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医学部の学費事情
大学受験というと、それだけで「お金がかかる」というイメージがありますが、中でも医学部の学費については、別格に高い、と思われがちです。
医学部受験生本人にとって、そして、もちろん保護者にとっても、学費の問題は切実。
まずは、医学部の学費について、現状を知ることから始めましょう。
医学部の学費の相場は?
最初に知っておくべきは、学費の相場です。
国公立大学医学部
国立大学の医学部については、国が定める学費である「標準額」があり、各大学の裁量で決めてよい学費は、標準額の120%まで、という規定があります。
ちなみに、現在の標準額は、入学金が282,000円、授業料は年間で535,800円。この金額は、他の学部とそう大きく違わない金額です。
公立大学の医学部については、授業料は国立大学と同程度ですが、その公立大学がある都道府県の住民かそうでないかによって、入学金が大きく違ってくる場合があるので、注意が必要です。
私立大学医学部
私立大学の医学部については、大学によって学費が大きく異なります。その差は、なんと数千万円に上ることも。
ちなみに、6年間の総費用で考えたときに、一番金額を低く抑えることができるのが、国際医療福祉大学。総費用は、19,190,000円です。一方で一番高いのは、川崎医科大学。総費用は47,365,000円です。
国公立と違い、それぞれの大学で学費が大きく違ってくるので、きちんと事前にリサーチしておくようにしましょう。
地域枠制度や修学資金制度は返済免除に勤務条件が付く
多くの大学で行われている、地域枠制度や修学資金制度。高額な学費をカバーしてくれるこれらの制度を活用することも考えてみましょう。
これらは、地方医療現場の医師不足解消や、矯正医官など特殊な職務に就く医師の確保のために定められた制度です。
自治体によって、貸与額には差がありますが、定められた勤務条件をクリアすれば、返済が免除されます。ただし、クリアできなかった場合、貸与された資金については、利子を含め全額返済義務が生じますので注意しましょう。
また、出願条件が自分に合致するかについても確認が必要です。
合格までにもかかる膨大な費用
医学部に合格したら、必ず必要になるのは学費ですが、それ以外にも、医学部合格に至るまでにかかる費用が膨大にあることを理解しておきましょう。必要な費用については、はっきり「目に見えるお金」もあれば、いつの間にか消えてしまう「目には見えにくいお金」もあります。
では、医学部合格までに必要な費用にはどんなものがあるでしょうか。
参考書代
まずは、絶対に必要になる費用として、参考書・問題集にかかる費用が挙げられます。
受験教科それぞれに参考書や問題集が必要になりますし、過去問集は、受験する学校の分だけ必要となります。全て含めると、かかる費用はおよそ100,000円ほどだと考えておきましょう。
予備校費用
そして、かなり大きな金額になるのが予備校費です。
独学で医学部受験に打ち勝つことは困難で、ほとんどの受験生は、予備校に通って受験準備をします。
予備校にも色々ありますが、やはり、医学部受験に特化した医系予備校がおすすめです。医系予備校は、他の予備校と比較すると、少し費用がお高め。年間で6,000,000円~8,000,000円ほどを準備しておくと安心です。
模試受験料・入試受験料
受験生にとって、自分の学力、そして立ち位置を客観的にとらえることは非常に大切なことですが、それには模試の受験が欠かせません。模試の受験には、1回あたり5,500円から6,500円が必要なので、年間で50,000円ほどかかります。
もちろん、入試における受験料も必要な費用です。私立の医学部の入試受験料の相場は、1校当たり60,000円。
例えば、2校~3校受験するとした場合、150,000円~200,000円は用意しておく必要があります。
もちろん、受験校を増やせば増やすほど、その金額は大きく膨れ上がるので、注意が必要です。
受験時の宿泊代・交通費
また、志望する大学が自分の居住する区域でない場合は、宿泊代や交通費も必要となります。
受験時にかかるであろう新幹線や飛行機代、ホテル代もしっかりとカウントしておきましょう。
併願先の入学金勤務条件のない特待生制度について解説!
このように、医学部合格までにかかる費用や、高額な学費について考えると、医学部への入学が手に届かないもののように思えてしまうかもしれません。
しかし、実は、前述した地域枠制度や修学資金制度の他にも、奨学金制度が充実している私立大学は非常に多くあります。
入試での成績優秀者が特待生に
たとえば、大学が独自に設定している特待生制度や、報奨金制度。こちらについては、入試で特に成績が優秀だった合格者に与えられるものです。
大学によって、制度はさまざまですが、例えば、入学金や授業料が免除・減免になるものもあれば、毎年決まった額が給付されるものもあります。当然高額な学費の全てをカバーしきれる金額ではない場合もありますが、特待生制度は学生にとって非常に魅力的な制度です。
詳しくは、各大学の募集要項を確認するようにしてください。
返還の義務がないことも多い
こういった成績優秀者に与えられる特待生制度については、「貸与」ではなく「給付」、もしくは「減免」・「免除」の形をとるものが多く、勤務条件もなければ、返還の義務もないものも多くあります。
もちろん、非常に狭き門ではありますが、勤務条件もなく、返還義務も生じない特待生制度は、学生にとって、金銭面はもちろん、精神面の負担も軽減してくれる、非常に良い制度と言えるでしょう。
成績優秀者に対する特待生制度のある大学
それでは、成績優秀者に対する特待生制度が利用できる大学を一部ご紹介します。
ただし、変更点が生じる場合もありますので、最新の情報は、必ず各大学のホームページや、募集要項をご確認ください。
北里大学
北里大学の入学時特待生制度には、区分が二つあるのですが、第1種に関しては、なんと学費全額が免除となります。第2種に関しても、6年間で学費の半分が免除されます。
どちらの区分も、「若干名に与えられる」とあり、選考は面接にて行われます。
また、特待生制度とは別に、給付型の奨学金制度を含む、さまざまな大学独自の奨学金制度が定められています。
成績優秀者にはもちろんですが、家計の急変者が優先される奨学金もあるので、入学後、思いがけない状況の変化が生じた場合には、学生にとっての選択肢を増やしてくれる良い制度と言えます。
国際医療福祉大学
国際医療福祉大学では、一般選抜の成績上位合格者から45名、大学入学共通テスト利用選抜の成績上位合格者から5名、留学生特別選抜から若干名、帰国生および外国人学校卒業生特別選抜から若干名が、医学部特待奨学生として選抜されます。
この医学部特待奨学生に選抜されると、入学金1,500,000円が免除になり、授業料相当額1,900,000円、初年度は実験実習費全額600,000円(2年次以降は、400,000円)が給付されることになります。
入学後も医学部内の順位が50位以内であれば、翌年度も医学部特待奨学生として、奨学金を継続受給できます。期間は最長6年、給付額は最大で14,000,000円。なんと、学納金が国立大学よりも安くなることになります。
兵庫医科大学
兵庫医科大学では、一般選抜A(4科目型)の成績上位者5名を対象に、入学手続時納付金のうち実験実習費(500,000円)・施設設備費(650,000円)・教育充実費(1,000,000円)相当が、全額免除となります。
ただし、大学卒業後に兵庫のへき地医療に従事することが入学条件となる兵庫医科大学兵庫県推薦入学制度に選ばれた場合については、こちらの制度は適用にはなりませんので、注意が必要です。
獨協医科大学
獨協医科大学の給付型奨学金は、家計急変の場合に支給される制度です。
第2学年以上の在学生について、家計急変により、学費支弁が困難になり、かつ成績優秀で成業の見込みがあると認められた場合につき、年間600,000円を一括給付してもらえます。
また、総合型選抜入学生及び第4学年以上の在学生で、学費支弁が困難なため、金融機関から教育ローンの融資を受けた学生に対して、年額200,000円を限度に、在学中の学納金相当額に係る利子の一部を補給する制度もあります。
慶応義塾大学
慶応義塾大学では、医学部独自の合格時補償型奨学金を設けています。こちらは、一般入学試験成績上位者10名程度に、第1~4学年の各年度、年間2,000,000円ずつ、総額8,000,000円が支給される制度です。
また、physician scientistの育成を目指す研究医養成プログラムを選択していると、5・6年時にも1,000,000円ずつ支給されますので、先の奨学金と合わせて総額10,000,000円を受給できることもあります。
東京医科大学
東京医科大学では、一般選抜成績上位40位まで、共通テスト利用選抜成績上位10位までの学生に対して、初年度に必要な授業料2,900,000円を免除する授業料減免制度があります。
また、経済的理由で、学業を継続できなくなる恐れのある学生のための独自制度もあります。こちらの制度における奨学金には、貸与型と給付型の両方があり、給付型奨学金なのは、丸茂記念育英資金です。
こちらは、学資負担者が死亡・傷病などのため、学費補助を必要とする学生の申請により給付する制度と定められています。
まとめ
医学部の学費は非常に高額というイメージを持たれがちですが、例えば、国公立大学に限って言えば、他の学部と同程度の金額です。
一方、私立大学においては、やはり学費は非常に高額ですし、大学によってもかかる学費が大きく違ってきますので、一般的に考えると、医学部の学費は、やはり高額と言ってよいでしょう。
また、大学合格を勝ち取るための費用もかなりかかることも事実。「お金」の問題は、医学部を志す受験生の前に、壁となって大きく立ちはだかります。
しかし、学費が高額だからという理由で、医師になる夢を諦めないでください。
優秀な学生を求めて、各大学は特待生制度や報奨金制度など、さまざまな形で奨学金制度を設け、受験生に門戸を開いています。
もちろん、狭き門ではありますが、特待生制度を利用することができれば、国立大学医学部の学費よりも安い学費で学ぶことができる場合もあるのです。
まずは、医師になる夢を叶えるために必要なお金、医学部合格のためのお金と、医学部で学ぶためのお金がいくら必要なのかをしっかりと試算しましょう。
そして、各大学の貸与型・給付型奨学金の特質をよく理解し、必要があれば、自分の生き方を考えた上で、自分にとって適切な奨学金を利用することを考えてみてください。