京都医塾数学科です。
このページでは「愛知医科大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“愛知医科大学”の受験を考えている方
・“愛知医科大学の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2024年度(最新の問題より)
形式:小問集合(答えのみ)&記述式の大問
制限時間:80分
配点:150点(筆記試験全体の配点は500点)
愛知医科大学の数学は「80分・小問集合(答えのみ)&記述式の大問」という形式が続いています。
ただし、小問集合の問題数や全体の問題数は年度によって異なります。
2024年度:小問4問(うち3問はさらに2問に分岐)&記述式の大問2問
2023年度:小問3問(うち1問はさらに3問に分岐)&記述式の大問2問
2022年度:小問4問&記述式の大問2問
2021年度:小問4問&記述式の大問2問
2020年度:小問8問&記述式の大問3問
出題の傾向と特徴(5年分)
直近5年分の出題の傾向と特徴をまとめます。
【小問集合に関して】
大問Ⅰは小問集合の形で出題されることが定番になっています。分野に偏りはなく、様々な分野から満遍なく出題されています。難易度はそれほど高くなく、小問集合でどれだけ点を落とさないかが大事になります。各分野の基礎事項を知識の穴を作ることなく理解し、基本的な解法を使いこなせるようにしておきましょう。
【記述式の大問について】
ここ3年の記述式の大問では、「数列」「微積分(数学Ⅲ)」「確率」「整数」「空間ベクトル」「図形と方程式」から幅広く出題されています。小問集合に比べると、難易度が高い問題が出題され、計算の量も質も問われる形になっていることが多いです。正確に答えを出すためにも、計算工夫などを積極的に行いましょう。また、大問の後半部には、難易度が高く、最後まで解ききることが難しい問題も出題されますので、過去問演習などで、その問題を見極める力も養う必要があります。
【制限時間に対する問題量】
試験時間80分に対して大問3つまたは4つであり、計算量を考えますと、やや厳しい時間設定になっています。小問集合では、難しい問題が出題されることもありますが、粘り強く取り組み、取るべき問題を取りきることを目標にしましょう。残りの各大問の後半部では、難易度の高い問題が出題される傾向にあるので、解くべき問題と捨てるべき問題を取捨選択しましょう。
2024年度(最新の過去問)の分析
ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【Ⅰ 小問集合】(易~標準)
1) 約数についての問題
(a)も(b)も機械的に手順をこなすのみです。確実に正解しましょう。
2) じゃんけんの確率の問題
(a)4連勝のみが条件を満たすパターンであるため簡単ですが、うっかり\(\displaystyle \frac{1}{16} \)と答えてしまうと泣きを見ることになります。
(b)は負けたほうがどこで2勝したのかの場合の数を考えてやればよいです。ただし6試合目は必ず敗北となるため、実質的には5試合中2勝として考える点に注意です。
3) ベクトルの計算問題
条件式をそのまま2乗すると、求まっていない内積が多数出てきてどうにもならなくなってしまいます。
\( \overrightarrow {OA}+\overrightarrow {OB}=-\overrightarrow {OC}\)と変形してから2乗することで、求めたい\( \overrightarrow {OA}・\overrightarrow {OB}\)を、すでに求まっている量だけで表せます。
(b)は点Oが三角形ABCの重心であることに気付ければ簡単になりますが、気付かなくとも\( \overrightarrow {OA}・\overrightarrow {OC}\)や\( \overrightarrow {OB}・\overrightarrow {OC}\)を求めて三角形を3つに分けたそれぞれの面積を求めてやれば解答可能です。
4) 微分の計算問題
セオリー通りに微分して増減を調べるのみです。これは落としたくありません。
≪2024年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答したい
他教科を得点源にしたい受験生…1)すべて、2)の(a)、3)の(a)、4)すべて
【Ⅱ 2次曲線】(やや難)
2次曲線は計算が面倒な問題が出題されやすいですが、今回もその例に漏れず、かなりの計算量を要する難問です。
特にこの問題は1)が非常に大変で、それが解けてしまえば2)と3)はさほどでもないという構成であるため、部分点をかき集めるという戦略がしづらいという意味でも嫌らしい問題です。
1)は点と直線の距離公式を使って距離\(d_1\)を\(\displaystyle\frac{|c|}{\sqrt{a^{2}+b^{2}}} \)と表すことは簡単ですが、「接する」という条件から\(c\)を\(a\)と\(b\)で表す必要があります。
接するという条件の処理は重解条件か、点と直線の距離公式を用いるかのどちらかが考えられます。後者のほうが計算が楽ですが、これを利用するには楕円を拡大・縮小して円に直すという知識を要します。もしそこを乗り越えたとしても、計算が汚くなりやすく最後まで間違えずに処理しきることは容易ではありません。
もちろん\(d_1\)だけではなく\(d_2\)も求める必要があります。勘がよければ対称性から\(d_1\)の\(a\)と\(b\)を入れ替えたものが\(d_2\)であるとあたりをつけることができるので、そこに気付ければ幾分か楽になるでしょう。
2) 3) は 1) の苦労が嘘のようにあっさりと片付きますが、試験本番で問題を眺めた時に「1)だけが大変で2) 3)はさほどでもない」ということに気付くのは難しく、体感難易度は本来より高くなるでしょう。先に大問Ⅲを片付けて、余った時間でじっくりと取り組んだり、大問Ⅰを確実に正答することを優先するのが無難です。
≪2024年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…1)を解き切る
他教科を得点源にしたい受験生…1)の途中まで
【Ⅲ 数列と極限】(標準)
級数を不等式評価し、はさみうちの原理で極限を求める問題です。こちらは1)から徐々に難易度が上がる構成ですし、特に風変わりな手法を使うわけでもない素直な問題なのでⅡよりは取り組みやすいでしょう。
1)は落としたくありません。
2)は、なんとなくこの不等式が成り立つことはわかるがそれを定式化して証明することが難しいというよくあるタイプの問題です。ガウス記号を用いた議論に造詣が深ければ典型的なパターンにすぐ落とし込めるため非常に有利ですが、類題経験がないと厳しいでしょう。
3)は、不等式の誘導がついた極限の問題であるため、はさみうちの原理の利用を考えましょう。式を整理すると区分求積法の形が出てきます。計算は難しくありませんから、これら典型手法をちゃんと行使できるかが明暗を分けます。
数学が得意な受験生は、大問Ⅱが重すぎて得点しづらい分この大問でしっかり得点したいところです。
≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…1)
【総評】
小問集合であるⅠでできるだけ多く得点し、大問Ⅲで可能な限り得点を積み重ねることが合格水準に達するための近道です。加えて大問Ⅱは時間をあまりかけるべき問題ではないと判断する「難易度の見極め」も求められる構成でした。
まとめ
小問集合においては、分野の偏りなく正確に答えを導く力、各大問においては、解くべき問題を見抜いて解ききる力が必要になります。小問集合では各分野の基本的な解法が問われますので、まずは、苦手だと感じている分野を基礎事項から復習しておきましょう。そのうえで、問題演習などを通じて、標準レベル以上の問題にも対応できる力を養うと良いでしょう。
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