国公立大学入試において、「二段階選抜」や「足切り」と言った言葉を耳にしたことがあるかと思います。
国公立大学では、ある特定の条件を満たした場合、二次試験前に一段階目の選抜が行われます。
その結果、二次試験を受験することができず、不合格となる場合もあります。
そこで、今回の記事では、「二段階選抜」「足切り」とは何なのか、また二段階選抜が行われる大学はどこなのかなど、押さえておくべき重要なポイントを詳しく解説します。
目次
大学入試『二段階選抜』『足切り』とは?
そもそも、「二段階選抜」や「足切り」とは何を意味するのか、解説します。
大学入試における「二段階選抜」(=足切り)とは、国公立大学の二次試験実施前に、共通テストの成績などを基に第一段階の選抜を行うことを表します。
この、第一段階の選抜を合格することで、第二段階の選抜すなわち二次試験の受験資格を得られます。
二段階に分けての選抜が実施されることから「二段階選抜」と呼ばれます。
また、実質的に、成績によっては二次試験に進めない(一律不合格となる)ことから、「足切り」と呼ばれることもあります。
「二段階選抜」に関する基礎知識
次に、「二段階選抜」について、押さえておくべき基本的なポイントを解説します。
国公立大学の選抜において、特定の条件下で「第一段階選抜」を実施
まず、「二段階選抜」は全て、国公立大学入試における選抜方法です。
私立大学において、「二段階選抜」は実施されません。
次に、「二段階選抜」は全ての国公立大学の学部/学科で行われるわけではありません。
ある学部・学科において、あらかじめ規定していた倍率以上の志願があった場合に、第一段階選抜が実施されます。
二段階選抜の実施有無はその年の志願者数によって異なるため、「〇〇大学の△△学部では毎年必ず足切りがある」など、あらかじめ予想しておくことはできません。
しかし、志願者が集中する難関大学や後期日程、医学部医学科で二段階選抜が実施される傾向にあります。
二段階選抜の有無を出願前に知ることはできませんが、過去の倍率や二段階選抜の実施状況を把握しておくことで、ある程度の予想と心構えは可能です。
国公立大学を志望する場合、前もって過年度の倍率を確認することをおすすめします。
各大学・各学部/学科によって「第一段階選抜」を実施する規定が異なる
国公立大学は、各大学・各学部/学科であらかじめ第一段階選抜を実施する規定を設け、告知しています。
多くの場合、募集定員に対する倍率を規定としています。
この規定は、各大学・学部・学科によって異なります。
以下では参考に、医学部医学科の5つの規定倍率をご紹介します。
大学 | 学部 | 学科 | 日程 | 募集 人員 |
予告 倍率 |
旭川医科大学 | 医 | 医 | 前 | 40名 | 5倍 |
医 | 医 | 後 | 8名 | 5倍 | |
東北大学 | 医 | 医 | 前 | 77名 | 3倍 |
東京大学 | 理科三類 | – | 前 | 97名 | 3.5倍 |
岡山大学 | 医 | 医 | 前 | 98名 | 約4倍 |
九州大学 | 医 | 医 | 前 | 110名 | 約2.5倍 |
また、共通テストの総合得点に対する獲得得点を規定としている大学・学部/学科もあります。
以下では参考に、医学部・医学科の予告規定をご紹介します。
大学 | 学部 | 学科 | 日程 | 募集 人員 |
予告 規定 |
名古屋大学 | 医 | 医 | 前 | 90名 | 700点/900点 |
医 | 医 | 後 | 5名 | 700点/900点 | |
京都大学 | 医 | 医 | 前 | 102名 | 630点/900点 |
鳥取大学 | 医 | 医 | 前 | 79名 | 600点/900点 |
自身の志望大学や、受験する可能性のある国公立大学について、あらかじめこの規定を確認しておきましょう。
「二段階選抜」が行われる大学は?
ここまで、二段階選抜の仕組みや規定について解説しました。
二段階選抜は、難関大学や後期日程、医学部・医学科で実施される傾向にあることがお分かりいただけたかと思います。
以下では、2022年度入試において、実際に二段階選抜が行われた大学・学部/学科をまとめました。
2022年は29大学48学部で二段階選抜を実施
2022年度入試では、29大学48学部で二段階選抜が実施されました。
そのうち、医学部の二段階選抜実施は35件にわたります。
以下に、一覧にまとめて掲載します。
大学 | 学部 | 学科 | 日程 | 募集 人員 |
志願 者数 |
志願倍率 | 予告 倍率 |
一次 合格 |
実施倍率 |
旭川医科大学 | 医 | 医 | 後 | 8名 | 221名 | 28倍 | 5倍 | 97名 | 12倍 |
東北大学 | 医 | 医 | 前 | 77名 | 242名 | 3倍 | 3倍 | 231名 | 3倍 |
秋田大学 | 医 | 医(一般枠) | 後 | 20名 | 340名 | 17倍 | 10倍 | 271名 | 14倍 |
医 | 医(地域枠) | 後 | 4名 | 50名 | 13倍 | 10倍 | 41名 | 10倍 | |
福島県立医科大学 | 医 | 医(学科計) | 前 | 75名 | 386名 | 5倍 | 4倍 | 332名 | 4倍 |
筑波大学 | 医 | 医 | 前 | 44名 | 133名 | 3倍 | 2.5倍 | 110名 | 3倍 |
群馬大学 | 医 | 医 | 前 | 65名 | 284名 | 4倍 | 189名(*1) | 189名 | 3倍 |
医 | 医 | 前 | 6名 | 34名 | 6倍 | 24名(*1) | 24名 | 4倍 | |
千葉大学 | 医 | 医(一般枠) | 前 | 82名 | 257名 | 3倍 | 3倍 | 246名 | 3倍 |
医 | 医(地域枠) | 前 | 20名 | 71名 | 4倍 | 3倍 | 60名 | 3倍 | |
医 | 医(一般枠) | 後 | 15名 | 401名 | 27倍 | 7倍 | 257名 | 17倍 | |
横浜市立大学 | 医 | 医(学科計) | 前 | 70名 | 228名 | 3倍 | 750点/1000点 かつ3倍 |
181名 | 3倍 |
東京大学 | 理科三類 | – | 前 | 97名 | 421名 | 4倍 | 3.5倍 | 340名 | 4倍 |
新潟大学 | 医 | 医 | 前 | 80名 | 347名 | 4倍 | 4倍 | 320名 | 4倍 |
山梨大学 | 医 | 医 | 後 | 90名 | 1621名 | 18倍 | 10倍 | 904名 | 10倍 |
福井大学 | 医 | 医 | 前 | 55名 | 370名 | 7倍 | 5倍 | 275名 | 5倍 |
医 | 医 | 後 | 25名 | 397名 | 16倍 | 7倍 | 275名 | 11倍 | |
岐阜大学 | 医 | 医 | 後 | 10名 | 405名 | 41倍 | 15倍 | 151名 | 15倍 |
名古屋大学 | 医 | 医 | 前 | 90名 | 150名 | 2倍 | 700点/900点 | 136名 | 2倍 |
医 | 医 | 後 | 5名 | 38名 | 8倍 | 700点/900点 | 33名 | 7倍 | |
名古屋市立大学 | 医 | 医 | 前 | 60名 | 164名 | 3倍 | 390点/550点 | 151名 | 3倍 |
三重大学 | 医 | 医(学科計) | 前 | 75名 | 390名 | 5倍 | 5倍 | 375名 | 5倍 |
医 | 医 | 後 | 10名 | 213名 | 21倍 | 10倍 | 100名 | 10倍 | |
滋賀医科大学 | 医 | 医(学科計) | 前 | 60名 | 405名 | 7倍 | 4倍 | 240名 | 4倍 |
京都大学 | 医 | 医 | 前 | 102名 | 265名 | 3倍 | 630点/900点 | 251名 | 3倍 |
大阪大学 | 医 | 医 | 前 | 95名 | 260名 | 3倍 | 630点/900点 かつ3倍 |
245名 | 3倍 |
大阪公立大学 | 医 | 医(学科計) | 前 | 80名 | 153名 | 2倍 | 650点/900点 | 136名 | 2倍 |
奈良県立医科大学 | 医 | 医 | 後 | 53名 | 1311名 | 25倍 | 14倍 | 748名 | 14倍 |
和歌山県立医科大学 | 医 | 医(一般枠) | 前 | 64名 | 233名 | 4倍 | 3.3倍 | 210名 | 3倍 |
医 | 医(地域枠) | 前 | 15名 | 62名 | 4倍 | 3.3倍 | 51名 | 3倍 | |
鳥取大学 | 医 | 医 | 前 | 79名 | 214名 | 3倍 | 600点/900点 | 200名 | 3倍 |
岡山大学 | 医 | 医 | 前 | 98名 | 549名 | 6倍 | 約4倍 | 383名 | 4倍 |
山口大学 | 医 | 医(学科計) | 後 | 10名 | 450名 | 45倍 | 15倍 | 150名 | 15倍 |
徳島大学 | 医 | 医 | 前 | 64名 | 171名 | 3倍 | 600/900点 かつ5倍 |
160名 | 3倍 |
香川大学 | 医 | 医(学科計) | 前 | 79名 | 520名 | 7倍 | 4倍 | 316名 | 4倍 |
九州大学 | 医 | 医 | 前 | 110名 | 307名 | 3倍 | 約2.5倍 | 275名 | 3倍 |
佐賀大学 | 医 | 医 | 後 | 10名 | 227名 | 23倍 | 10倍 | 166名 | 17倍 |
長崎大学 | 医 | 医 | 前 | 76名 | 457名 | 6倍 | 5倍 | 380名 | 5倍 |
熊本大学 | 医 | 医 | 前 | 87名 | 447名 | 5倍 | 4倍 | 392名 | 5倍 |
大分大学 | 医 | 医(学科計) | 前 | 65名 | 253名 | 4倍 | 3倍 | 195名 | 3倍 |
宮崎大学 | 医 | 医 | 後 | 15名 | 282名 | 19倍 | 14倍 | 240名 | 16倍 |
鹿児島大学 | 医 | 医 | 後 | 23名 | 375名 | 16倍 | 8倍 | 184名 | 8倍 |
琉球大学 | 医 | 医 | 後 | 25名 | 352名 | 14倍 | 10倍 | 300名 | 12倍 |
(*1)群馬大学は一般枠と地域医療枠の志願者の合計が募集人員の3倍を超えた場合、一般枠で189名程度、地域医療枠で24名程度を合格者とします。
繰り返しになりますが、二段階選抜の有無を出願前に知ることはできません。
しかし、過去の倍率や二段階選抜の実施状況を把握しておくことで、ある程度の予想が可能です。
そのため、国公立大学を志望する場合、前もって過年度の倍率を確認し、二段階選抜が実施されたことがあるか把握しておくことをおすすめします。
「足切り」を気にしすぎるのはNG!
ここまで、いわゆる「足切り」である二段階選抜について解説をしてきました。
たしかに、第一段階選抜が実施される大学・学部は複数あります。
しかし、第一段階選抜が実施される大学・学部の多くは、一次試験の結果よりも二次試験の結果を重視する、難関であることが一般的です。
つまり、“足切りを回避しよう”と、一次試験に注力してしまっては、合否の決定に重要な二次試験への対応が不十分になってしまうおそれがあります。
そのため、「足切り回避」=「第一段階選抜の突破」はあくまでも通過点ととらえ、二次試験で合格できる確実な学力を身につけるための学習が大切です。
一方で、本番直前に不安に駆られないよう、事前に情報収集しておくことは、精神面の一助として重要です。
志望大学が決定したら、入試倍率・合格点・出題傾向など、情報収集をするまとまった時間を設けることをおすすめします。
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まとめ
国公立大学における「二段階選抜」(足切り)について、おわかりいただけたでしょうか。
勝負はあくまでも二次試験が本番ですので、もしも二段階選抜が実施されたとしても、慌てることなく二次試験対策を続けることが重要です。
そうは言っても、二段階選抜の実施有無や、高倍率を不安に思う方もいらっしゃるかと思います。
しかし、合格は「受験当日に自分が合格点を取れるかどうか」のみにかかっています。
周りの状況に左右されるのではなく、自分自身の学力を最大に高めるべく、最良の受験勉強に臨んでもらえればと思います。