産業医科大学医学部は、産業医の育成を主目的として設置された国内でも唯一の医学部です。
心身の健康と労働環境との結びつきについて、高度な知識を得るためのカリキュラムに加えて、同大学医学部ならでは独自教育を実践し、未来の医師を育てています。
今回は、そんな産業医科大学医学部へ受験を検討している人に向けて、基本情報や偏差値、倍率などさまざまな角度から入試にまつわる情報をまとめました。
目次
産業医科大学の基本情報
最初に、産業医科大学医学部の基本情報について押さえていきましょう。
こちらの項では、産業医科大学医学部のキャンパスの場所や入試定員、加えて学費などについて解説していきます。
キャンパスの場所
産業医科大学は、福岡県北九州市に位置している大学です。
主な交通手段としては、JR折尾駅から北九州市営バス、または西鉄バスに乗り、産業医科大学病院入口バス停で降りてください。
どちらのバスを利用した場合でも、駅から10分ほどで到着します。
また、タクシーで移動する場合は、駅から5分程度で大学に到着します。
徒歩での移動の場合、約20分かかりますので土地勘に自信のない方は、バスやタクシーなどを利用するのがおすすめです。
入試定員
2023年度における産業医科大学医学部の入試定員は、一般選抜が約80名、学校推薦型選抜が約25名の合計105名となっています。
学費
産業医科大学医学部において6年間で必要な学費は、36,405,000円です。
私立大学の医学部の学費としては、平均的なものと言えるでしょう。
そして、学費の内訳は、入学料が1,000,000円で、授業料と施設設備、実験実習費は各学年それぞれ、3,115,000円、1,300,000円、500,000円となっています。
修学資金制度
産業医科大学医学部では、医学部の学生に向けて「修学資金貸与制度」を設けています。
こちらの制度は、公益財団法人産業医学振興財団が運営しているもので、学費の一部を同財団から支援してもらえるというものです。
こちらの制度を利用し修学金を貸与してもらうことで、入学金の実費負担額については282,000円、授業料の実費負担額については535,800円と、国公立大学と同程度に抑えられます。
しかし、こちらの制度を利用した場合、別途施設設備費が発生するため、厳密には国公立大学の医学部よりも費用はかかってしまいます。
とは言え、通常どおりに学費を支払うケースよりも金銭面な負担が軽くなることは間違いありませんので、経済的な事情から入学をためらっている人などは、ぜひ活用してみてください。
ただし、卒業後は、概ね6年間から9年間産業医等の職務につく義務が課されます。
上記義務を果たせない場合は、貸与されていた分の修学金を一括払いで返還しなければなりません。
修学資金制度を利用する際は、こちらのデメリットも念頭に置いてしっかり検討してから応募するようにしてください。
産業医科大学の特徴
続いて、産業医科大学医学部の特徴についても見ていきましょう。
産業医科大学ならではの、産業医に特化したカリキュラム、そして卒業後の進路などについて取り上げていきます。
産業医学に特化した教育
上でも触れましたが、産業医科大学医学部は産業医の育成に特段の熱意を注いでいる医学部です。
こちらの項では、そもそも産業医とはどういった医師なのかを解説するとともに、産業医科大学が、学生の育成のために行っている取り組みついて解説していきましょう。
産業医とは?
産業医とは、事業場などにおいて活動し、労働者の健康指導などを行う医師を指します。
主な仕事内容は、職場の巡視や健康リスクの指摘、健康教育活動、健康診断などです。
従来は肉体的な健康保持がメインとなっていましたが、近年は精神的なケアも担う場面が増えてきました。
卒業時には医師免許と産業医資格のダブルライセンスを取得
産業医科大学医学部の卒業時には、医師免許の他にも産業医の資格も一緒に取得することができます。
通常、産業医となるには、労働者の健康管理を行うにあたって必要な研修を受けたり、産業医を養成するカリキュラムを設置している大学で教育を受けなければなりません。
しかし、産業医科大学医学部を卒業することで、これらのハードルをクリアできますから、通常よりも早く産業医になることができます。
将来的に産業医として活躍したい人にとっては、打ってつけの医学部と言えるでしょう。
産業医学の現場実習も
産業医科大学医学部の特徴的な取り組みとしてあげられるのが、現場実習です。
こちらの実習は5年次に行われるカリキュラムの一つで、全国の事業場に実際に出向いて学習をしていきます。
実習では、職業疾患防止のための教育方法を学ぶとともに、健康管理スタッフの安全衛生活動の様子も学びます。
この実習は、産業医としての役割を勉強したり、業務への理解を深めるための貴重なチャンスとして医学部生からも大変な人気です。
卒業後の進路も多岐にわたる
産業医科大学を卒業した学生の進路は、多岐に渡っています。
一般的な臨床医師として活躍するのはもちろん、産業医として鉄道会社や自動車メーカー、電子機器メーカーなど色々な企業でも活躍中です。
高い国家試験合格率
産業医科大学医学部は、医師国家試験にも強いことでも有名です。
2022年度の試験では、合格率94.3%で、全国に設置されている30の私立大学医学部の中でも13位という好成績を残しています。
若き才能を大切にして着実に伸ばす、産業医科大学医学部ならではの実績と言えるでしょう。
産業医科大学医学部の難易度
次に、産業医科大学医学部の難易度についても説明していきます。
偏差値や倍率を取り上げて解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
偏差値
産業医科大学医学部の偏差値は67.5で、私立大学の医学部としては比較的、高い部類に入っているのが特徴です。
同一の偏差値の近い医学部としては、昭和大学や東京医科大学、東北医科薬科大学などがあげられます。
もう少し上位の医学部を目指すのであれば、70.0の順天堂大学や東京慈恵医科大学などが候補となるでしょう。
倍率
偏差値に続いて、倍率についても見ていきましょう。
産業医科大学の2020年度から2022年度における入試倍率は、下記表のとおりです。
2021年度の倍率は、前年度よりも大きく下回り10倍強と一時的に落ち込んだものの、2022年度には約13倍と増加に転じました。
この2021年度の倍率の落ち込みの原因として有力視されているのは、新型コロナウィルスの感染拡大の影響であると言われています。
つまり、都道府県をまたいで移動し、コロナに感染するリスクを恐れた受験生が増えたことから、都市部などからの受験生が減少し、同医学部の倍率の落ち込みが見られたというわけです。
ただ、2022年度においては、ワクチン接種が進み人々の往来の安全性が増したせいもあってか、倍率が増加しています。
今後もワクチン接種が進み、より一層のコロナ対策の充実が進めば、2020年度のように15倍以上の倍率に戻ることも十分に考えられます。
そのため、産業医科大学の受験を希望している人は、毎日の学習の積み重ねをおろさかにせず、着実に実力を身につけていきましょう。
▼産業医科大学医学部の入試データ
・2020年度
入試方式 | 倍率 | 募集人数 | 志願者数 | 受験者数 | 合格者数 |
共通テ | 15.8 | 85 | 1616 | 1459 | 102 |
・2021年度
入試方式 | 倍率 | 募集人数 | 志願者数 | 受験者数 | 合格者数 |
共通テ | 10.7 | 85 | 1248 | 1071 | 117 |
・2022年度
入試方式 | 倍率 | 募集人数 | 志願者数 | 受験者数 | 合格者数 |
共通テ | 12.8 | 82 | 1265 | 1056 | 99 |
産業医科大学医学部の入試対策
最後に、産業医科大学医学部の入試対策も解説していきます。
科目ごとの傾向と対策を詳しくまとめした。
共通テストが必須
産業医科大学医学部の一般選抜試験では、大学共通テスト(以下、共通テスト)の結果が第一次試験の評価として採用されます。
他の形式の一次試験は行われませんから、受験生のみなさんは、必然的に共通テストの対策を取らなければなりません。
一般入試の入試形式について解説
産業医科大学医学部の一次試験の評価では、共通テストの結果を用いることは、先ほどもお伝えしたとおりです。
一次試験を突破した受験者は、産業医科大学医学部が独自に行っている二次試験に挑むことになります。
令和4年度の試験では、数学と理科、そして英語が課されますので、しっかり勉強しておきましょう。
さらに二次試験では、面接と小論文も行われます。
両方ともきちんと対策をして、試験をクリアできるだけの力を身につけておきましょう。
英語
産業医科大学医学部の英語の試験では、例年、読解問題が3問、英作文の問題が1問出題されています。
試験時間は、100分ですが要点を分かりやすくまとめる力がないと、残り時間が心もとなくなってしまうでしょう。
文法力と記述力が問われますので、過去問を解いて実力を磨いておいてください。
偏差値の近い、慶応大学や日本医科大学の受験生向けの問題集もおすすめです。
数学
数学は大問が4題、出題されています。
全体的に見ると、上位私大らしくハイレベルな問題が多くみられます。
解法については、まる暗記だけでは全く通用しない場合もあるため、学習の理解度を深めて臨機応変に使い分けられる能力が必要です。
空所補充の出題傾向が高いので、こちらはよく練習しておきましょう。
なお、時間は100分間しかありませので、速く、かつ正確に問題を解く力も養ってください。
物理
物理・化学・生物は、2科目100分間の試験となります。
物理の問題については大問が4題で、熱力学、力学、波動、電磁気などが多く出題されています。
中位~上位レベルの医学部の試験問題を解いておくとよいでしょう。
教科書をマスターしておくと知識問題にも対処しやすくなりますから、忘れずに読み込んでおいてください。
化学
化学では大問が4題~3題、課されるケースが見られます。
過去問を振り返ると、多く出題されているのは生命科学と環境科学に関する問題です。
この2つの分野を中心に、問題集をくり返し解いていくのがおすすめです。
1冊の問題集を反復して解いて、基本的な知識をしっかりインプットしましょう。
生物
生物は大問が4題前後、出題されています。
生物の試験では、1つの問題に対し色々な分野の知識を要することになるので、広範囲に渡る学習が必要です。
とくに、生物基礎と生物の知識は必須とも言えますので、必ず理解しておきましょう。
化学のときと同様、1つの過去問集を何度も解く学習方法がおすすめです。
小論文・面接
小論文では、出題された資料を理解し、まとめていく能力が強く問われます。
読書を通じて論理的思考力を養うほか、何度も記述練習を行い文章力も向上させましょう。
文字数は400字以内と少ないので、文章量をコンパクトにできる練習も必要です。
そして、面接は、20分の個人面接が実施されます。
志望理由や長所・短所といった定番の質問以外にも、産業医への理解度を試す質問が課されます。
産業医を目指す理由や産業医と臨床医の違い、今後の産業医に期待していることなどについては、しっかり答えられるようにしておきましょう。
まとめ
産業医の育成を主目的として設置された、産業医科大学医学部。
同大学は、産業医としての未来に大きく胸を膨らませる学生を中心に、大変な人気を誇っています。
そんな産業医科大学医学部ですが、多くの受験生の悩みのタネとなっているのが高い偏差値です。
同大学医学部の偏差値は67.5と、私立大学医学部の最高峰である慶応義塾大学医学部と同等です。
大変な学力を必要とする医学部ですから、個人での学習に限界を感じている受験生もいることでしょう。
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