地域枠は奨学金制度など大きなメリットがありますが、卒後9年間指定地域で働くなど様々なデメリットもあります。
医学部入試を志す女子受験生が増える中、地域枠を検討する人も増えているのではないでしょうか。
それでは、女子にとって地域枠はどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
今回の記事では女子の地域枠について詳しく解説します。
目次
女子の地域枠は不利?
この項では、医学部の地域枠の基本的事項を確認しながら、実際に女子が利用する場合に注意したいポイントについて解説していきましょう。
医学部の地域枠って?
地域枠とは、地域医療の担い手を確保するために医学部が設ける入試制度です。
地域枠入試の合格者は大学が指定する地域や診療科で一定期間、従事することを条件として返済不要の奨学金の支給が貸与されます。
一方で、地域枠合格後の辞退は原則として不可で、義務年限を果たさずに離脱する場合にはそれまでの奨学金の一括返済がもとめられます。
そのため、地域枠受験をするならば卒後の進路や将来について覚悟を決めて挑む必要があります。
女子は不利?
女子であるから地域枠は不利とはいえませんが、地域枠に志願するのであれば当然、義務を果たす覚悟はもとめられるでしょう。
実際に地域枠入試で女子受験生に「結婚や出産についてどう考えているか」と質問されることがあります。
たしかに大学入学前の受験生が、自分の結婚や妊娠について答えられないことも無理はありません。
しかしながら、地域枠を志願するならばそういった切り込んだ質問に対しても自分なりの回答を用意しておく必要があります。
後述しますが、妊娠や育児による勤務の一時中断が可能な大学もあります。
自分が結婚や妊娠をしたとしても義務年度を消化して地域医療に貢献していく意思がある旨をしっかりと伝えることがもとめられます。
女子にとって医学部地域枠のメリット
女子が医学部地域枠を利用した場合のメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。
この項では、女子にとって医学部地域枠のメリットについて解説していきます。
学費を抑えられる
地域枠の一番のメリットは、返済不要の奨学金制度です。
私立大学医学部への進学であっても、地域枠であれば経済的負担が抑えることができます。
たとえば順天堂大学は、奨学金として月額10万円を6年間貸与する制度を設けています。
一定の要件を満たせば、奨学金の返還も免除されます。
奨学金制度によって学費が抑えられる点は、女子に限らず男子にもあてはまる地域枠のメリットといえるでしょう。
一般入試に比べると倍率が下がる
地域枠は一般入試に比べると倍率が下がることもメリットでしょう。
地域枠では、一定期間の従事義務があることや出願できる地域や年齢が定まっていることからも、志願者が限られて競争率が下がります。
また、推薦枠と組み合わせて受験することや受験科目が少ないなど、地域枠を選ぶことで受験が有利になることがあります。
地域枠の出願要件に適うならば、過酷な一般入試の競争を避けて医学部受験ができるのです。
途中3年間は義務期間の中断可能な地域も
地域によっては義務年度の途中であっても、猶予期間を活用することで一時的に勤務を中断することが可能です。
猶予期間が活用できるのは妊娠・出産などのライフイベントだけでなく、専門医資格取得・海外留学などを希望する場合でも可能です。
たとえば千葉県では、産休や育休の場合には就業先の制度の範囲であれば、たとえ地域枠の義務消化期間中であっても年数制限なしで取得できます。
つまり、地域枠だとしても妊娠出産・育児がまったくできないわけではなく、望めば海外留学も可能なのです。
女子にとって医学部地域枠のデメリット
それでは、女子であるからこその地域枠のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
この項では、女子にとって医学部地域枠のデメリットについて解説していきます。
結婚出産の時期と重なりやすい
地域枠を利用して医学部に入学すると、多くは卒後に9年ほど特定の地域で就労義務を果たさなくてはいけません。
しかし、卒後の9年間というのは結婚や出産などのライフイベントと重なりやすい時期ともいえます。
現役で入学して留年せずに卒業しても、義務年限が終わると33歳です。
入学前には思ってもみなかった「旦那さんの勤務場所の近くに住みたい」「子育ては自分の地元でしたい」などという思いが沸いてくることがあるかもしれません。
そういった場合、一定期間、就労場所が限定されることが足かせとなってしまう可能性があるでしょう。
キャリアを自由に選べない
自治体によっては、地域枠では卒後に特定の診療科に進まなくてはならないことがあります。
産科や小児科などのように不足する指定診療科での勤務が定められている場合は、自分の意思で診療科を決められません。
入学前には「医師になれるのならどの科でもいい」と思っていたとしても、大学在学中の6年間でやりたい診療科が見つかることもあるでしょう。
自分の意思と違う診療科に進むことは、大きな制限に感じてしまうかもしれません。
キャリアの選択肢が狭まる
卒後10年以内は医師のキャリア形成おいて重要な時期ともいわれており、多くの医師が専門医を取得するタイミングです。
しかしながら、上述しましたように地域枠では指定診療科での勤務が定められていれば、自分が望む診療科における専門医取得は難しくなります。
さらに地域の人口が少ない地域に配置されると症例数を積むのが難しく、専門医取得そのものの取得すら難しいこともあります。
医師としてのスキルアップが思うようにできず、キャリア形成につながりづらい可能性もあります。
離脱した場合のペナルティが重い
厚生労働省は2022年度の入試から地域枠制度を見直し、離脱するのにふさわしい理由がないと判断された場合には厳しいペナルティが課されるようになりました。
高い利息をつけた奨学金の一括返還だけでなく、離脱者の就職・専門医取得が不利になるようなペナルティとなっています。
もちろん本人の病気や就労できない理由が認められたらこの限りではありませんが、将来を安易に考えて地域枠を受験することはできないでしょう。
とくに女子が地域枠を志願する場合には、卒後9年間の義務期間に結婚や子育て、キャリアをどう積んでいくかを慎重に考えておく必要があります。
女子受験生が医学部合格を目指すなら京都医塾
女子の医学部地域枠のメリットは、男子と変わりません。
デメリットといえば医学部卒業後の9年間がちょうどキャリア形成の時期でもあり、女性にとって結婚・出産と重なりやすい時期であることです。
そのため、女子が地域枠の選択を迷うのも無理はありません。
一方で、自治体によっては義務年度中に猶予期間を活用でき、産休や育休をとることができ海外留学や学位取得が許される場合もあります。
つまり、女子だからという理由だけで地域枠をあきらめる必要はないのです。
地域枠の条件は自治体によって異なりますので、丁寧な情報収集は不可欠です。
しかしながら、受験勉強で多大な時間を割かなくてはいけない中、地域枠に関する情報収集をするのは至難の業です。
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地域枠では、結婚や出産・子育てなど自分の将来を考えて出願を決意する必要があります。
しかし、受験生が自分の将来を現実的に思い描くのは難しいものです。
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まとめ
医学部卒業後の9年は、キャリア形成の時期であると同時に女性にとって大きなライフイベントとなる結婚・出産と重なりやすい時期でもあります。
地域枠はちょうど卒後9年を義務期間として特定地域に就労しなくてはなりません。
そのため、女子にとって地域枠受験は非常に悩む選択ともいえるでしょう。
しかしながら自治体によっては地域枠の猶予期間を活用すれば、産休・育休で一時中断をしてもまた再開することができます。
結婚や出産をしても地域枠を離脱することなく義務期間を果たす制度があるのです。
つまり、女子だからという理由で地域枠をあきらめる必要はありません。
しかし、地域枠の制度は自治体や大学によって大きく異なるため、情報収集は極めて重要です。
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