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「再生医療とは?」ES細胞・iPS細胞についても解説!-医学部受験生のための医療用語解説

「再生医療とは?」ES細胞・iPS細胞についても解説!-医学部受験生のための医療用語解説

医学部の小論文試験や面接試験では、医療用語に関する質問がなされる場合があります。

受験生の知識量や、物事に対する考え方を知る目的でなされることが一般的ですが、いずれにせよ用語に関する知識が足りないと、うまく返答ができず減点の対象になってしまうことも考えられます。

そのため、話題として出されやすい医療用語については、予備知識をインプットしたうえで試験に臨みたいところです。

そこで今回は、小論文・面接試験において覚えておくべき用語の中でも、質問頻度の多い再生医療とはなんたるかについて解説していきましょう。

再生医療とは何か

まずは、再生医療に関する基本的な情報から見ていきましょう。

こちらの項では、そもそも再生医療とはどういった医療分野なのかという疑問への説明をするとともに、幹細胞の働きについても解説していきます。

幹細胞は、再生医療とは切っても切れない関係にある重要な細胞ですから、勉強するうえでは必ず押さえておきたい用語です。

ぜひ覚えておいてください。

再生医療とは

再生医療とは、失った自分の臓器などを幹細胞の力を使うことで、再生させるという新しい医療技術です。

従来型の医療では、人間が失ってしまった機能に対し、医薬品などを用いて治療を施して回復を促すのが一般的でしたが、再生医療では、人間に元々備わっている「再生する力」を使って、元通りの状態への修復を目指します。

少々分かりにくいという人は、トカゲのしっぽを思い浮かべてみるとイメージが湧きやすいのではないでしょうか。

人間とトカゲを比べるのも少し変な話かも知れませんが、トカゲほどではないにせよ、人間にも組織を再生する力を持っているということは理解しておいてください。

幹細胞とは

再生医療における1つのキーワードになるのが、幹細胞です。

ここでは、幹細胞の働きや種類について深掘りして説明しますので、しっかり押さえておきましょう。

幹細胞の働き

人間の身体の細胞は、常に入れ替わりのサイクルを行っています。

たとえば、赤血球は2週間ほどで寿命を終え、新しい細胞とバトンタッチします。

皮膚の細胞は約4週間〜6週間で、入れ替わるのが一般的です。

こういった入れ替わりのサイクルを支えているのが、幹細胞なのです。

幹細胞は色々な細胞に分化する能力、すなわち「分化能」を駆使して足りなくなった細胞に変化し、身体を維持しようとします。

また、幹細胞は自身と全く同じ能力を持った細胞を複製できる能力、「自己複製能」も持ち合わせています。

幹細胞には2種類ある

幹細胞は、多能性幹細胞と組織幹細胞の2種類に大きくわけられます。

ここでは、それぞれの特徴について、順を追って解説していきましょう。

まずは、多能性幹細胞の解説からです。

多能性幹細胞とは、私たちの身体の中に存在する、どのような細胞でも作り出すことができる細胞を言います。

この多能性幹細胞としては、「ES細胞」が広く知られていますが、受精卵を利用するため、倫理的な問題が発生する可能性があることなどが関係し、現在では世界的な普及にはいたっていません。

次に、組織幹細胞についてです。

組織幹細胞は、組織の失われた箇所を補う作用をする幹細胞だと考えられてきました。

たとえば、血液系の細胞を担当する組織幹細胞や、神経系の細胞を担当する組織幹細胞などがあり、セクションごとにわかれて活動するといったイメージです。

しかし、研究が進んだ結果、組織幹細胞においても他の細胞へ分化する力、「多分化能」を持っていることが判明しました。

国内では2003年に行われた山口大学の研究を皮切りに、2007年には京都大学でも組織幹細胞を広く転用するための研究が開始され、難病治療やアンチエイジングなどの予防治療が研究されています。

ES細胞とiPS細胞について解説!

幹細胞には、先ほど軽く触れた「ES細胞」と、「iPS細胞」の2種類の存在が確認されています。

再生医療とはどういった医療なのか深く知るためにも、この2種類の理解は欠かせません。

ここでは、ES細胞とiPS細胞について詳しく説明していきましょう。

ES細胞

ES細胞とは、人間やマウスの初期胚から生み出される細胞の中でも、あらゆる細胞に分化できる能力を持ち合わせたものを指します。

そして、このES細胞は、発生初期段階の細胞から生成されるため、受精卵と似通った反応をするという特徴があります。

そのため、ES細胞の特徴を応用することで、私たちの身体のあらゆる箇所の維持・再生に役立てることができるのです。

しかし、上述のとおりES細胞に使用されるのは、本物の受精卵です。

本来は人間として誕生するはずだった命から取り出した細胞ですから、運用するうえでは倫理的な問題を乗り越える必要があるでしょう。

また、拒絶反応が起こる可能性も指摘されており、今後の研究の発展が望まれています。

iPS細胞

iPS細胞とは、特定の細胞を培養し続けて人工的に生み出した多能性幹細胞を言います。

2006年には京都大学の山中伸弥教授らが、この細胞の作製において世界初の成功を収めました。

その成功は世界中で反響を呼び、2012年にはノーベル医学・生理学賞を受賞しています。

そんなiPS細胞の特徴は、細胞が持つ一種の可逆性に注目し、それを引き出した点にあります。

つまり、一度成熟しきった細胞を初期化した後、再度身体のあらゆる部分への細胞へ分化させることができるようになったのです。

このiPS細胞の技術が発展すれば、今後、神経細胞や肝臓など色々な臓器の再生が可能になると大きく期待されています。

再生医療で何が出来るようになる?

さて、再生医療が発展した先には、我々人類はどのような恩恵にあずかることができるのでしょうか。

ここでは、再生医療の進化で、どんなことができるようになるのかについて解説していきましょう。

治療の幅が広がる

人体における幹細胞の働きについては、上でもお話ししたとおりです。

ES細胞やiPS細胞の研究が発展すれば、これまでは医薬品治療が難しかった病気や対処法が確立されていなかった疾患に対する、大きな切り札になり得るでしょう。

手術時における拒絶反応の心配が減少する点についても、安全性確保の面から見逃せません。

また、再生医療研究は新薬の開発においても、大きな力を発揮しています。

たとえば、アルツハイマー病やパーキンソン病などへの治療薬への応用です。

上記のような難病患者の身体から取り出したiPS細胞に新薬を反応させ、その力により正常な状態に戻った細胞と、その時に反応した薬を研究すれば、病気の症状を改善させるための糸口がつかめます。

このように、再生医療の分野では、様々なアプローチで困っている人を助けるためのプロジェクトが立ち上げられているのです。

高齢社会におけるQOLの向上

高齢社会は、日本が抱えている大きな問題の一つです。

お年寄りが長く暮らせることは大変喜ばしいのですが、寝たきりの状態が続いてしまっては、その人のQOL、すなわち「生活の質」は大変低いものとなるでしょう。

厚生労働省が発表している資料によると、日本人男性の平均寿命は79.55歳、そして健康寿命は70.42歳だとされています。

健康寿命とは、その名のとおり、健康に毎日を暮らせる状態でいられる寿命のことです。

つまり、男性の場合は、健康寿命が尽きたあとの10年間は、不健康な状態で過ごしていかなくてはなりません。

それは、車椅子生活かも知れませんし、寝たきり生活の可能性もあります。

いずれにせよ、QOLが低くなってしまう事態は避けられません。

しかし、再生医療の発展は、健康寿命の底上げに大いに貢献してくれるはずです。

人体の色々な臓器を文字どおり再生してくれるわけですから、多くの難病も完治させられる可能性が高まります。

このように再生医療の進化は、高齢社会におけるQOLの向上に大きく貢献すると見られているのです。

再生医療における課題

再生医療には、前述した倫理的な課題のほかにも、技術的な課題や経済的な課題など、色々な問題が山積みとなっています。

こちらの項では、再生医療にまつわる諸々の課題について、深掘りして解説していきましょう。

倫理的な課題

再生医療にともなう倫理的な課題に関しては、上述したとおりです。

ES細胞は人の受精卵を使用する、言い換えれば生命の始まりを犠牲にしてしまうという点において、大きな議論を呼んでいます。

また、iPS細胞においても、特定の遺伝子を組み込んだ場合に、なぜ多能性幹細胞として活動し始めるのかが未だ解明されていません。

つまり、不明点を残した技術を患者の治療に転用することに対し、倫理的な観点から疑問が生じる可能性も考えられるということになります。

再生医療とは、人類にとっては夢のような技術にもなり得ますが、同時に乗り越えなければいけない倫理的な課題も多数はらんでいるのです。

技術的な課題

続いて、技術的な課題についても見ていきましょう。

ここでは、角膜上皮幹細胞疲弊症という病気の治療を例に取り、技術的にどんな課題があるのかを具体的に例示していきます。

こちらの病気は進行すると角膜上皮の機能が失われ、徐々に目が見えなくなってしまうという、恐ろしい病気です。

そのため、早い段階で角膜を移植するなどの措置が必要となります。

そして、この病気の治療において非常にデリケートな問題が、ウイルスへの安全対策です。

角膜が移植物である以上、その組織の細胞が生きているということは言うまでもありません。

そのため、角膜にもウイルスが転移することが考えられるほか、最悪の場合、感染してしまいます。

さらに、ウイルスに感染した組織を移植した場合、患者への二次感染が引き起こされます

過去を振り返ってみれば、「薬害エイズ問題」や「薬害肝炎問題」などの悲惨な事件が思い出されるはずです。

このように、万能と思われる再生医療とはいえ、このような技術的な分野では様々な問題が起きているというのが現状です。

経済的な課題

再生医療の抱えている問題点の1つが、経済的な課題です。

最先端の医療を扱う分野ですから、施設を充実させるための投資額も莫大なものとなってしまいます。

また、培養工程における細胞変質などの各種リスクを抑えるためにも、優れた人材を供給する必要もあるでしょう。

加えて、高額な保管コストや流通コストに対応する必要もあります。

日進月歩の勢いで進化し続ける再生医療ですが、一般医療として普及しにくい背景には、このような経済的な課題もあるのです。

医学部入試で押さえておきたいポイント

最後に、医学部入試で押さえておきたいポイントについても見ていきましょう。

医学部入試での出題例

再生医療は、最先端の現代医療であることから、多くの医学部からも注目を集めています。

そのため、面接や小論文において設問がなされることが多いのは、想像に難くありません。

たとえば、2019年における富山大学医学部後期試験では、「iPS細胞技術とはなにか」というテーマの小論文が課せられています。

また、日本医科大学の面接試験では、「iPS細胞には倫理的な問題があるか」と題し、受験生の倫理観を問う質問がなされています。

さらに、2020年の久留米大学で実施された試験においては、「我が国の再生医療について」というテーマの小論文が課されました。

これらの試験では、再生医療とは何か、そして将来的にはどういった進展が予想されるかなど、総合的な知識がないと説明しきれない部分も多かったはずです。

このように、近年の医学部入試では、再生医療にまつわる問題が多く出題される傾向にあります。

日ごろから、「再生医療とは何か」ということについて、自分なりの意見を持つようにしておきましょう。

また、各種用語も単純に理解するだけでなく、背景に対する知識や現状にも注目する習慣もつけておいてください。

ニュースもチェックしよう

試験において「再生医療とは何か」と問われた際、良質な回答を導き出すために必要なのが、十分な知識量です。

知識量が少ないと曖昧な回答しかできませんし、面接官に突っ込まれたときに、さらに返答に困ってしまうでしょう。

そこで日ごろからニュースをよくチェックし、情報を常にアップデートさせておく必要があります。

医療ニュースはもちろん、経済産業省のデータも産業化しつつある再生医療業界を深く知るための一助となります。

さらに、別分野ではあるものの、歯科医療も再生医療とは強い関係があるため、理解を広げるための情報として役立つはずです。

まとめ

現代医学の最先端技術を集めたと言っても過言ではないのが、再生医療です。

再生医療では幹細胞などを活用し、これまでの医療では実現不可能だった治療を、患者に施すことができます。

大学の医学部としても再生医療への関心は高く、それだけに受験においても多くの設問がなされるようになってきました。

そういったケースでは、学生側にも新たな問題を前に立ち回れるだけの情報収集力や、情報を応用して正解を導き出すだけの力が求められます。

しかし、再生医療の分野は日進月歩の発展を見せていますから、一人だけで情報を収集し、面接や小論文対策にまで生かすのは至難の業と言えるでしょう。

そういったときに役に立つのが、医学部受験に特化した予備校「京都医塾」です。

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