが赤色/無色、Dが黄色/無色のセロハンを取り出した上で、CとDの持つセロハンを1枚ずつ選ぶ」
①~④は互いに排反なので、各々のパターンでセロハンを重ね合わせてだいだい色になる確率を求め、和を計算すれば条件付確率の分子にあたる確率が求められます。
≪2024年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…問3まで
他教科を得点源にしたい受験生…問2まで
【総評】
第1、2問は比較的易しいので、確実に得点したいところです。第3、4問にもいわゆる難問はありませんが、試験時間は短い上に一定量の計算を伴うので、とにかく素早く・正確に処理していくことが重要です。行き詰まった場合は、1つの問題にとらわれずに思い切って先に進む判断も必要となるでしょう。
まとめ
2024年度の過去問でも見たように、「短い時間で典型問題を素早く正確に処理する」能力が求められます。基礎知識を定着させることは前提として、常日頃から計算力を磨くことを意識しましょう。また、過去問を解くことで時間配分をある程度考えておくことも効果的です。
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